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「習うより慣れろ」再考Ⅱ

『依存症対策は予防、早期発見より、まずは「習うより慣れろ」から』、2020年12月15日掲載のブログだ。2年経過して、再度同じようなブログを掲載することにした。

2022年11月27日長崎県障害福祉課主催で行われた『令和4年度長崎県アルコール依存症診療ネットワーク講演会』について、
講演タイトルが「長崎県におけるSBIRTSの普及について~保健所や普通の精神科が普段の仕事の片手間にできるアルコール医療の連携」となっている。
ところが、私の小論「制度疲労をおこしている精神保健福祉法 依存症対策は、まず司法化と医療化とを明確に」で、最後(p90)に「普通の精神科病院で片手間に行われる依存症治療」と表現している。私がその小論で述べているのは、「片手間」とは「実践知」=「当事者への場の提供」あるいは、「彼らの集いに参加、耳を傾ける」といった主旨のものである。
私は常々それを依存症治療の基本だと位置づけてきた。
しかし、今回の講演会は、「SBIRTS」なるパッケージ化された技法取得の研修会である。つまり内容は「形式知」。それも「節酒療法」なるものも取り上げている。その点も小論で私の意見を述べている。「片手間」とは、現行の諸々の法に沿って「できること」を行う。それはまず、「当事者への居場所の提供」、「体験談に耳を傾けること」からはじめればいい。だから「片手間」なのである。
それが「普通の精神科病院でできる片手間の依存症対応」だと、私はこれまで主張してきた。

そこで、私と立ち位置を同じにする信田さと子(臨床心理士)と、長崎県行政当局に影響を与えてきている松本俊夫(精神科医)との対談における信田さよ子女史の発言を紹介しておきたい。

「・・・私が危惧しているのは、治療や支援がことごとくパッケージ化していることです。CRAFTやスマープもそうですよね。アメリカから輸入されたこのようなプログラムは、ツールとして有用でも、支援がそればかりになっていくと、人の生き死にの物語が伝わってこない。アディクションの特殊性がなくなって平板化していくような気がします。力量に自信のない人たちが、とりあえず「専門家」であると思えるメリットもありますが」と。

松本俊彦×信田さと子「掘下げ対談 アデクションアプローチとハームリダクション」  

【『Be! 137』. ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)、Dec.2019】


確かに今、全国的に依存症対策と称して、やれ「アルコール依存」だ、「薬物依存」だ、そして「ギャンブル依存」、ついには「ネット依存」と・・・。こうしたパッケージ化した研修会が花盛りだ。それもオンラインで・・・。

『令和4年度長崎県アルコール依存症診療ネットワーク講演会』の開催を前に、地元断酒会の方が講演会の案内を兼ねてご挨拶に来られた。彼は「私どもは体験談に始まって・・・体験談に終わるなんですが・・・」と乗り気ではなさそうな口ぶりだった・・・。なるほど、「記憶」と「話す力」、「聞く力」に加え五感を駆使して努めておられる方のご意見は尊重したい。このコロナ禍、集うことが制約されてピアサポートは苦戦している。集い、そこで語る体験談とは、当事者にとっては回復のための一番の良薬なんだよな。
行政はそんな場の提供の工夫をもっと行ってほしいものだ。
こんなくだらない講演会を行って人材を養成とは~長崎県下の精神科医療従事者は三流どころか四流に成り下がってしまう。

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