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共通テスト【世界史B】に登場する14人の生徒たちの考察

共通テスト問題「生徒の名前」の考察
共通テスト2年目にして,問題傾向が定まりつつあります。その中の定番は「教師と生徒を交えた対話」を素材とする設問で,ほぼ全ての教科・科目で採用されています。
たとえば,2022年度(本試験)の平均点が38点と低迷して話題を独り占めした【数学Ⅰ・A】には,「太郎さん」と「花子さん」が登場します。
役所の申請書類の「記入例」に使われる超古典的な仮名を用いたところに,数学の作問チームの個性バックボーンのようなものが見え隠れしているような気がしないでもありません。
高齢の権威ある名誉教授が部会長を務める作問部会に,文部科学省のお役人(技官)が関わっているのでは? などと。

ひときわ異彩を放つ【世界史B】の生徒名
2022年度本試験【日本史B】の第1問では「陽菜(はるな)さん」と「大輝(だいき)さん」という,いかにも今風の名の生徒が対話をしています。第1問のテーマは「氏姓制度」です。あ,なるほど~。
第2問は「日本古代の令制」をテーマとするので「リツさん」が,第3問は「中世のと人々の関わり」がテーマで,童謡「海」の歌詞(うみはひろいなおおきいな)からとったと思われる「ひろみさん」が登場します。
このあたりは容易に類推可能ですが,難解かつひときわ異彩を放っているのが【世界史B】の問題です(2022年度本試験)。
大問の順に登場する生徒の名を挙げてみます(「先生」を除く)。
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第3問(テーマ:世界史上の人々の交流や社会の変化)
 A 小野/鈴木/渡辺
 B 西田/東山/北野/南部
 C 小野/本田
第4問(テーマ:歴史評価の多様性)
 B 高山/阿部/小泉
第5問(テーマ:世界史上の墓や廟)
 B 高橋/杉本/松井
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まさか,国家機密たる作問者の姓じゃないよね!?

全部で14名(小野が2回登場),すべて姓のみの記載です。このうち,第3問のB(西田/東山/北野/南部)は「東西南北」からとった姓で間違いないでしょう。阿部(安倍)と小泉は元首相からとったっぽい・・・
では,残りの姓は何に由来するのか。もしかして,作問者やその関係者の姓を使ってる? ま,まさか。
共通テスト「問題作成分科会」のメンバー氏名は,ほぼ国家機密です。たとえ姓だけでも,そうやすやすと世間の目に触れるようなことは絶対にあり得ません。ただ,あり得ないと思うと俄然調べたくなるひねくれ者ゆえ,一応ですが調べてみました。

適当に検索をかけてみると・・・
まず,2回登場する「小野」。なぜ彼だけ2回出てきたのか。それなりの重要人物でしょう。となると入試センターのお偉方かもしれません。いくつか検索してみると、「AERA dot.」に以下のような記事を発見しました。
https://dot.asahi.com/aera/2021072000061.html
なんとなくですが,それらしく思えてきてしまいます。
残る人たちも一応検索してみました。具体的すぎることはここには書きませんが、なかなか興味深い結果だったのでご報告します。すべて公的なホームページにありましたが,姓だけにとどめておきます。
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 鈴木:01 – 03年度 独立行政法人大学入試センター,研究開発部, 助教授。
 渡辺:15-16年度 大学入試センター試験教科科目第一委員会委員。
 本田:中国宋代史専攻。現・立命館大学特任教授。
 高山:ヨーロッパ史・アメリカ史。東京大学大学院教授。
 高橋:ドイツ現代史。立命館大学文学部教授。
 杉本:東洋・日本美術史。東北大学文学研究科准教授。
 松井:中央アジア史・モンゴル史。大阪大学大学院文学研究科教授。
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当たるも八卦,当たらぬも八卦
同じ姓で世界史関連を専門とする先生方は,世の中に大勢いらっしゃるでしょう。上に挙げたのはその中から「なんとなくとそれっぽいかな~」というカンを頼りに「引き当てた」方の姓,当たるも八卦当たらぬも八卦です。
ちょっと注目したいのは,杉本と松井が登場する第5問のBです。この問題は『三国志演義』で活躍する関羽の銅像写真を素材に,東洋史・中央アジア史に関する幅広い知識を問うもので,上に挙げた杉本・松井両氏の専門分野と重なっています。偶然かもしれませんけど。

作問者の氏名は「役割」を終えると公表される
共通テストの作問者は,所属する分科会などの任期を終えた1年後に公表されます(官報に掲載)。2~3年後になるでしょうが、私の拙速な推測、もとい憶測,もとい邪推がどこまで当たっているか,楽しみにしています。
もっとも,その頃には,こんなくだらない原稿を書いたことなどすっかり忘れ,南の島でノンビリと暮らしているかもしれません。いや、暮らしていたいですね~。