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朝、今日も玄関に並んでいる子どもたちが10名ほどいます。いつも、最後尾に並んでいる子から声をかけていきます。この会話がたまらなく楽しい毎朝の日課になりました。兄弟でケンカしたこと、家で作ったおもちゃのことなど、実にいろいろなことを教えてくれますし、毎日が違う話題なのです。こんなに子どもって面白い存在なのだと感じます。
列の後ろから話をしていって、前に並んでいる子どもたちまで来ました。話をしながら「今日も楽しかった」と私は満足した気持ちです。そんな時、とある男の子から急に言われました。
「先生、ひどい!」
??
意味が分かりません。
何かひどいことを言ったわけでもありませんし、思い出してみても普通の会話しかしていません。なにも失礼なことはしていないと思います。そこで、男の子に聞いてみました。
「なにか、ひどいことしたっけ?」
「今日、○○くんと□□さんがいない」
そういうわけか!と納得しました。
つまり、いつも一番前に並んでいる二人がいないことに気づかない先生はひどい!
もっと言うと、二人のことを大切にしていない、ということを言いたかったのです。
たしかに、彼の言う通りです。いつもいる二人がいないことに、気づいていませんでした。そして、「あれ?いつもの二人がいないねえ」と言葉にすることもしていませんでした。
いつも落ち着きがなく、走り回っている元気な男の子ですが、よく周りを見ていることが分かりました。そして誰より、先生という大人に対してアンテナを立てて、私たちを大切にしてくれる人なのか、ということを見ているのです。
朝、登校する時間がずれるということは、子供に何かあった可能性があります。誰かとケンカしたのか、体調が悪いのか、親に何かあったのか、宿題が終わらなかったのか…。そうしたことも考えず、ただ会話を楽しんでいただけの私を、彼は見透かしてしまったわけです。そして、言葉にしてくれたからこそ、子どもを大切にしていないことに気づくことができました。
「先生、ひどい!」
私たちは子どもを評価しますが、同時に評価されていることも忘れてはいけないのだと思いました。

                        三浦健太朗

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