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豪華な老人ホーム

山の上の老人ホームに友達が入居したというので尋ねました。駅近くからシャトルバスが出ています。伝えられていたのか、すんなり乗せてもらえもらえました。

スペイン風の瀟洒な建物。壁は優しいロイヤルミルクティー。リゾートホテルみたいな建物です。
厳重な門扉は外からの侵入を拒むかのように高く、見下ろしています。

コンシェルジュのいるカウンターで、名前を告げると、「少しお待ちください。」とグランドピアノがある広間に案内されました。

そこには座り心地のよさそうなソファがゆったりと置かれていて、一人で読書の人や、何やら楽し気におしゃべりしているご婦人二人。静かな時間が流れています。でもなんか寂しい。

しばらくして友達が現れました。久しぶりに会って懐かしい笑顔!ちょっとホッとしました。

隣の温室のようなテラスは吹き抜けの、天井はガラス張りで青い空と白い雲が流れています。たまに鳥が横切ります。毎日この空を見上げてるんだ!

時に大きなの声が聞こえてきました。きっとスピーカーからの!と思っていたら、アイアン製のりっぱな鳥かごにきれいなオウムがつがいでいます。少し離れたところには愛らしいリスの籠、白い文鳥は緑のゆったりした鳥かごで、身軽に渡り木を移動しています。白と緑、くちばしのピンクがよく合っています。庭の池にはたくさんのメダカが泳いでますが、よく鷺がやってきて…。

眼下には市街地、遠くには和歌山、大阪湾が夕暮れ時、水銀の固まりみたいにへばりついています。
夏の花火は神戸のモザイク、左にはPLのと惜しみなく楽しめると笑っています。

ご主人を亡くして一人。子供もいないので、いっそ!と家を売って、ここに移ったそうです。

外国の邸宅のような調度品や、照明。地下にはプールもあって…。

痴呆になれば棟を移動してサービスを受けられる個室に移るそうです。

私がきょろきょろと見回すので、その都度説明してくれます。「あなたもおいでよ!」彼女は久しぶりの娑婆からの客人?で、話したかったことが滝のようにあふれ出たようです。たまに買い物に出ても午後四時が門限。夜中まで象ビルや曽根のライブを楽しんだあの彼女が…。

小一時間おしゃべりしてそろそろ夕食時、ホテルのようにベルが鳴ればそれが「食堂が開きましたよ!」という合図だそうです。至れる尽くせり、同じ年代、同じような環境で育ったのに今はこれほど違うものなのか、やはり伴侶との別れた時期によるのでしょうと。もし主人がいたなら私の人生はどんなだっただろうと。今は今で楽しい自分に満足したひと時でした。

最近は早くご主人の世話から卒業したいと愚痴るシニアが増えました。
 病気のご主人がいつも不機嫌で当たり散らすと漏らす友達もいます。いつかはお別れ。その時期が分かっていないから楽しめるような…。これも必然の出会いかもしれません。

皆違う人生が待っていました。どれが一番!なんて決められません。ないものねだりも如何ってことない。資産がある、贅沢が出来るという物の豊かさが=心の幸せでないとわかった時、少し大人になったのだと思う時もありました。

すべてに満足はあり得ません。なんの心配もないここの住人も寂しかったり不安になるときがあると言います。

皆何らかの暗闇の中の寂しさを感じながらも生きているんだと遠くの島を見ながら思いました。

今日もいい日にしましょう!




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