ニケと歩けば soixante-douze
「うろこの家」は北野でも一際見晴らしのいい高台に立っています。
外国人のための高級借家として明治時代に建てられたそうです。
細い坂道「路地」を上がっていくのですが、あきらめて引返す時もあります。
到着すると大きなイノシシの置物が前足を突っ張って迎えてくれます。
以前に比べて野生のイノシシに散歩中に出くわすことはなくなりましたが、こちらはいまだ健在です。
鼻をなでると幸せになると言われているのでその部分だけピカピカです。
少し前までは夜中になると集団でごみをあさりに来ていました。
朝、公園には運動会でもしていたのか後ろ足で蹴った跡や大きなお土産があちこちに小山を作っています。
木の実を主食にしているからか漆黒のそれは石炭のようにも見えます。
小さいニケが初めて匂いを嗅いだ時の顔は少し目が中央に寄ったと思うくらい驚いてました。
たまに遭遇しても素無視で行きかうのが通常ですが、
時には散歩袋に興味があるのか近づいてくることもありました。
一時、町中に出てきたイノシシに追っかけられてケガ人続出と、テレビの報道がありました。
一挙に悪者になってしまいましたが、それまでは住人とイノシシはいい関係でした。
あれからめっきり姿を見なくなって名物が一つなくなったようで寂しいです。
この館のイノシシを見て、連なって母イノシシの後を追うウリ坊や、布引の滝にいるたてがみのある大きなイノシシを思い出しました。
ラジオ体操のお年寄りが「早く山に帰りよー」と口々に言うので「早く宿題をしなさい!」と母親に言われた子供みたいに少し不貞腐れながら大きな体を揺らして登っていきます。
出会うと足がすくみますがその目は小さくて野生の匂いを残して去っていきます。
またヌシに会いたくなりました。今日は涼しくて気持ちのいい山の空気です。雨で湿った散歩道をニケはお尻を振りながら楽しそうに登っていきます。
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