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『帝範』の「誡盈・崇倹」を読む

帝範の「誡盈・崇倹」を読んでみましょう。

誡盈の内容を簡潔に表すとすれば、
天子は倹約と静かな生活を心がけ、無駄な娯楽や贅沢を避けることで、人々の負担を減らし、政治の安定と国の繁栄を保つべきです
また、崇倹の内容を簡潔に表すとすれば、
優れた天子たちは質素で倹約を心がけ、自ら模範を示すことで、民が自然と教えを受け入れ、正しい道を歩む素晴らしい世の中を築きました
となります。

無料部分では、書き下し文をご紹介します。


書き下し文

誡盈

夫れ君は倹以て性を養い、静以て身を修む。倹なれば則ち民労せず、静なれば則ち下擾れず。民労すれば則ち怨み起り、下擾るれば則ち政乖く。

人主、奇技淫声、鷙鳥猛獣を好み、遊幸度無く、田獦時あらず。此の如くんば則ち徭役煩に、徭役煩なれば則ち人力竭き、人力竭くれば則ち農商の業廃す。

人主、高台深池、彫琢刻鏤、珠玉珍玩、黼黻絺綌を好む、此の如くんば則ち賦斂重く、賦斂重ければ則ち民の財匱しく、民の財匱しければ則ち飢寒の患生ず。

乱世の君は、其の驕奢を極め、其の嗜欲を恣にす。土木は緹繡を衣て、民は短褐全からず、犬馬は芻豢に厭いて、人は糟糖足らず。故に人神憤怨し、上下乖離し、佚楽未だ終えざるに、傾危已に至る。此れ驕奢の忌なり。

崇倹

夫れ聖代の君は、節倹に存す。富貴広大、之を守るに約を以てし、叡知聡明、之を守に愚を以てす。身の尊きを以て人に驕らず、徳の厚きを以て物に矜らず。

茅茨剪らず、采椽斲らず、舟車飾らず、衣服文無く、土階祟からず、大羹和せず。栄を憎みて味を悪むに非ず、乃ち薄に処りて倹を行なうなり。

故に風は淳に俗は朴に、比屋して封ず可し。此れ節倹の徳なり。

誡盈・崇倹のまとめ

斯の二者は、栄辱の端なり。奢倹人に由り、安危己れに在り。五関近く閉せば、則ち令徳遠く盈ち、千慾内に攻むれば、則ち凶源外に発す。

是を以て丹桂蠧を抱けば、終に曜月の芳を摧き、朱火煙を含めば、遂に凌雲の燄を鬱にす。

故に知る、驕りは志に出で、節せざれば則ち志傾き、慾は身に生じ、遏めざれば則ち身喪ぶ、と。

故に桀紂は情を肆にして禍結ぼれ、堯舜は己れを約して福延ぶ。務めざる可けんや。


有料部分では、書き下し文から意訳した意訳文と元となる漢文を掲載しています。

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