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環境設計のための最強のネタ本 『建築の環境価値BOOK』① 一般公開はじめました!

堤 遼
日建設計総合研究所 環境部門
研究員

建築の環境価値BOOK』 一般公開はじめました!

日建グループ社内向けに制作した『建築の環境価値BOOK』を7月7日より一般公開しました。7月から9月にかけて、3回に分けて配信します。
本書は、建築の環境価値に関するエビデンスを分類・整理し、日建設計が関わったプロジェクトの具体例も示しながら、わかりやすくまとめたものになります。建築関係の方はもちろん、環境価値に関心をお持ちの方にもご一読頂ければ幸いです。

建築の環境価値とは?

これまで建築による環境への影響と言えば、環境負荷をテーマとしたネガティブ・インパクトの議論が中心でした。2050年に向けて社会全体が脱炭素化を目標として急速に動きはじめたことで、ますます建築が与えるネガティブ・インパクトへの関心が高まっています。
一方、建築設計では環境負荷だけでなく、建物利用者の健康性や快適性、利便性などを含めた「広義」の環境品質が考慮されています。しかし、このポジティブな環境価値は定量化されなかったことで、これまで議論されてきませんでした。
本書は、この「ポジティブ・インパクト」に着目し、建築をポジティブとネガティブの両面から定量的に評価するためのエビデンスをまとめています。

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図1 脱炭素に加えて、環境品質向上による「定量的な”ポジティブ・インパクト」に着目

どんな文献を集めたの?

主に国内外の査読論文から建築の環境価値に関するエビデンスを収集し、建築要素12項目と環境価値8項目のマトリクスで整理しました。そこから、例えば、外壁・屋根・窓で構成される「外装」であれば、断熱などの性能が健康性、快適性、満足度/幸福感など多くの環境価値を生み出す重要な建築要素であることがわかります。
今後も最新の研究から、新しい環境価値が示されることが期待されますので、調査を継続していきたいと思います。

図2_1920

図2 「建築要素12項目×環境品質8項目」で環境価値を分類

環境価値は建物オーナーにも貢献する?

建物・不動産の運営では事業性が重要となります。そのため、経済効果を把握しやすい省エネルギー化やESG投資において費用対効果の高い環境技術が強い関心を持たれています。
光熱費の費用対効果だけを考えると、外装の断熱性向上よりも高効率機器の導入の方が効果的に見えます。しかし、断熱性向上による室内環境の向上は、在室者の健康性を高めることに寄与し、疾病に伴う欠勤率を低減できるという報告があります。
つまり、人件費まで含めると断熱性向上の方が事業性向上に効果的と言えます。このように、エネルギー以外の環境価値まで含めた検討は、建物オーナーの目的に適うことも多いと考えます。

図3_1920

図3 外装の断熱性向上は光熱費に加えて、人件費への効果もある
※オフィスの運用コストは光熱費:賃料:人件費= 1:10:100 と言われ、在室者が健康である価値は大きなものです。

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図4 建築断面に建築要素別に環境建築技術が与える環境価値の関連を示したもの

カーボン・ゼロ×環境価値のスパイラルアップを目指して

日建設計日建設計総合研究所では、本書を最新研究や社会の潮流に合わせて、アップデートしていくことを考えています。真に環境価値の高い建築と、よりサステナブルな社会の構築の一助になればと思います。本書とのコラボレーションをお考え頂ける皆さまには、ぜひお声がけ頂けましたら幸いです。
この記事を嚆矢に、『建築の環境価値BOOK』のより深い魅力を第2弾、3弾とnoteでご紹介していきますので、ぜひご覧ください。


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堤 遼
日建設計総合研究所 環境部門 
研究員
省エネルギー・脱炭素といった「環境負荷の低減」と、建築のポジティブ・インパクトを高める「環境品質の向上」の両面からプロジェクトを推進中。
AIスマート空調(空港・商業・地下街)、東京大学サステナブル化、再開発、エネルギーマネジメント・ビジョン、SBT関連などを担当。



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