子どもを見立てる(心理の場合)

学校現場で「心理士」というと、「スクールカウンセラー」の印象が強いかと思います。

「カウンセリング」の「個人のもつ悩みや不安などの心理的問題について話し合い,解決のために援助・助言を与えること。」という定義から、「話を聞いてくれる人」のイメージがあるのではないでしょうか?
 
実は、心理士の大きな役割として、最も重要なことは、その人を「見立てること」になります。その後、「カウンセリング」をするにしても、「心理的指導」をするにしても、「コンサルテーション」をするにしても、その人がどういう人なのか?どういうところで困っているのか?を知ることが最優先になります。
 
学校でのコンサルテーションを行う時に、私自身が大切にしていることをお話しようと思います。
 
★認知面★
 生活年齢を基準に、本来の姿を想定します。その中で、どんなことがどのくらいできていて、逆にできていないのかを確認します。そのために、さまざまな発達の基準や定型といわれる発達の段階を意識しています。
★感情の発達的な視点
 感情のコントロールの状況や起因となる状況。落ち着きのなさ、かんしゃく、緘黙など、本人の表している状況など。
例えば、一言に「落ち着きがない」といっても、いろいろな要素があります。発達障害の特性なのか?不安不穏といったものによるのか?体調などの様子なのか?意識的か?無意識か?目の前の子どもの様子を見たうえで、いろいろな可能性を考えておきます。
★家庭的・生活的な背景★
 子どもの状況に一番反映されやすいのが、家庭の状況です。できる限り詳しく、これまでの親子関係から、家庭の状況、夫婦関係、兄弟関係、できれば、保護者の生育歴まで聞き取れるだけ情報収集をします。
★対人関係★
 人とのかかわり方。積極的?消極的?攻撃的?友好的?…対大人はどうか?対子どもは?…家族内での様子と公の場での様子はちがいがあるか?
★好きなこと・嫌いなこと★
 得意不得意や、好きで集中できること、苦手なこと。好きなことの傾向と苦手なことの傾向を探っていきます。
★表情★
 表情については、どんな場面で、どんな表情や反応をするのか?表情の作り方は自然か?など。

子どもを観察するときには上記のようなことを考えています。
同じ心理士でも、積み上げるタイプ(一つ一つを聞いていく中で見立てを固めていくタイプ)の見立てをする人や少しずつ関与観察をしながら反応を確かめる人もいます。
私は、一つ一つの手がかりから、仮説を立てて、その仮説に合うかどうかを確認するために情報を収集していきます。

「もしかして、こういう時は、こういうこうどうしたりします?」と聞くと、学校や幼稚園の先生から、「どうしてわかるんですか?」と聞かれることもありますが、魔法使いではないので、「パッとみたらすぐわかる」というわけではありません。
これまで積み重ねてきた情報の中から、少しずつ手がかりを探して、その子を見立てていくのです。

相談をしてくださる先生は「早くこの状況をなんとかしてください」という方がいますが、心理士は、見立てをしっかりすることを大切にしています。その子の様子を細かく知ってこそ、何に困っていて、どんな対応が考えられるのかを見つけることができるのです。

「子どもの様子を観察し、さまざまな情報から、子どもの状況を見立てる」心理士が、「子どもへの教え方を知っていて、子どもにかかわるスキルを持っている」先生とタッグを組んだらとてもいいのではないかと思います。

時々、「せっかく相談したのに、結局解決しないんですね」と言われてしまうことがあります。心理士は魔法使いではありません。相談したらすぐに問題が解決するということはありません。一緒にその子を継続的にサポートしていくための同士だと思っていただければ幸いです。

臨床心理士・公認心理士 なきりん

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