ABEMA Prime で《弱者男性問題》

ABEMA Prime で《弱者男性問題》が取り上げられました。以下にリンクを貼っておきますので、よろしければご覧ください。

【弱者男性】被害者=女性の先入観は?性別特有の生きづらさをどう解消?抜け落ちてる視点とは?|アベプラ (2023年4月6日) 

この動画について、私は以下のようなコメントを投稿しておきました。

まず、この問題を取り上げてくれたことがとても嬉しいです。
「男性は体格がよくて腕力があって暴力的でガサツだ」というようなステレオタイプがあり、そこに起因する偏見や差別があります。しかし、現実の男性という属性は、きわめて多様な存在を包含しています。
《平均的な女性よりも体格が華奢で腕力の無い男性》が現実に居ます。体格が華奢で腕力が無いことによって女性に対して行われている支援や救済があるならば、それは彼らにとっても必要なものです。(この点、番組中での平石さんらの発言で、些か気になる部分もありました) 
また、《暴力的なことが苦手な嫋やかな男性》も居ますし、《性的羞恥心が敏感等の繊細な男性》も居ます。
男性からの暴力や性被害によって「男性が怖い」と感じている女性たちがいるのと同じように、女性からの暴力や性被害によって「女性が怖い」と感じている男性も確かに存在しています。 
「男性って〇〇だよね」というステレオタイプ(これはマクロ視点では間違っていない場合も多い)が社会で共有されています。ただ、そこに当てはまらない男性も当然ながら存在していて、彼らが苦しんでいます。 
「男性って(女性と比べて相対的に)強いよね」というステレオタイプに当てはまらない男性が "弱者男性" と言えると思います。彼らが救われるためには、男性だけでなく女性も含めた社会全体にある、根強い偏見に取り組んでいく必要があります。男性という属性で一括りにして決めつけるのではなく、"個" を見ていく必要があります。
マスキュリズム(男性差別をなくすための学究と運動)は、きわめて困難な荊の道です。海外の事例になりますが、英国のエリン・ピジー(世界で初めてDVシェルターを作ったフェミニストで称賛されていた)は、男性を保護するシェルターを運営しようとした途端フェミニスト組織からパージされ、男性のDV被害を語ろうとすると爆弾を送るぞと脅迫を受けました。
まずは、1人でも多くの人に正対してもらえたら嬉しいなと、心から願うばかりです。

ABEMA Prime の動画に私が投稿したコメント

《弱者男性》という語をどのように定義づけるかは、現状において人それぞれに異なっているようです。私は上記のコメントでも書きましたが、

"社会通念として広く根付いている「男性は強い(強者だ)」というステレオタイプ(あるいはマクロ視点における傾向)に当てはまらない男性" 

という意味合いで使っています。

このような《弱者男性》が、本来必要としている支援や保護や配慮から零れ落ちてしまい、理不尽・不条理な目に合うことがあります。これは、もしその人が女性であれば支援や保護や配慮を受けられたのにも関わらず、男性であるがゆえに受けられないという状況です。男性という属性に属しているがゆえに差別的な取扱を受けており、性差別(男性差別)といえるでしょう。

では、なぜこうした状況が発生してしまうのかを考えてみたならば、以下のような仮説を立てることができるでしょう。

1)ある点について、支援や保護や配慮が必要と感じる女性が多い。
2)社会は支援や保護や配慮の措置を講ずる。
3)その際、"女性特有の問題" として "女性に対してのみの措置" となることも少なくない。
4)しかし、実は同じ支援や保護や配慮を必要とする人は男性の中にも居て、かれらは零れ落ちてしまう。(男性であるがゆえに排除を受ける)
5)男性が同じ保護や配慮を求めても、受容されづらい。無視されたり嘲笑されたり攻撃されたりすることも少なくない。
6)結果として、《同じ保護や配慮を必要とする人の中で保護や配慮を受けられる人(女性)と保護や配慮を受けられない人(男性)が存在する》という性差別的な状況が放置されてしまう。

https://twitter.com/NikkohMasculism/status/1635423641520463872
(2023年3月14日に書いたツリーを元に一部を加筆・修正)

この仮説は、当たっている場合が多いように思うのですが、どうでしょう。
1~2については、問題の無いことです。支援や保護や配慮が必要な女性に対して、適切な支援・保護・配慮が行われることは、当然ですが必要なことです。
いちばんの問題は、3番にあります。「男性は強い」というステレオタイプに基づく偏見のため、同じ支援や保護や配慮を必要とする人は男性の中にも存在しているのにも関わらず、"女性特有の問題" であると誤認識されてしまうことが多いのです。「男性は強いので支援や保護や配慮が必要ない」と決めつけられてしまい、"女性に対してのみの措置" が実行されるのです。

〇 ステレオタイプ 「男性は強い」 
〇 偏見      男性は強いので、多少のことがあっても平気だろう 
〇 差別      男性に対しては、支援や保護や配慮を受けさせない 

そして、5番も問題です。「男性は強い」というステレオタイプに当てはまらない《弱者男性》に対して、好意的な印象を抱かない人が社会の中にはたくさん居ます。そして、《弱者男性》である彼らに対して、(彼らがただ何もせずに生きているだけにも関わらず)冷笑と蔑みと嫌悪の目を向けて攻撃と迫害を加える人たちも、残念ながら居ます。このような悲しい状況の中で、《弱者男性》が支援や保護や配慮を求めて声を上げることがいかに困難なことであるかは知られるべきです。彼ら自身が "男らしさ" に縛られている部分ももちろんあるとは思います。しかし、それだけが問題では無いということは、断言しておかなければならないでしょう。これは(女性も含めた)社会全体の問題です。

支援や保護や配慮を必要としている人には、男性/女性に関わらず、可能な範囲で必要なことが施されるのが良いです。(可能な範囲でと書いたのは、社会の中で使える資源やコストは残念ながら無尽蔵ではないからです) 
言ってしまえばこんなにも単純なことが、なぜこれほどまでに困難なのでしょう。心の底から悲しい思いでいっぱいです。
今回、ABEMA Prime でこの問題を取り上げていただけたことは、率直に嬉しく思います。さまざまな人による建設的な議論が深まっていくと良いと思います。特に、厚生労働省や法務省などの行政機関は、もっともっともっと真剣にこの問題と正対して欲しいです。私は、一人の《手弱男》として、それを心から願っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?