【文章術本】【2位】 伝わる文章には「型」がある
文章のプロの共通ノウハウの2つめは、「文章を『型』に当てはめる」です。「型」とは、「文章の流れを示すパターン」のことです。
スタイル、フレームワーク、フォーマット、テンプレートなど呼び方に違いはあるものの、文章のプロの多くが「型」の大切さに言及していました(100冊中38冊)。
「型」を使うメリットは、次の6つに集約できます。
◆「型」に当てはめる6つのメリット
(1)どの内容を、どの順番で書けばいいのか迷わない。
(2)書くスピードが速くなる。
(3)文章の流れが良くなる。
(4)情報の過不足がなくなる。
(5)論理展開が破は綻たんしにくい。
(6)結論がはっきりする。
頭の中に浮かんだことを浮かんだ順番で書くより、型に合わせて書いたほうが、伝わりやすい文章になります。
「伝える力【話す・聞く】研究所」所長の山口拓朗さんは、型の効用を次のように説明しています。
「『最初にこれを書いたら、次にこれを書き、さらにこれを書き、最後にこれを書く』という具合に、決まった順番で書き進めることで、あなたは、文章の組み立てに苦労することがなくなります。それと同時に、スラスラと『わかりやすい文章』を書けるようになります」(『世界一ラクにスラスラ書ける文章講座』/かんき出版)
38冊の中から、汎用性の高い型(真似しやすい型)を3つ紹介します。
この3つの型を使えば、文章力に自信がない人でも、わかりやすい文章が書けるようになります。
1 「結論が先、説明があと」の「逆三角形型」が基本
逆三角形型は、「結論を先に述べる型」です。
書き進めるほど重要度が低くなるため、「逆三角形」と呼ばれています。
この型の基本は、
「結論→説明」
です。
出来事の流れに沿って書くのではなく、「一番伝えたいこと」(=読み手が知りたいこと)を最初に書きます。
次に結論に至った経緯、理由、根拠、補足事項を説明します。
結論を先に出すメリットは、おもに次の5つです。
◆結論を先に出す5つのメリット
(1)「 この文章は何が言いたいのか」が明らかになるため、情報 を的確に伝えることができる。
(2) 最後まで読まなくても概要がつかめるので、読み手の時間を取らない。
(3)「 一番大事な情報」を先に書けばいいので、文章の「書き出 し」(導入部分に何を書くか)に悩まない。
(4) 文章を短くする場合も、「後ろ」から削っていけばいいので、結論を削らなくて済む。
(5) 重要な情報を最初に提供するため、読み手の関心が高くなる。
劇作家の井上ひさしさんは、逆三角形型のメリットについて、次のように述べています。
「『読者は多忙である。どこで読むのをやめてもよいように重要なものから先に述べよ』という、これはありがたい志なのだろう」(『自家製 文章読本』/新潮社)
◆「一番伝えたいこと」(=読み手が知りたいこと)を最初に書く
逆三角形型の代表例は、ニュース記事です。たとえばスポーツ記事なら、「試合結果→試合経過」の順番に書きます。
〇良い例 結論➡ 説明
日本ハムが12安打9得点で快勝した。一回に中田の内野ゴロの間に1点を先制。四回に中田の16号2ランで加点するなど着実にリードを広げた。有原が7回無失点で約1カ月ぶりに2勝目を挙げた。ロッテは打線がつながらなかった。(「日本経済新聞」電子版 2020年8月15日)
スポーツ記事の場合、読者の関心がもっとも高いのは、「試合結果」です。
結果を知ったあとで、「なぜ、そうなったのか」「どのような試合展開だったのか」「誰が活躍したのか」に興味が湧きます。
×悪い例 説明➡結論
一回に日本ハム中田の内野ゴロの間に1点を先制。四回に中田の16号2ランで加点するなど着実にリードを広げた。ロッテは打線がつながらなかった。有原が7回無失点で約1カ月ぶりに2勝目を挙げ、日本ハムが12安打9得点で快勝した。
試合開始から時系列で追っていくと(説明→結論)、最後まで試合結果がわからないため、読者にまわりくどい印象を与えます。
いつまでも結論の見えない文章は、読み手のストレスになりかねません。
2 説得力を高めたいときは「結論→理由→具体例→結論」の「PREP法」
PREP法は、逆三角形型と同様に「結論が先」です。PREPとは、「Point・Reason・Example・Point」の略です。
逆三角形型の「説明」の部分に「理由」(根拠、裏付け)と「具体例」(実際に何があったか)を盛り込み、最後にもう一度「結論」で締めくくります。
ビジネス文書やプレゼンテーションだけでなく、ブログ記事を書くときにも使える便利な型です。
逆三角形型とPREP法の比較
● 逆三角形型……「結論→説明(→補足)」
● PREP法………「結論→説明(理由→具体例)→結論」
◆ PREP 法は「結論を2度書く」から、伝わりやすい
PREP 法は、「結論を2度書く」「根拠を明確にして主張を裏付ける」ため、逆三角形型よりも文章全体に説得力が生まれます。
例文
● 結論
仏教では、「地域や家庭の中で、自分の役割を持つ」ことが健康長寿の秘訣であると教えています。「使命感を持って、毎日を生きる」ことが、健康寿命を伸ばす方法です。
● 理由① なぜ、役割を持つと健康寿命が伸びるのでしょうか。
理由のひとつは、役割を持つことで生きがいや自己肯定感が高まるからです。
● 理由②
医学的にも、「地域で役割のある高齢者は長生きする(死亡率12%減)」ことが明らかになっています。
● 具体例
男性史上もっとも長生きした木村次郎右衛門さん(故人)も、90歳まで畑仕事を続けるなど、自分の役割を持っていました。
● 結論
「 使命」とは、「命」を「使う」と書きます。自分の役割を見 つけ、それに向かって命を使っていく。それが仏教の教える「長寿の秘訣」です。
例文 は、以下の要素で構成されています。
● 結論………健康長寿の秘訣は、役割を持って生きること。
● 理由①……役割を持つと自己肯定感や生きがいが高まる。
● 理由②……医学的な裏付けもある。
● 具体例…… 長寿世界一だった木村次郎右衛門さんも役割を持っていた。
● 結論………健康長寿でいるために、自分の役割を見つけよう。
「結論→理由→具体例→結論」の順番で書くと、読み手の理解・納得・共感をうながすことができます。
3 論文は「序論→本論→結論」の「三段型」で書く
ビジネス文章や実用文は結論を先に書きますが、論文やレポートは違います。
「結論はあと」が原則です。
論文に求められるのは「結論の正しさ」ではなく、「結論に行き着くまでの展開の正しさ」だからです。
哲学者の戸田山和久さんは、著書の中で、次のように述べています。
「論文の評価のほとんどは、論証が正しくなされているかによって決まる。つまり、主張(結論)を支えるだけの論拠がきちんと与えられているかが重要だ。これに比べれば、結論じたいの正しさはあまり重要ではない」(『新版 論文の教室』/ NHK 出版)
論文の基本構成は、「序論→本論→結論」の順番で書く「三段型」です。ジャーナリストで東京大学客員教授の小笠原信之さんは、『伝わる! 文章力が身につく本』(高橋書店)の中で、「現状で最善の作法」と三段型を評価しています。
三段型の各部分の役割
● 序論……扱うテーマと問題点を提示(疑問文を立てる)
● 本論……問題の原因を分析
● 結論……結論(解決策)を提示
例文
● 序論
人口増加や経済成長にともない、石油資源の枯渇が深刻な問題になっている。いかにしてエネルギー資源を確保すべきか。
● 本論
新興国のエネルギー需要が急増し、化石燃料の消費が増大している。
石油の多くは政情の不安定な中東地域に依存しているため、供給が滞るリスクがある。
アメリカや中国は、火力発電が8割以上になっている。
ヨーロッパでは電力網をつなげ、一部の国で電力が不足した場合も他国が供給するしくみを持っている。
● 結論
エネルギー資源を確保するには、石油の安定供給を保つと同時に、複数のエネルギー源を組み合わせることが必要である。
例文では、序論で「エネルギー資源の確保の仕方」について疑問形で問題提起。
本論で、各国のエネルギー対策の現状を述べ、最後に「複数のエネルギー資源を組み合わせることが大切」と結論付けています。
大事なのは、序論で論点をひとつに絞り込むことです。論点がひとつであれば、結論もひとつになります。
◆「型の活用」は文章力を身につける一番の近道
コピーライターの梅田悟司さんは、「型を知ることは、自分の言葉を磨く道のりを最短距離にすることを可能にする。そして、型を知ることで、型を破ることができるようにもなる」(『「言葉にできる」は武器になる。』/日本経済新聞出版)と述べています。
スポーツでも楽器演奏でも、初心者は最初に「フォーム(=型)」を身につけます。文章も同じではないでしょうか。
38冊を精読してわかったのは、
「型を覚えるのが上達の近道である」
ことです。
型は、誰もが再現できるように一般化された知識です。型を身につけ、それに従って書くだけで、誰でも「わかりやすい文章」が書けるようになります。
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