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ジェトコースター人生 その51-4

いよいよ担当の路線が北回りヨーロッパ線となりました。1か月にヨーロッパに1度、ハワイが1度。その都度一緒に乗務するクルーは違います。顔合わせのミーティングから数時間後の搭乗準備までにはすっかりチームワークができています。ヨーロッパ線は一緒に仕事をする期間が長いのでだんだんと家族のようになっていきます。

チーフパーサーをトップにそれぞれの役割が与えられています。

ファーストクラス、エコノミークラス。そして食事の準備をするギャレー担当。また着物担当になると、食事サービスの前、離陸してベルト着用サインが消えるとすぐにトイレで着替えます。揺れだすと体をあちこちぶつけながら帯を付けます。

「5分以内で着替えること!」訓練生の時、トイレと同じサイズの箱に入って練習しますが、ストップウォッチをもった職員が「時間切れー!」と言います。何度も何度もやり直し。半泣きになった同期もいました。

ファーストクラスに配属されるとお客様の情報をインプットします。

常連となるとワインの好み読まれる新聞なども前もって覚えます。食事は、食前酒から始まって、オードブル、スープ、サラダ、メインディッシュ、最後のデザートは富士山の形のアイスクリームを切り分けます。

当時はファーストクラス以外もステーキの焼き加減を聞いていたのでオーブンのどの場所に入れるとミディアムか、などコツがあります。一番忙しい担当で決まると少しへこみました。

ご存じの「ミートorチキン?」とご希望を聞いて回りますが、同数用意されていないので、片方が人気の時は調整するのに工夫が必要です。うまくお勧めして変更していただけた時はホッとしました。無事にすべてのサービスを終えると消灯して、おやすみの方にはブランケットをかけます。

数時間すると窓の隙間から、強烈な太陽が割り込んできます。

朝食の準備は手際よく無駄な動きがないようにします。すべて片付くと

あと数時間でアメリカのアンカレッジに到着です。

窓から見える山脈の雪を抱く姿は目に染みる白さで、時に野生のシカや、クマが歩いていると機長からアナウンスがあります。「進行方向右手に大きな角の鹿をご覧いただけます!」粋な計らいの機長は昔零戦を操縦していたベテランです。

宿泊先のホテルに到着すると1時間後に「ロビーに集合!」

氷河を見に行くバスが待っていました。

幾重にも連なる氷河の山は、水色!白ではありません。

流れのはやい川に飲み込まれる氷もあり、空気は硬く静かででした。

鮭がすぐそこで泳いでいる河の傍にある小さな小屋ではハラコや、鮭を販売していました。

当時はカズノコを食べる習慣がなく海辺に捨てられていました。

それを見た日本人がみんな一度は拾ったと彫りの深いアイヌ顔の店主が笑って言いました。

二日後にはオランダに向けて、次に来る飛行機に乗り込みます。

疲れを感じなかったのはやはり若さのおかげです。今になってもはっきりと覚えていることがたくさんある有意義な年月でした。


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