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【ショートショート】煙に巻く男

貴方はすぐ煙に巻く男。

良く言えば、ミステリアス
悪く言えば、
考えていることがいまいちよくわからない男。

煙草をこよなく愛し、
なにかに考えたい時は
窓辺で空を見上げながら煙草を燻らせる。

何を考えているのかは、
私にも不明な事が多い。


「…どうして、私を側に置くの」
気がつけばふと、言葉に出して聞いていた。

隣に座っている男は私の方向をチラリと見る。

薄暗い部屋で、
貴方の吸う煙草の火だけが橙に燻っている。

そして、また、夜空を見上げた。
空は欠けた月に雲がかかっていた。

そして、男は
「さあ…どうしてかな」と
片方の唇を上げて静かにクックッ、と笑った。

「…本当に意地悪ね」

(そんなこと言ってたら、
いつか私も煙のように消えてしまうから。)

俯き、いじけた私の気配を察したのか、
掌にあった煙草の火を灰皿でもみ消し、
私を抱き寄せた。

「冗談だよ」
至極、優しく、綿を扱うように、
ふんわりと。

貴方は肝心なところで
私を抱きしめて離さない。

本当にずるい男。

私は彼に抱かれながら、
部屋に漂う煙をただ見つめていた。

不思議な模様を描く煙を見ながら、
私は今日も、
この男と共に過ごし、寝る。

貴方が私をぎゅっと抱くたびに、
髪にうつった煙草の煙の匂いが鼻を掠める。

(…考えていることが
よくわからない時もあるけれど……
貴方はそれで良いの。)
 

貴方が私を側に置く限り、
貴方の煙草の匂いは刻印のように、
私の体からはきっと、
消えない事でしょう。

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