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2023年9月の読書メーター

2023年9月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:4216ページ
ナイス数:222ナイス


■谷中の用心棒 萩尾大楽: 阿芙蓉抜け荷始末 (アルファポリス文庫)

次々に登場する一癖も二癖もある登場人物に魅了される。
かつての友、弟、結ばれなかった婚約者。
故郷を捨ててきた大楽の記憶にある姿と変わらぬものもいれば、違った一面を見せるものもいる。
どの人物もそれぞれの信念を貫いて生きているのが伝わってくる。
読了日:09月27日 著者:筑前助広

■中学校の授業でネット中傷を考えた 指先ひとつで加害者になら

ないために

加害者心理について、それがどこから来るのか、どうすれば自分が加害者にならないでいられるのか、自分ごととして捉えてひとりひとりが真摯に向き合っていく。
理想的で実現不可能なひとつの正しさを共有し決着をつけようとするのではなく、より実践的なもの……自分自身の弱さを見つめる強さを持ち、自分で考え行動に責任を取るとはどういうことか、そういう人間に成長するために、また成長を支えるために何が必要なのかを考えさせられる。
大人であっても精神的に幼い私自身を振り返させられることにもなった。
読了日:09月20日 著者:宇多川 はるか

■プロだけが知っている小説の書き方

プロットを詳細に立てるけど、上手く合わなくなるのはキャラクターをストーリーに合わせようとするからなのかな。
まずはとにかくキャラクターをしっかり掴むこと。それから文章を磨き表現力を高めること。
などなど読みながら自作を振り返りました。
読了日:09月19日 著者:森沢明夫

■彼らは世界にはなればなれに立っている

アトウッドの「誓願」を読んだ時の胸の苦しさを思い出した。
少しずつ選択を手放し、支配を受け入れていることに気が付かない私たち。
次世代を守りたいという大人の思いも、社会がまずい方向に向かっていることに気付いた人たちの動きも、最中に育ちそれ以外を知らない若い人たちも、一所懸命にもがいて、そして潰されていく。
人権教育の敗北を感じる今の日本が重なって感じられる。
読了日:09月18日 著者:太田 愛

■黄色い家 (単行本)

花が自分と同世代の大人に守られてきた子の余裕を内心で妬むシーンがある。
花にとっての愛着の対象は優しいけれど十分な関心を返してくれない相手だった。
守ってくれるのではなく助け守るべき存在だった。
そのことが悔しい。
十分に大人から庇護されていない花は、幼い頃から自分とは関わりのない理由で社会の外にはじかれている。
一生懸命、良かれと思って、みんなのためにと花が家族(同居人)の分まで背負い込み踏ん張り空回りするのが痛々しい。
愛しても尽くしても寄りかかられ搾取されるの繰り返しで他にどうしていいかわからないのが伝わる。
たくさんの「してあげた」が、思うように返ってこない失望は怒りとなって噴出し、花から人を遠ざける。
寂しくてたまらないなと思う。
庇護と十分な関心を得られなかった花のどこまでも幼い親なるものを求める心が胸を打った。
読了日:09月15日 著者:川上未映子


■3日戻したその先で、私の知らない12月が来る (アルファポリス文庫)

ウェブ版読了後書籍版を読む。
時間を遡る能力を持つということは、物事に対して責任を背負い込みすぎることでもあるんだなと感じた。
何事かには能力を使い、また別のことには使わないという判断の余地ができる。使ったらその後の影響に対して、使わなければ使わなかったことに対して責任を感じる。
能力を使える(選択ができる)人間は私しかいないとしたらそれは尚更のっぴきならないものになるだろう。
そうなるとギフトのようでいて呪いだ。
初めての恋を自覚したばかりの少女がクライマックスで背負い込む大きな苦悩に胸が痛んだ。
読了日:09月12日 著者:木立花音

■ハンチバック

今どきワードなのに知らないものが多く、調べながらの読書になった。
今の社会は健常者を想定してできている。
分断されて、ないもののように扱われている。
本当にそうだ。
私たちは知らない。
知ろうという気もない。
知らなくても生きていけると思っている。
切り捨てていることにも気がつかない。
紙の本の例のように。
いるのにいない。
一員としてカウントされていない者の透明化される憎しみを受け止めなければならない。
読了日:09月12日 著者:市川 沙央

■「女の痛み」はなぜ無視されるのか?

書評から興味を持って読みました。
差別というのはほとんど無意識に当たり前のようにそこにあって、されている側がどんなにそれを証明しようとしても聞いてもらえないというのが自分の心持ちを通してよくわかった。
マジョリティ男性はこれらの訴えを攻撃と受け取り、同じ女性の有色人種であっても世界がそうであるとは信じたくないがゆえに聞く耳を持たない。
二次被害を与える。
訴えとは攻撃ではないし脅しでもない。
ただ是正を求めているだけなのだが矮小化され無視される。
どうすれば届くのかと考えてしまう。
読了日:09月09日 著者:アヌシェイ・フセイン

■今を生きる思想 エーリッヒ・フロム 孤独を恐れず自由に生きる (講談社現代新書)

誰しもが自分の行動に責任を持つ、なにより自分自身に対して責任を持つ、それが自由ということなのだけれど、日本ではそれが持てるように支えるのではなく、それを手放すように教育しているような気がしてならない。
つまり愛ではなく支配なのだということを思う。
繰り返し何度も読み返したい。
読了日:09月07日 著者:岸見 一郎,エーリッヒ・フロム

■エゴイスト (小学館文庫 た 42-1)

語り手は自分のことをエゴイストと評する。
それは自分が相手に別の人を投影していることを知っているから。
相手の中に自分や自分の母親を見出し優しくする。
してほしかったことや、してあげたかったことをする。
その行為はなにより語り手自身に癒しを与えただろう。
された相手よりも。
投影を起こすと確かに目の前の相手の気持ちが見えなくなる。
相手のして欲しいことを差し出すのではなく自分がしたいことを差し出すことになる。
ならばやはり愛ではないのかもしれない。
でも傷ついた子供である彼にはそうするほかなかったのだろうとも思う。
読了日:09月06日 著者:高山 真

■変な家

webで最初の間取りの謎を知り、手に取りました。
その時の家族が一体どういう人たちだったのか。主人公が追う形で続きが見られます。
背筋の凍るような謎からイメージしたのとは違った家族の像が浮かび上がってくるけれど……やっぱりそれでもなかなかにしんどい展開でした。
読了日:09月05日 著者:雨穴

■おいしいごはんが食べられますように

小狡い二谷の感覚や態度は嫌な意味で自身と重なるところがあって抉られた。
特に食べることへの意識はおなじようにいつも思っていた。
芦川はきっと彼の母親に似た人なのではないかと邪推する。
押尾の不器用さに共感する人は多いんじゃないだろうか。
押尾が本当に憎んでいるのは芦川本人ではなく最初に当人が言っていた通り、芦川の働き方を認めたようには他の社員を大切に扱わない、同調圧力の強い社内の空気なんだろう。
あらゆるところでズレている芦川だが、それにしても猫に対した時のあの芦川の依頼心の強さにはさすがに辟易する。
とはいえ結局押尾は芦川に嫉妬し、矛先違いの攻撃を仕掛けたのであり、行為した時点でどんな正当化も許されないのだとは思う。
そして二谷の隠れ上から目線な態度で、対立を避け強い感情をやり過ごす臆病さもまた、自滅的だとは思う。
押尾がもうこの会社とのこの先はないと理解した時点で初めて言いたいことが言えるのは、抑圧され対等な自分ではあれなかったということで。
まるで親子関係のようだと思う。
読了日:09月04日 著者:高瀬 隼子

■変な絵

章の終わりではまだ納得できないよ? と思う部分が残るのだけれど最後にはちゃんと回収される。
読んでいる時は章ごとに舞台も登場人物も違うから別の話が始まったのだと思ってしまうけれど重なる。
読了日:09月04日 著者:雨穴

■自閉日記 #3: 自分の強み探し、子どもの自立支援編

ストレングスファインダーぜひ受けてみたい。
できていることは当たり前すぎて目に入らず、反対にできないことは自覚しやすいと思うので、良い部分に目を向けるきっかけになるといいなと感じた。
やればできるは落とし穴で能力120%だったりすると思う。
休める部分は休み、まず課題を絞る必要があると感じた。
また外では適応するため受け身に行動している部分が大きく自己決定力を問われるシーンは案外少ない。
やりたくないことに対する拒否感の強い子が問題に向き合い、やれるようにするための工夫を主体的に考える場につくまでが踏ん張りどころだ
読了日:09月03日 著者:水谷 アス

■自閉日記 #2: 心理検査結果編・ライフハック編

自己理解を進め、現実に対処するためにさまざまな対策をしてきたことがよくわかる。
個人的には選択するというタスクを減らすのは実に有効だと感じた。
冒頭に「理解して配慮して!」と訴え感情を受け止めてもらうために書いているのではないとあるが、当事者の側がしてきた工夫に対して社会の側はどうだろうかと考えてしまう。
理解することで、既に頑張っている当事者が無理してダウンすることを避けることができるのではないか。
社会の側も多様な人を内包していることを前提にしたものに変化することで恩恵を受けるのではないかと思い巡らせた。
読了日:09月03日 著者:水谷 アス

■自閉日記 #1: 豆知識編・ASD診断を受けるまで編

あなたと私の脳みそは繋がっていないから、考えていることは言葉にして伝える必要があるんだと伝え、あえてそのほかの方法……例えば泣くとか、暴れるとか、強制実行とかには応えない、察しが悪い人間になること。
またその態度とは反対に不適切に見える行動の裏には自分とは全く違う感覚や思考が隠れているのかもしれないと考え、当事者感覚に関心を寄せ、理解をしようと努めること。
その感覚を持って生きるしんどさに思いを寄せること。
考えることがたくさんあった。
読了日:09月03日 著者:水谷 アス

■彼女が好きなものはホモであって僕ではない

ゲイであることと子供が欲しい家族を持ちたいと望むことは両立する。
当たり前のことだよなと思う。
欲しいものは欲しい。
でも叶わないことだよとも思う。
そこで利用される女にも人生があるから。
だからゲイの安藤が彼女を持つことは外道だと思う。
ゲイを隠して家庭を持つマコトはうまくやったように見えるかもしれない。
でも愛すべき妻を騙し続けるのは苦しいはずだ。
息子に欲情するのを回避するために年近い安藤を利用するのも外道オブ外道だけど胸が苦しくなる。
叶わない欲望にどうケリをつけていくか。ヘテロにはない苦悩が山のようにある。
読了日:09月03日 著者:浅原 ナオト

■思春期のしんどさってなんだろう?: あなたと考えたいあなたを苦しめる社会の問題 (中学生の質問箱)

インタビューを読みながら大人の問題が子供にそのまま押し付けられていると感じた。
中でもわださんの怒りに満ちたインタビューがとても鋭い。
大人は自分を強い生き物だと思わないで欲しい。(弱さの受容と効能)
苦しさを個人の責任と抱え込むのではなく世の中のせいにして変えていくのが責任ある態度。
などなど大人が自身らの問題から目を逸らした皺寄せが、不適切な環境を維持し、子供を苦しめていることがよくわかる。
読了日:09月02日 著者:鴻巣 麻里香

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