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日銀、政策金利0.25%据え置き 再利上げは「総合的に判断」


会見する植田総裁(12月18日、日銀本店)

日本銀行は12月18、19日に金融政策決定会合を開き、政策金利である無担保コールレート翌日物を「0.25%程度」で誘導する方針を維持した。一方、田村直樹審議委員は「物価の上振れリスクが膨らんでいる」として、「0.5%」への再利上げ議案を提出。反対多数で否決された。

日銀は会合の声明文と同時に、「マイナス金利」や「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)」といった25年間に及ぶ非伝統的金融政策を検証する「多角的レビュー」の結果も明らかにした。

黒田東彦前総裁下、2013年に導入した異次元金融緩和については、長期国債の大量購入などでイールドカーブ(利回り曲線)全体を下押しし、法個人の借入金利低下などを通じて需給ギャップの改善に寄与。「2%物価安定目標」に基づく国民への明確なコミットメントはインフレ期待を高めて物価上昇率をプラス圏へ押し上げたが、「(物価目標の)2%にアンカーするほどの有効性はなかった」と評価。「2年程度での2%目標達成」といった「導入当初に想定していた効果は発揮できなかった」との検証結果を示した。

政策の〝費用対効果〟に関しては、「現時点の評価」として「日本経済に対してプラスの影響」と結論付けた。半面、日銀による長期国債購入などで落ち込んだ国債市場の機能度の回復度合いや、超低金利による貸出・保有債券のデュレーション(残存期間)長期化を受けた金融システムへの副作用を念頭に「今後、マイナスの影響が大きくなる可能性」を留意点として挙げた。

今後の政策運営に対しては、非伝統的金融政策は「(伝統的政策である)短期金利操作の完全な代替手段にはなりえない」と分析。「(非伝統的政策を講じる環境に陥る)『ゼロ金利制約』に直面しないような政策運営が望ましい」とのスタンスを表した。そのうえで、「小幅のプラスの物価上昇率を安定して実現していくことが重要」との方向性を主張し、多くの主要中央銀行が採用する「2%物価安定目標」の妥当性を強調した。

「もう少し」情報必要

植田和男総裁は、会合後の会見で再利上げを見送った理由について、経済・物価情勢が「(日銀の)見通し通りに推移している」としつつ、「来年(2025年)の春季労使交渉(春闘)に向けたモメンタム(勢い)など賃金動向に関してもう少し情報が必要」との考えを述べた。

春闘の全体像に関しては、日本労働組合総連合会(連合)の第1回回答集計が明らかになる3月中旬を念頭に「かなりの程度、判明する」とした一方、「その手前にある程度、わかる可能性(がある)ということも考慮したうえで、こういう(モメンタム)という表現にした」と、選んだ言葉の背景とともに早期利上げの可能性も排除しなかった。

米国を中心とした海外経済の動向に対しては「先行きは不透明」と捉えて、トランプ米次期大統領下の「財政」「通商」「移民」各政策などは「世界経済や国際金融資本市場にも大きな影響を及ぼし得る」との見方を示した。国内経済・物価への影響を定量的に測る前提情報が「まだ出ていない」との現状の認識を強調し、徐々に明らかになっていく関連情報を見極めていく姿勢を繰り返し訴えた。

また、「特定のデータやイベントを待たないと判断できないということではない」として、春闘動向(国内情勢)などとともに「総合的に判断していかざるをえない」と再利上げのタイミングに対する踏み込んだ言及は避けたが、見通し実現に向けた確度の高まりが「もうワンノッチ(1段階)ほしい」と近接感を表した。

裁量的に最良判断

「ゆっくりと進んでいる」利上げペースに対しては、基調的なインフレの上昇が「極めてゆっくりである」と要因を語り、各会合での最良な政策判断に向けて「非常に裁量的になりがち」との実情を述べた。

市場とのコミュニケーションでは、7月末の追加利上げ後に起きた8月上旬の為替・株式市場の相場急変を踏まえて改善姿勢を強調。日銀が催し、政策委員の講演機会が設けられている「金融経済懇談会」のスケジュール平準化や開催時期の早期公表といった試みを例示しながら、「金融政策の基本的な考え方を丁寧に誤解が生じないよう説明していく」とのスタンスを訴えた。

政策金利のターミナルレート(最高到達点)では、〝壁〟とされる「0.5%」の水準を「特に意識は持っていない」とこれまでの見方を踏襲。段階的な利上げ過程で「一層、注意深く見ていかなくてはいけない段階に入る所がどこかで来る、あるいは徐々に来るということは常に意識している」との構えを語った。

「多角的レビュー」については、「将来の政策運営にあたって参考になる様々な材料が提供できている」と編集責任者としての所感を表した。非伝統的金融政策に関しては、「思っていたほど(効果が)確実ではなく、副作用もいろいろある」と評し、短期金利操作を主軸とする伝統的金融政策の有用性を際立たせた。

掲載元:https://www.nikkinonline.com/article/238665



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