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金利なき時代のポートフォリオ論――高まる“人的資産”の価値

21日(金)の日経平均株価は小反発。39円68銭高の2万2920円30銭で取引を終えました。今週の特徴は何と言っても薄商い! 東証1部の売買代金は1兆6777億円と1月下旬以来約7カ月ぶりに5日連続で2兆円を下回りました。

そうした相場を眺めつつ、最近もやもやと考えていたことをnoteします。「金利がない時代のポートフォリオをどう考えたらよいのだろう――」。大テーマですね。結論を先取りしてしまうと、これからは“人的資産”(自分の価値をどう高めるか、健康で楽しく暮らすか、豊かな交友関係や趣味を持つか)の価値が相対的に高まっていくのではないか?といったことです。

人的資産については8月6日(木)に日経CNBC、朝エクスプレスのマーケット・レーダーにゲストとしてご出演いただいたインベスコ・アセット・マネジメント、グローバル資産形成研究所の加藤航介所長に多くの示唆をいただきました。ちょっと(かなり)端折りますが、加藤さんの人的資産、金融資産に関する考え方はこのようなことでした。

20.8.21 人的資産と金融資産トリミング後

・ いきなり金融資産のことを考えるのではなく、まずは自分の人的資産を把握しよう。
・ 人的資産とは「将来の見込み収入の現在価値」。例えば、若い人は金融資産はわずかしかなくても、健康で働く意欲があれば、豊かな人的資産を持っていることになります。
・ シニアだから人的資産がなくなってしまうわけではなく、少なくても先進国できちんと働いてきた人であれば、雇用に守られ、年金受給権を確保しているはずでこれも立派な人的資産である。
・ ポートフォリオを考えるときにバラバラに考えるのではなく、自分の人的資産とその可能性をしっかり把握したうえで、金融資産のポートフォリオを考えよう。人的資産と金融資産は合体してとらえるべきものである。

という考え方から、日本で主に日本人と働き、交友関係も日本が中心なのであれば、金融資産の方は成長資産、海外資産をもっと多く取り込んでいいはずだ--。と展開していきます。加藤さんの考え方を正確に把握したい方には著書『世界を見てきた投資のプロが新入社員にこっそり教える驚くほどシンプルで一生使える投資の極意』(東洋経済新報社)をお勧めします。

ここからは加藤さんの話をいったん離れて、金利なき時代のポートフォリオを自分なりに考えてみたわけです。人的資産と金融資産を一体で考えるときに、金融資産構築のベースとなる金利がない、グローバルに、少なくても先進国では金利がない、というのは今さらですが大変なことだと思います。日本で金利がなくなってしまってもうざっくり25年。何とか「ベースの金利はアメリカの金利でよいではないか」と言い聞かせてきたのに、ついに、コロナ禍もあるけれど、アメリカの金利もかなりなくなってしまった。しかもそういう時代がもうしばらく続きそうなのです。金融資産の期待リターンは大きく低下しています。リスク資産を増やす、海外の成長を取り込む、オルタナティブ投資をやってみる、あるいはREIT、利回り株を入れてみる――。いろいろな工夫が唱えられていて、現状があまりに安全資産、円資産に偏っているのであればそれはそれでもっとなことです。

ですが、ざっくり言ってしまえば、リターンを高めようとすれば相応にリスクも高まります。「貯蓄から投資へ」「貯蓄から資産形成へ」の文脈でよく「おカネに働いてもらう」といいますが、おカネだって疲れてしまっているのではないでしょうか?

さて、もう一度人的資産と金融資産を合体して考えるというところに戻ります。金融資産であまり無理が効かないのであれば、高めるべきは人的資産ではないでしょうか?ある意味でとても堅実で無理のない投資先。それは自分?

急に収入が増えたり、朝から夜中まで働こうというわけではありません。しかし、健康で長く働き続ける。必要に応じて自分に投資してスキルを高める。あるいは共働きをする――。そういうことの価値は前よりも増しているのではないでしょうか?

こんな雑談をあちこちでしていたら、日経QUICKニュース(NQN)の永井洋一編集委員が面白いことを言っていました。

「うまくしたもので、そういうことで人的資産に投資をしているうちに、経済の成長率が高まってくるのでは?」

そういうことかもしれません。個人が、あるいは国や企業が支援する形で自分をもっと大切にする、自分の能力をちょっとずつ高めていく――。そうしたことが積み重なる中で、いつしか企業や国の競争力が高まる。イノベーションが生まれる。低下する一方だった潜在成長率が反転し、そして金融資産の期待リターンも高まっていく――。ちょっと時間はかかりそうですけれど、そうした時代の節目に、僕達はいるのかもしれません。副業して頑張るとか、ビジネススクールでスキルを高めるとか、まあそういうことも必要なのかもしれません。ですが何よりも心身の健康を心掛ける、気を許せる友人を持つ、地域社会で何かやること、居場所がある――。そうしたことの方がはるかに大事だと思います。

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