『帝範』の「閲武・崇文」を読む
帝範の「閲武・崇文」を読んでみましょう。
閲武の内容を簡潔に表すとすれば、
「軍備は国家の安全を保つために必要ですが、戦争を好んで人々を疲弊させてはならず、農閑期に訓練し、適切な備えを怠らないことが重要です」
また、崇文の内容を簡潔に表すとすれば、
「天下を平定し立派な政治を行うためには、礼儀や音楽を整え、儒教の学問を基盤として人々の行動を正しく導き、天子が学問を深めることで、知恵を得て国の治世を優れたものにすることが重要です」
となります。
無料部分では、書き下し文をご紹介します。
書き下し文
閲武
夫れ兵甲なる者は、国の凶器なり。土地広きと雖も、戦いを好めば則ち民彫れ、邦境安しと雖も、戦いを忘るれば則ち民殆し。彫るるは全きを保つの術に非ず、殆きは寇に擬るの方に非ず。以て全くは除く可からず、以て常には用う可からず。故に農隙以て武を講じ、威儀を習わしむるなり。三年にして兵を治め、等列を弁ぜしむるなり。
是を以て勾践は蛙に軾し、卒に覇業を成す。徐偃は武を棄て、終に以て邦を喪す。何となれば則ち、越は其の威を習わし、徐は其の備えを忘るればなり。
孔子曰く、民を教えずして戦う、是れ之を棄つると謂う、と。故に知る、弧矢もて威を立て、以て天下に利する、と。此れ兵を用うるの機なり。
崇文
夫れ功成りて楽を設け、治定まりて礼を制す。礼楽の興るは、儒を以て本と為す。風を弘め俗を導くは、文より尚きは莫く、教を敷き人を訓うるは、学より善きは莫し。文に因りて道を隆にし、学に仮りて以て身を光す。
深渓に臨まざれば、地の厚きを知らず、文翰に遊ばざれば、智の源を識らず。然れば則ち、質呉竿を蘊めども、括羽するに非ざれば美ならず、性弁慧を懐けども、学を積むに非ざれば成らず。
是を以て明堂を建て、辟雍を立て、博く百家を覧、六芸を研精す。端拱して天下を知り、無為にして古今を鑑る。
英声を飛ばし、茂実を騰げ、天下に光きて不朽なる者は、其れ唯だ学為るか。此れ文を祟ぶの術なり。
閲武・崇文のまとめ
斯の二者は、遞に国の用を為す。長氛地に亘りて、成敗を鋒端に定め、巨浪天に㴞りて、興亡を一陣に決するが若きに至りては、此の時に当り、則ち干戈を貴びて庠序を賎しむ。
海岳既に晏りて波塵已に清み、七徳の余威を偃せて九功の大化を敷くに及びては、此の際に当り、則ち甲冑を軽んじて詩書を重んず。
是に知る、文武の二途、一を捨つるも可ならず、時と優劣し、各々其の宜しき有り、と。武士儒人、焉をか廃す可けん。
有料部分では、書き下し文から意訳した意訳文と元となる漢文を掲載しています。
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