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NYダウ“最短で弱気脱出”――雇用消失にどう向き合う?

26日(木)の米国株式相場は大幅高。NYダウは1351ドル(6.4%)高の2万2552ドルで取引を終えました。米WSJは、「直近安値からの戻りが20%を超え、新たな強気相場に突入した。弱気相場からは過去最短で抜け出した」と伝えました。27日(金)の日本およびアジア市場もこの流れを受けて堅調に推移しています。もちろん、市場関係者の多くが相場の先行きをただ楽観しているということはあり得ません。喫緊の課題は、目の前で、特に欧米で進行中の雇用消失にどう向き合うか、ということではないかと思います。

26日の米国市場で衝撃的だったのは取引開始前に労働省が発表した新規失業保険申請件数でした。21日までの1週間で328万3000件となり、前の週の28万2000件から急増しました。これまでの最大は82年10月の69万件。またリーマンショック直後でも2009年3月の66万件が最高でしたから、328万件がいかに巨大かわかります。まさに雇用消失の危機です。

米国では新型コロナがホテルや飲食店を直撃し、大手ホテルチェーンなどで大規模なレイオフや減給が広がっています。米政府が実行しようとしている2兆ドル規模の大型対策でも、失業給付がポイントのひとつ。解雇された人に4カ月間の所得補償をするのが柱となります。欧州では時短勤務が拡大しています。日本の長期的雇用慣行は、ある意味では構造改革の岩盤の壁みたいなところがありますが、この局面では、むしろ経済の急激な悪化を食い止める役割をある程度担うことになりそうです。“キャッシュ・イズ・キング”相場で日本企業が抱え込んでいる現金の価値が相対的に注目されたり、流動性に乏しい雇用慣行がむしろ経済の悪化を食い止める緩和剤の役目を果たしているようにみえたり、混乱経済ならではの現象ではないでしょうか?念のため僕は、現金を持ち過ぎる企業を評価したり、雇用の流動化を進めるのに反対する立場ではありません。変えるべきは変えないと。

そのような危機下にありながら、NYダウがとにもかくにも3日で21%も上昇するというのは一体どういうことなのでしょうか?今回は過去最高値からの下落スピードも目を引いています。一時的にせよマーケットメーク機能を放棄したかに見える米市場、HFT、アルゴリズム取引の拡大などなどいろいろと要因はあるのでしょうが、根っ子には市場の流動性危機が叫ばれる中での過剰流動性、それを支える超低金利環境があるのだと思います。弱気相場を脱出したのではなく、一言でいえばボラティリティ(変動)が高い。NY市場のVIX指数は60ポイント台で高止まりしています。まだまだシートベルトはきつめに絞めておく時間帯です。

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