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〔2023-2099年度受験用〕全国大学入試問題曲解

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1回限りの消耗品,一生に一度か二度。そんな大学入試問題の周辺から「ちょっとアレな話」を深掘りして紹介します。
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記事一覧

法政大学,「思いやりの心」を時事・常識問題で遺憾なく発揮!

❖新型コロナに関する時事・常識問題が花盛り 以前ご紹介した明治大学の朝ドラインスパイア系入試問題,これは広い意味で時事・常識問題に含まれます。 時事・常識問題は作問者のクリエイティビティを刺激します。毎年似たりよったりの頻出・典型問題ばかりでは面白みがなく,モチベだだ下がりです。受験生に向けては,「教科書丸暗記の学習ばかりではダメ。いま起こっていること,問題になっていること,社会常識も押さえておこう!」というメッセージになります。ここは作問者の腕の見せ所! 昨年,今年あたり

難問? 奇問?「影を慕いて」「酒は涙か溜息か」の作曲者名

❖戦後音楽史,「美空ひばり」が出題される時代 大学入試の日本史では,文化史がそれなりの割合で出題されます。文学史,建築・彫刻史,絵画史,芸能史,仏教史・・・・・・覚えることが多すぎて,そりゃもう大変です。試験直前にまとめて丸暗記するか,「出たら捨てる」くらいに開き直って本番に臨む受験生も少なくないことでしょう。 そんな重厚な日本文化史にあって,音楽史はスカスカなのでラクです。せいぜい滝廉太郎,山田耕筰,三浦環(オペラ歌手),宮城道雄あたりを押さえておけば事足りるだろうと。

日本人の心に潜む「差別意識」の根深さを扱った異色の入試問題

❖「おっぱい」で男子受験生が動揺? 2017年のセンター試験国語第2問に野上弥生子の小説「秋の一日」が出題され,SNS上でちょっとした話題になりました。 「おっぱい、おっぱい。」 展覧会の会場で子どもが裸体像を見て発した無邪気な言葉に,受験生が「動揺」したというのです。 「いやいや,そんなワケないだろう」と思うのですが,そこは面白おかしくツイートする受験生の遊び心と,それを拾い上げて一本の記事にまとめ上げる記者との阿吽の呼吸です。 内容的にはむしろセンター試験の定番的な小

全国大学アドミッションポリシー品評会《明快部門》受賞3作品

❖大同小異の「アドミッションポリシー」今はどこの大学でも,「アドミッションポリシー」(入学者受入れ方針)を明文化して,ウェブサイトに掲載しています。読んでみると、堅い文章で抽象的な理念が綴られているため,内容がスッと頭に入ってきません。 たとえば,「教育理念」や「求める学生像」に頻出するワードは次のようなものです。 ----------------------------------- グローバルな視点/国際社会への貢献/開かれた大学 フロンティア精神/コミュニケーション能力

共通テスト【世界史B】に登場する14人の生徒たちの考察

共通テスト問題「生徒の名前」の考察 共通テスト2年目にして,問題傾向が定まりつつあります。その中の定番は「教師と生徒を交えた対話」を素材とする設問で,ほぼ全ての教科・科目で採用されています。 たとえば,2022年度(本試験)の平均点が38点と低迷して話題を独り占めした【数学Ⅰ・A】には,「太郎さん」と「花子さん」が登場します。 役所の申請書類の「記入例」に使われる超古典的な仮名を用いたところに,数学の作問チームの個性やバックボーンのようなものが見え隠れしているような気がしない

「求める学生像」のホンネが書かれている場所とは?

❖アドミッションポリシーは建前,ホンネは・・・ 前回の記事で大学のアドミッションポリシーについて書きましたが,実のところ,本当の「大学の理念」や「求める学生像」は,大学の公式ウェブサイトには載っていません。ではどこに? 入試問題が雄弁に語っています。饒舌すぎるほどに。 たとえば首都圏にあるZ大学(名前を聞けばほぼ全員知っている)の【日本史B】の入試問題(2022年度)を見てみましょう。 ❖ホントだ~,ちゃんと書いてある!! 以下は大問のリード文です(アルファベットの空欄

真摯な大阪大学,懐の広い学習院大学,「絶対詫びない」東大

❖大学が公表する「出題ミスお詫び文」の考察 入試問題にミスが発覚した場合,最近ではかなり早い段階で大学側がホームページで公表し謝罪するようになりました。これは,2017年入試における大阪大学と京都大学の出題ミスを「他山の石」としたのでしょう。 両大学とも正式に出題ミスを認めたのが,試験実施から1年近く経ってからというのが騒ぎを大きくしました。事態を重く見た文部科学省は,全国の大学に「入試問題と解答は原則公開」との通達を出します(2018年度大学入学者選抜実施要項)。しかし皮