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社会科教師が最も大切していることの一つに、「どのようにして問いを生み出すか」ということがあります。問いは、子供が学習に向かって動き出すエネルギーでもあるし、学びたい方向でもあります。つまり、教師が教えたいことを、子供の知りたいことに変換させるために、欠かせないものなのです。

今日は、澤井陽介先生の「社会科の授業デザイン」の中から、問い作りの方法を紹介します。

1.疑問つなぎ型学習問題

 一枚の資料から、子供たちの疑問を引き出し、問いを作る方法です。
 今回は、例としてノルマントン号事件の風刺画をもとに考えてみましょう。

ビゴーの風刺画

この資料で言えば、子ども達がこんな発言をしていきます。
「どうして日本人らしき人は、海の中なの?」
「イギリス?みたいな国旗の人たちは、海の中の人が見えないみたい」
「奥に、沈み書けている船があるぞ」
などの発言をつなげて、
「なぜノルマントン号事件のように、日本人が不平等な扱いをされている事件が起きたか?」
「どのようにして日本は不平等条約を改正したのか?」
という旨の学習問題を作成しなければなりません。誘導尋問しないようにここまでもってくるのは、なかなかの職人技だと思います。一枚の資料で問いと多くの学びをえられるのですから究極の方法だと思いますが、意外と難しいといえます。

2.対比型学習問題

比較するとよくモノが見えてきます。AとB、比べてみると多くの気づきがあるというのは、買い物やファミリーレストランへ行ったときなど、よくあることではないでしょうか?

5年生の「あたたかい地方の暮らし」「寒い地方の暮らし」で比較される「どんな家に住んでいるのかな」の資料を思い浮かべてみてください。
対比型で面白いのは、資料の提示方法に多様性があるからだと思っています。二枚一緒に出しても面白いですし、どちらかを先に出し、「既成事実」を作っておいて、ぽんと裏切るという方法もあります。
例えば、私は青森に住んでいますので、先に寒い地方の家だけを提示して、内容を確認します。例えば、「えんとつがある」という気づきには、「ストーブがあるから」となり、「寒い気候に合わせて家が作られている」という1時間の授業目標に向かって学びを蓄積していきます。
 そして、二枚目の登場。「何県の家ですか?」と発問してもいいと思います。でも、あえてそこはだまっておくという手もありますね。色々な手があります。
 特徴を先に出させて読み取っていくと、「何県の家なの?」という問いが自然と生まれると思います。沖縄の家には、煙突の代わりに「貯水タンク」があります。ここから、「川が短い」「台風が恵みの雨をもたらす」「地下ダムがある」など、位置や空間的な広がりに着目してとらえ、気候をおさえていくとよいでしょう。

3.「トンネル型」学習問題

ちょっと対比型と似ていますが、AとBの資料を提示します。AとBの二枚の資料の間に、何があった?ということを探っていく資料提示です。

例えば、2枚の多摩川の写真を思い浮かべてみてください。一枚は、高度成長期の排水で、泡だらけになって、魚も住めなくなった川です。もう一枚は、現代の写真で、多摩川でスイミングを楽しんでいる人がいる川です。同じ橋を画面に入れ込んでおくことで、同じ多摩川だと気づかせるようにしていきます。
「同じ多摩川なのに、なぜこんなにきれいになったのか?」
という問いを引き出すことができます。教科書には、このトンネル型が多く使われています。明治維新、というキーワードを引き出すために、江戸時代と明治時代の二枚の写真を見比べるというのも、この型です。

何型の学習問題かを意識することで、発問や大切な気付きを、教師が見とれるようになっていきます。

ぜひ、澤井陽介先生の「社会科の授業デザイン」読んでみてください。

                           三浦健太朗

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