【ショートショート】僕たちは産まれた瞬間から1秒1秒死に向かっている

-Short story-

彼は、いつでもふらりと
何処かに出かけている。

美術館やライブハウスに出向いて
難しい顔をして観ている時もあるし、
何十年も営業している
赤提灯の居酒屋で、
そこで偶然隣の席になったおじさんと
まるで学生の頃からの
友だちと飲んでいるかのように
肩を揺らしてワイワイと騒いでいたりもする。
それであっさりと別れて帰る。

神出鬼没とは、まさに彼のことだ。

近辺に出かけることも多いが、
大体は旅に出かけている。

行き先は誰も知らない。

知らせることもない。

いつも事後報告だ。

見知らぬ国や土地での体験談を、
楽しそうに話す彼の旅の話は
常に斜め上を行く結末で、
夏に飲むソーダのように
爽快で弾け飛んでいて、
いつも友人たちを大いに笑わせている。

でも、僕には彼が
常に動かないと生きていけない
回遊魚のように見えたので、
「どうしてそんなに
いつも動き回っているの？」
と訊いた。

すると彼は、

「俺たちは産まれた瞬間から
1秒1秒死に向かっている。

死んだらいくらでも休める。

俺はいつでも、
世界にはいろんな人生を送っている人がいると知りたいし、
その人たちといろいろ話したい。

んでもって、
この世に産まれたからには
喜怒哀楽をできるかぎり経験しなければ。

山奥に一人きりで過ごして
いたのでは、それは体験できない。

他人との経験が自分を最も豊かにさせる」

だから好きなところに行く、と
彼は人懐っこい
眼の目尻を下げながらも、
その黒目の奥は真剣な火を宿し、
そう話す。

そう、明日死んだらどうするか、
みたいな話がよく出るが、
とんでもない。
明日どころではない。
僕たちの寿命は1秒後かもしれないのだ。

今朝、彼に
メッセージアプリで
他愛もない挨拶と文章を送ってみたが、
いつもの如く既読マークがつかない。

また何処かに出かけているのだろう。

次はどんな土産話を聞かせてくれるのだろうか。

彼の足で出向き、
全身で感じる経験と感動は、
いつでも瑞々しく、黄金に輝いている。

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フルーツと男子のカラフルな
シリーズの絵と短い物語を作りました❣️✨
しばらく
【ショートショート×フルーツ男子シリーズ】が続きま〜す😋💓

そして絵は
ウィンザー＆ニュートンの
カラーインクを使用❣️

パッケージがめちゃくちゃかわゆいので捨てられないです〜

カラーインクの発色の良さに
大感動❤️💙💛
これからも活躍しそうです❣️
乾くと耐水性になるのも
いろいろな表現に活躍しそうですね😋💓
ガラスペンにも良いですよ❣️

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