見出し画像

依存症治療版「学問のすすめ」

讀賣新聞で2021年6月8日~6月11日の間、シリーズで「依存/社会」が掲載された。その記事の冒頭は“国内で最も多い病気の一つが依存症・・・”で始まっていた。
私の立場からすると、喜ばしい冒頭の記事である。確かに、諸々の依存症対策を国は立ち上げている。また、2020年度から医学部卒業後の研修医には、精神科領域研修時には依存症者を診察の上、レポート作成、提出が義務付けられるようになった。
だが、依存症疾患を語る精神科医は決して多くはない。何故だろうか?今回は依存症疾患がこれまで精神科医療界で亜流であったことは、今回はふれない。それはそれまで色んな角度で述べてきたし、これからも伝え続けるつもりだ。

で、今回はタイトルの「学問のすすめ」について語ってみたい。

●まずは初級編について、依存症拠点病院とやらで色んな依存症の研修会がとり行われている。アルコール、ギャンブル、薬物、最近はゲームと何でそんなに分けるのか私には理解できない。研修資料も色々と渡されているようだ。そして、SMARPP、CRAFTといった技法、さらに少し畑違いかなとも思えるOPEN・DIALOGUEも依存症回復に有効といった書籍、ネット情報も巷に溢れている。だが、これら書籍、情報は現場でホボホボ役立たたないと気付いたら、初級コース卒業といえるだろう。ただ、別にこれらの書籍、情報が不要だといっているわけでない。むしろ、AAのステップ1、「私たちはアルコールに対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた。」を医療従事者が気づくためには、とても大事な書籍、情報である。

●次は中級編だが、私の小著『依存するということ』の結びの一節 「地域に根ざした依存症対策とは、街かどから断酒会の連鎖握手の掛け声や、AA、NA、GAの12のステップの朗読が聞こえてくる日常が、当たり前になること・・・。そんな文化が地域社会で根づいたら、・・・こんな冊子はいらない」にしておこう。この最後の文脈に共感できたら中級編は卒業だ。だが、そんな当事者グループの集いの大切さは、断酒会の小林哲夫、日本ダルクの近藤恒雄、ギャンブル依存症を考える会の田中紀子等の自伝的著書でもふれている。そんな書籍がより説得力があるのはもちろんのことだ。だが、『依存するということ』(幻冬舎 西脇健三郎著 2019年)を買ってほしい。  

●そして上級編、ひろゆき(西村博之)著 『ラクしてうまくいく生き方』(きづな出版2021年)だ。理由は非常に読みやすい。それだけ!
1章:自分の行動を変えてみましょう 2章:お金の使い方を変えてみましょう 3章:人間関係を変えてみましょう 4章:働き方を変えてみましょう 5章:心の持ちようを変えてみましょう となっている。この本が依存症回復支援に有効だと理解できたら、あなたは上級者。

●最後に達人とは、50年ほど前に出版されたグルメ本のはしり『おしゃべりフランス料理考』。著者は依存症治療のパイオニア、作家・精神科医のなだいなだ(堀内 秀)。彼の自筆のサインが達人の域である。「料理の基本は ぬすみぐい つまみぐい」 と・・・。

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?