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今、アフガニスタンで何が起きているのか 私たちにできる支援とは〜DJ Nobbyインタビュー

Voicy「ながら日経」のスペシャルインタビューです。今回は認定NPO法人Reach Alternatives(REALs)理事長の瀬谷ルミ子さんです。タリバンが政権を掌握したアフガニスタンでは様々な暴力行為や性差別、人権侵害などが発生。そのような状況から1人でも多くの人を救うため国外退避と保護の支援活動を展開しています。現地の状況、私たちにどのような支援ができるのか。DJ Nobbyさんが聞いています。

インタビューの音声(完全版)はこちらです▼

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これまでの経緯

ーーそもそもタリバンというのはどのような組織ですか。
「もともとタリバンというのはアフガニスタンが旧ソ連や外国の軍事介入で内戦状態だった時に、世直し運動として若者たちが立ち上げた組織でした。当初はそれなりに住民からの支持も得ながら活動していたんですけれども、その中で武闘派と呼ばれる人たちや穏健派と言われる人たち、様々な意見の違いというのが出てきてしまいました」
「タリバン政権時代は女性やタリバンに異を唱える人たちに対する人権侵害や殺害がかなり行われていました。20年前にアメリカの同時多発テロが発生し、その首謀者であるウサマ・ビンラディンとアルカイダ、それを匿っていたといわれるタリバンに対して空爆が行われました。タリバンは敗走し、アフガニスタンで国際社会からの支援を受けた新しい政府ができました。タリバンではないアフガニスタン政府は今年の8月まで政権を担ってきました」

ーー今年の7月から8月にかけて急にタリバンが勢力を拡大してきたような印象です。それまでの間、タリバンはその勢力を温めていたんですか。それとも急激に支持を拡大するような背景があったのですか。
「私がアフガニスタンに赴任した2003年の後半ぐらいからタリバンが勢力を復活し始めていた兆しはありました。タリバンによるテロですとか外国人の拉致誘拐が増えてきたんです。その頃から『タリバンが復権し始めているのではないか』というのは少なくとも現地や、国際社会では感じられてきました」
「ここ数年はタリバンが政治的な動きも活発化させており、『タリバンとどのように連携し政権を組むのか』とか、『どう権力を移譲するのか』というようにタリバンは存在感を発揮していました」
「主導権を取るようになったのは、やはり米軍撤退が正式に宣言された去年の初旬以降になります。本来であればタリバンがきちんと当時のアフガニスタン政府と連立政権を組むなり、そういうことをしっかり担保できることを見届けてから、外国軍の撤退が行われるべきでした。それをする前にそれぞれの派遣国、特にアメリカが国内の世論の事情があって先に撤退をしてしまった。そのせいで抑止力となる軍事力がないような状態になりました」

ーー武力衝突という感じではなく交渉で勢力を拡大していったのですか。「一部の地域で武力衝突も起きましたが、それと同じぐらい『無血開城』した地域も多かったです。現地の部族長だったり長老や指導者たちからしても、もう外国軍は自分たちを守ってくれない。撤退するのが決まっている中、今後のアフガニスタンの中での自分たちの立場を考えた場合、地方の指導者たちは『自分たちの身を守ってくれるのであれば、タリバン側につこう』という姿勢になりました。その代わり、自分の地域を戦場にしないということで無血開城が進んでいました。8月に入ってからはバタバタといろんな地域がタリバン側につくという流れがあり、あっという間に首都カブールも陥落しました」

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ーー国際社会から受け入れがたいような状況が今アフガニスタンで拡大をしているというような報道が多いです。実際に国内の受け止められ方も同じようなトーンなのでしょうか。
「結構、二分されています。元々、地方で伝統的な部族社会で生きてきたような人たちからするとタリバンの主張は共感できるものなんです。男性主体、しかも年配の男性が全ての意思決定に関わる社会なので女性に対する教育や権利の制限というものは、自分たちからするとそんなに重要ではない。そういう価値観の地域の人からすると、タリバンが統治すること自体にそんなに違和感はないんです。しかも外国軍による空爆で自分の家族が亡くなった人たちも多い。そういう人たちからすると『外国よりもタリバンの方が自分たちのことを代弁してくれるのではないか』という見方をする国民もいます」
「一方、地方の都市部や首都の場合、既に教育を受けた方たちや女性は自由の中で20年間生きてきた人たちが多いのです。そういう人たちからするとタリバンが主張している女性の権利の制限やイスラムの厳格な規定に基づいた主義は受け入れがたい。自分たちが今まで積み上げてきた女性たちの権利がまた逆戻りしてしまう。しかも残念ながらそういう人たちに対する暴力や殺害や拉致というものが起きています。そういう人たちは『自分たちはもう生きていけない。積み上げてきた20年間のアフガニスタンでの自由というものが無に帰してしまう』というような受けとめ方をしています」

退避が必要な人々とは

ーー(瀬谷さんが理事長を務める)REALsではアフガニスタンからの退避の支援をしています。退避をする必要のある、命の危機にさらされているのはどういった方々ですか。
「ジャーナリストや女性活動家のように政府に反するような意見を表明したり発信したりするような人たちが命の危険にさらされてます。タリバンが反政府勢力として位置づけられた時代にタリバンを倒す立場にいたような軍関係者や警察関係者、司法関係者の人たちもその報復として、命の危険にさらされています」
「タリバンは自分たちをかつて取り締まる立場にいた人に恩赦を与えると言っていますが、その指示が末端まで行き届いていません。女性のスポーツ選手や音楽関係者らもタリバンが作っている殺害予告リストに名前が載っていたりしますし、指名手配のような状況になってます」

ーー今、命の危機にさらされている方々は(アフガニスタン)国内でどのように過ごしているんでしょうか。
「基本的にもう家には戻れないので知り合いの家を転々としている状況です。隠れ家といっても100%安全な場所というのは今のアフガニスタンのどこにも存在しません。私達も隠れ家の支援をすることもあるんですが、常に一定期間で移動するとか、そういったことをしないと命を守れない人たちがいます」
「食料の調達も信頼できる知り合いに頼んでいます。外に出なければいけないような状況になった時に変装して出かけられればいいけれども、多くの人はそれもできず過ごしてます」

退避に必要な資金を集めています

ーー人々を退避させるために瀬谷さんが取り組んでいる具体的な活動の中身は。
「まずは国内にいると身が守れない人たちはもう国外に出るための査証の取得です。その後に空路なり陸路なり退避手段の確保ですね。どれも難しいんですけれども特に9月以降、アフガニスタンに就航している航空会社がすごく限られています。商業便もあるんですが、それはもう年末まで予約が取れないくらいいっぱいですね。しかもよく欠航する」
「退避のためのチャーター機もあるんですが、そもそも数が少ないのと、一般的に退避のためのチャーター機が飛ぶっていう情報は一切公開されません。そこの搭乗名簿に名前を載せないといけないのですが、それができる人はすごく限られています。そういう情報を知っている団体なり個人の支援者にたどり着けない人たちはどうやって国外に出ることができるのかもわからない
「支援者から直接、連絡が来ることもあります。私もかつてアフガニスタンで働いていて、当時の私の部下だったスタッフとか、知人たちからの連絡もあります。その人たちから、『実は自分の友人がこんな状態だから何とかできないか』という相談が来たりすることもあります。最近では私のところに依頼が来るケースがすごく多いです。退避支援をまとまってやるような団体が世界規模であるわけではないんです。アフガニスタンでかつて働いていた元ジャーナリストだったり、そういう個人が完全にボランティアとして、何とか人々を救うために日夜努力をしている状況なんです。私も元々は完全に個人として退避支援を始めたんですが、9月に入ってからREALsの活動として退避の取り組みを行うようになりました」

ーー日本人としてどのような支援ができますか。
「今まさにアフガニスタンから命の危険がある人たちを安全な国に退避させ安全な場所で過ごし、きちんと通信環境が整った状況で、すぐに連絡が取れるようにするという保護の取り組みを行っています。私達REALsはチャーター機の情報などがあります。特に命の危険がある人や既に死刑宣告されていて1回捕まりかけて逃げている人、女性やリスクがある方達を退避させています」
査証を取るために必要な経費がかかります。それが払えないがために退避できない人たちが多くいるというのが現実です。今クラウドファンディングで10月の初めに開始して既に1000人以上の方からのご支援をいただいています。数千円、数万円の支援でも、誰か1人を退避させることができる、そのまま人の命を救うことに直結する活動です。今まだクラウドファンディングを募集していまして、少しでも多くの人たちを支援できるように取り組んでいるので、ぜひ皆様にもご支援をお願いしたいなと思います」
「日々、私達のところに切実な依頼がきている状況です。その中から優先度が高い人たちを退避できるよう24時間で活動しています。皆様からの応援が私達も励みになりますし、現地の人たちに『日本の人たちの支援であなたを回避できることになった』と言うとものすごい喜んでくれるんです。そういう声を私も皆さんと届けたいですし、一人一人の個人の行動で誰かを救うことができるということもぜひ知っていただきたいと思います

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