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この春、6年生担任として初めて子供たちを見送った。

卒業式に向けて6年生の子供たちや担任がすることは、別の学年の立場から見てきただけだが、知っているつもりだった。


子供たち。1回目の練習からこんなに気持ちを込めて臨むんだ。

保護者の方々。子供たちの晴れ姿を本当に楽しみにしているんだ。そして担任とわが子が過ごす日々をこれほど惜しんでくれるんだ。

担任ではない先生方。一人一人の役割を果たそうと、ここまで入念に準備をしてくれるんだ。


卒業式当日を迎えるまでは、驚きと発見の連続だった。

もちろん当日、担任席で臨む卒業式も多くの驚きと発見があった。


中でも、「校長式辞」の一節を聞く子供たちの様子は強く印象に残った。

今日は、その一節を紹介したい。

卒業証書に載っている3つの違い

式辞の中で、校長が徐に子供たちに呼びかけた。
「卒業証書を開いてみてごらん。」

突然の勧めに、戸惑う子供たち。
開いていいの?とチラチラ隣を確認したい気持ちと、立ち振る舞いで成長を見せようとする矜持のせめぎ合いが、とてもかわいらしかった。

「みんなに手渡された卒業証書には、一人ひとり3つの違いがあります。」
子供たちは証書を開き、中身を隅々まで見回した。

「一つ目は、氏名。」
当然だが、一人ひとり名前が違う。その名前は、あなたであることを証明するものである。それと同時に、あなたの家族の願いと思いが込められた、大切な大切なものである。今まで何回、その名前を呼ばれてきただろう。大切にしてほしい。

「二つ目は、生年月日。」
あなたたちが生まれたその日、家族はどんなにうれしかったことだろう。その日から今日まで、どれほどの喜びと苦労があったことだろう。一つの節目を迎えた今日。生まれてから今日までの一日一日に想いを馳せ、これから歩む一日一日を大切にしてほしい。

「三つ目は、証書番号。」
開校から今日まで、1から始まったその番号は脈々と受け継がれてきた。歴代の卒業生たちから続く番号である。あなたたちは、そんな番号をしっかりと受け取った。伝統をしっかりとつないでくれた。最高学年として学校を支える姿は見事だった。あなたたちの頑張りのおかげで、その番号はこれからも続いていく。


校長式辞を聞く子供たちは、その言葉を噛みしめるように、深く深くうなずいていた。


卒業式が終わった後、校長室に立ち寄り、式辞の話をした。

式辞を考えるにあたり多大な準備と練習をしてきたこと。
式辞を読み上げる最中の緊張感。

校長が卒業式にかけた思いの強さと、卒業生にかけた言葉の重み。

大きな大きな発見だった。

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