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生徒指導。非行が減って、ネットが増えた。

現場にいたときは、生徒指導主任が長かったので、万引きや火遊びなどの非行事案を数多く指導してきました。

それが、ここ数年でネット関係のトラブルについて指導する事案がかなり増えました。遅い時間までネットをして授業中にずっと寝ている、友達の悪口を書き込んだ、ゲームでいじわるなことをしてくる、子どもの部屋から罵詈雑言が聞こえてくる…などなど、枚挙にいとまがありません。

実際に、内外教育を読んでいると、こんな数字が紹介されていました。

          非行   ネットいじめ  10代自殺者
平成27年   65.950       9.187      536
平成28年   56.712     10.779      501
平成29年   50.209     12.632      560
平成30年   44.361     16.334      602
令和 元年   37.193        17.924      653
令和 2年   32.063     18.870      763

内外教育(時事通信社)より

この数字は、内外教育という教育新聞が文部省や法務省、厚生省から調べてきた数字です。

数字を読むと明らかです。平成27年を基準にすると、非行は半分、ネットいじめが2倍、自殺は1.4倍となっています。非行が減った分、ネットに問題が流れていることがわかります。

ぱっとみると、そんなに大きな数字ではないように感じられますが、これらに関わってきた家族や先生たちのことを考えると、とんでもなく多くの悲しみや憤りがあったと想像できます。

現場で私が感じた難しさは、「ネットいじめは周囲からは見えない」ということです。

非行には、目に見える事実がありました。例えば万引きであれば「盗んできたもの」「防犯カメラ」「盗んだお菓子のごみ」「お店の方の通報」「お店に行った時間」など、誰が見ても明らかな具体的な「周囲から見える」事実がありました。

しかし、ネットいじめはそうではありません。隠れた場所で行われます。かかわった子どもたちが、学校の先生に報告しなければ絶対に学校にはわかりません。これまでの非行のように「誰かが見ている」ということはないのです。

さらに難しいのは、事実の確認です。書き込みを消している場合、再現は難しいです。つまり、証拠がないのです。だから、関わった子どもたちの言っていることが最後までかみ合いません。指導している事実と違うことが、スマホを確認した親から指摘されることもありました。こうなってくると、学校での指導は信頼を失うものになります。

私は、そもそも、親が買い与えているもの、親の責任で行うことに学校が介入するのは無理があると思っています。非行なら、明らかに学校としても指導できることがあります。しかし、ネットいじめは、携帯電話の購入に学校がかかわっていないので、制限やルールを決めるなどの指導は、保護者が行わなければなりません。

では、私たちに何ができるか。それは、子どもたちがSOSを発する、もしくは、周りの子が声をあげる場を作ることしかないと思っています。ネットいじめを実際に見ている子どもから、小さな声を拾うのです。具体的な指導は難しくても、人間関係に介入することはできます。つまり、学級経営です。実際に、放課後、学校での話し合いにより、ネットゲームでのルールを子どもたち自身で作成したこともありました。

最後は、生身と生身の人間のつながりなのだと思っています。

非常に苦しいですが、できることをやるしかないのだと思っています。もし、これを読んでいる保護者の方がいたら、こうした事実をきちんと受け止め、携帯電話やネットに関して、親の責任で子どもと話し合い、きっちり親がリードして管理をしていただければ、本当にありがたいことだと思います。

                   三浦健太朗


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