見出し画像

2021年8月15日(日)、新聞各紙の社説と記事読み比べ

2021年8月15日(日)、終戦の日の新聞各紙の社説(もしくはそれに類する論説記事)と1面記事をピックアップしてみました。コロナ禍に加えて破壊的豪雨――とある種、普通ではない夏が続きます。高校時代の先生の言葉きっかけで毎年1月1日の新聞紙面を記録するようにしていることを以前に書きましたが、まあ、少々時間を持て余し気味なこともあって、2021年お盆休みの記録を付けておこうと思った次第です。

こういう状況下ですので、日本がかつて敗戦、終戦に至った経緯と今の日本や世界の情勢を重ね合わせて書く――というのが常識的な作法というものでしょう。僕だって今の奇妙な状況をどう感じるべきか考えあぐねているわけですが、普通に「日本の危機」「世界の危機」ということに思いを馳せたりはします。日本の新聞は個性がないなどと言われがちで、確かにそういう面はあるのかもしれませんが、元日だったり、8月15日だったり、特別な日の表現の仕方にはもちろん個性がにじみます。歴史に対しものすごく内省的になったり、あるいは強烈なまでに現代の状況を憂えたり……。好き・嫌いを超えて色々な立場、考えについて想像を巡らせることは大事だと思います。

多くの論説が文献を引用したり、歴史的人物の言葉などを引いているので、それは「♯」で示しました。大人気は『失敗の本質――日本軍の組織論的研究』(戸部良一ほか)で、6紙中3紙の論説で引用。初版が1984年ですからもはや立派に古典です。しかし、もう少し広がりがあってもと、正直感じます。僕なら『危機と人類』(ジャレド・ダイアモンド)なんか、引いたら面白いと思いますね。

それにしてもじっくりと社説・論説や記事を読んでいると、身びいきな感想ですが立場や考え方の違いを超えて、新聞というのはまじめなメディアだなぁと思います。残念ながら、新聞の読者は確実に減っていて、その基本的にはまじめな働き方、努力、注意喚起が広く届かなくなっていることに改めて危機感を覚えます。「メディアの危機」「新聞の危機」でもあるわけです。

2021年8月15日(日)の社説と紙面から


<日経>
(社説)敗戦の教訓は今の日本にも通じる

――組織の体裁を優先し、不都合な現実から目を背ける。日本人が抱いてきたこうした体質は、いまの社会のゆがみにも相通じるものがあるのではなかろうか。
♯『昭和16年夏の敗戦』(猪瀬直樹) ♯『それでも、日本人は「戦争を選んだ」』(加藤陽子) ♯『戦艦大和ノ最期』(吉田満)
(1面)米IT改革 働き手が促す 「集団行動」5年で300件 倫理や差別も問う

<朝日>
(日曜日に想う 編集委員曽我豪)終戦とはごまかしのことばだ

――既存の権力と価値観が崩壊した混沌の夏、国民に対する「ごまかし」を拒もうとし、国民と同じ「しろうと」の目線に立とうとした首相、閣僚、官僚がいたのである。コロナ禍が続く76年後の夏、混沌の最中は同じでも、犠牲者の心構えの彼我の差は改めて書くまでもない。
♯『松村謙三 三代回顧録』
(1面)打ち立てた傀儡 謀略の最前線 将校ら178時間の証言録音 砂上の国家満州のスパイ戦

<読売>
(社説)終戦の日 平和堅持へ情勢の変化直視を 防衛体制の強化で有事避ける

――国の安全保障に「想定外」は許されない。脅威を直視し、有事に的確に対応できる体制の整備について議論を深めるべきだ。そうした努力が、結果的に有事を未然に防ぐ道となる。

♯『昭和史』(半藤一利) ♯『失敗の本質』

(1面)不審船監視 AI活用 政府方針 衛星のデータ分析――尖閣など広域で

<毎日>
(社説)問う’21夏 宣言下の終戦の日 人命を最優先する社会に

――秋までに総選挙がある。コロナ下の今こそ、人命を最優先する社会の実現が必要とされている。政治における国会の力を取り戻すことがその出発点になるはずだ。
♯「東京大空襲・戦災資料センター」 ♯『失敗の本質』
(1面)池上彰のこれ聞いていいですか?平和祈り朗読「やらなきゃ」俳優吉永小百合さん

<産経>
(終戦の日に 論説委員長乾正人)再びの敗戦を絶対に回避せよ 「失敗の本質」から学ぶとき

――菅義偉首相も、内閣支持率に一喜一憂せず、強くなってもらわねば困る。そのためには、2つの危機(※筆者注「コロナ危機」「中国危機」)に対処するために希望的観測を排した冷徹な国家戦略づくりが不可欠だ。再びの敗戦は、絶対に避けねばならない。
♯『失敗の本質』 ♯中野正剛
(1面)戦没者追悼式 参列最少に 緊急事態下きょう終戦の日

<東京>
(社説)過去と未来への想像力 終戦の日に考える

――体験していない過去のことを想像して共感したり、起きるかもしれない未来のことを想像して警戒したり思い直したり。そうできるのが人間の人間たる所以なのだとしたら、その能力を磨かない手はありません。
♯岡倉天心
(1面)つなぐ戦後76年 きょう終戦の日 それでも帰る信じ続け(読者の「平和の俳句」から)

<東京中日スポーツ>
(1面)周平(CD)5番外しも 全打席で走者かえせず、進められず

※「中日ドラゴンズの危機」もやばいです。。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?