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日銀ETF貸付制度導入――流動性は向上するがガバナンスには関係ない

12月19日(木)、日銀金融政策決定会合の2日目。今年最後の黒田東彦総裁の定例会見が開かれました。今回は比較的“無風”でもあり、導入が発表された日銀によるETF貸付制度についてリポートします。日本ではETFの保有の7~8割が日銀に集中している状態。通常であれば発達するはずのETF貸株市場がほとんど広がりません。貸株導入は、ETF市場関係者からはかねて要望があったポイントです。日銀は金融政策の一環として年間6兆円ペースでETFを買い入れていますが、買い入れをスムーズに進めるための措置でもあります。とりあえず概要は以下の通り。

制度の概要
・日銀保有ETFを、信託銀行を通じて貸し付ける
・貸付期間――1年以内
※契約上は予め返済期限を設けませんが、長い期間は想定しない様子です
・実施頻度は随時。当初は制度の習熟を図る観点から一定の間隔を空ける
・今後の予定。財務大臣、金融庁長官の認可取得が必要

日本ではもちろん初めての制度ですし、そもそも中央銀行がこんなにETFを買っている例もほぼないので、世界でも初めてといえば初めて。会見で改めて制度導入の狙いや開始時期の見込みを黒田総裁に聞きました。

流動性の低さが一つの課題で、日銀が貸付制度を導入すれば市場活性化を通じて、金融機関がマーケットメーク機能をより発揮できるようになる。市場関係者などと意見交換をしながら検討を進めてきて、制度設計が整ったということで今回導入を決定した。できるだけ早く認可を得て発足させたいと思っている。

会見では時期についての言及は「できるだけ早く」にとどまりましたが、まあざっくり来春くらい開始の目安のようです。“慣らし運転”しながら徐々にETF市場の流動性は高まると思います。

さて、日銀によるETF買い入れの問題点はかねていろいろと指摘されていますが、流動性の問題のほかには、まずは気になるのが出口論(=大量に買い入れたETFをどのように売却するのか、あるいはどこかに“プール”するのか)だと思います。出口についてはETFに限らず、日銀からはほぼ言及なしの状況です。もうひとつが企業のガバナンスの問題。2019年11月に公表されたIMFによる対日4条協議でも「ETF買い入れの結果、日銀は日本の上場企業の最大株主の1つとなっており、アクティビスト投資家の余地を狭めている」と指摘されています。この点は以前にも会見で質問したことがありますが「信託銀行などが株主の権利を行使すべきものであり、日銀の保有がガバナンスを歪めているということはない」という主旨の答えで一貫しており、いわば見解の“すれ違い”ですね。

大雑把な印象論ですが、日銀も、そして日銀を中心に取材している記者なども、ETF、株式市場に対する関心は高くないですね。しかしもちろん株式市場では常に高い関心を集めていますし、出口やガバナンスは、決して見過ごすことのできない大きな問題だと考えています。

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