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涙は止めないで

私自身が長く病院にお世話になっている
今日は 月1回の通院日

病院までの道では
お世話になった動物病院の前を通る
通りから覗ける動物病院の窓
その奥には獣医さんが見える

目が合うと二コっと毎回微笑んでくださる
助手さんが顔を出して、声をかけてくれることも

ハナコがいなくなってから
この窓の前を避けて別の道から病院へ向かっていた

獣医さんの顔を見たら
助手さんに声をかけられたら
確実に泣いてしまうもん

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今日は間違っちゃった
動物病院の前を通ってしまった
覗かなきゃいいのに…
獣医さんと目が合った
そして奥に声をかけている

助手さんが走って出てきた

『ほんの少し前に
 ハナコちゃんの話をしてたのよ

 がんばり屋さんだったねー
 おとなしい可愛い子だったねー って

 耳の出来物を手術する時にお預かりしたでしょ
 飼い主さんが出ていった後
 いつもの頑固に抵抗するハナコちゃんじゃなくて
 大人しくしてたのよ

 私も先生も、少しあっけに取られるくらい
 お利口さんだったの

 手術が終わってから
 麻酔が覚めて、まだ朦朧としてたこともあるけど
 大丈夫かなと思うくらい 動かなくて

 それが、急にシッポ振り出して
 何かと思ってたら
 飼い主さんが病院にお迎えに入って来てビックリ

 ハナコちゃん
 本当に飼い主さんのこと大好きなんだな
 早く会いたかったのね

 そんなこと話しながら
 ハナコちゃんの事 思い出してたのよ
 そしたら、窓の外に飼い主さんが見えたから
 なんだか嬉しくなって飛び出してきちゃいました

 大丈夫ですか?』

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私は号泣してた
それも動物病院の外 道端で

嬉しくて泣いてるのか
悲しくて泣いてるのか
分からない涙が止まらなかった

ハナコがココの道を今日は通ってね
そう案内したんだろうな

先月のようにこの道を避けていたら
この話は聞くことができなかったもの


人から聞くハナコの思い出
でも手にとるようにハナコの顔や動作が見えてくる

採血には異常なほど抵抗するのに
ハナコは ここの動物病院が好きだった
散歩途中に前を通ると
自分で自動ドアを開けて、挨拶をしてた

ハナコが獣医さんに会った最後の日は1月20日
今日は4月20日、ちょうど3ヶ月前だったんだね

獣医さんと助手さんも少し目を赤くしながら
しばらく立ち話を続けていたけど
ぐったりした猫ちゃんを連れた人が来たので
一礼をして、その場を離れようとした

その後ろ姿に獣医さんが
「またハナコちゃんと一緒に話においでな」
早口で言った

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そこから涙をふきながら歩いて、
私自身が診察を受けるために病院へ

呼ばれた部屋にはいったら、主治医がいう
「今日も付添さんと一緒かな?」

ペットロス状態であることは主治医は知っている
だから、そんな事いったのかもしれないけど
その前の獣医さんとの会話もあって
その一言で、しばし止まっていた涙は再び決壊した

大学病院のため、今日は学生さんの見学もあったのに
その前で泣きながら、問診に答えた
必死に止めようとしながら
「すみません ズルっ…」
語尾に必ず付け加えて答える

主治医が優しく最後に
「悲しみや苦しみが心にたまっているのなら
 ココに来た時は止めることなく出していってね

 涙を止めてしまうと
 それが硬いカサブタになって
 悪い腫瘍に発展することだってある

 出せる涙は気にすることなく流して
 ココは安全だからね」



なんて暖かい優しい人に囲まれているんだろう

ハナコと別れた悲しみを受け止めてくれるんだろう

今日は私の知らないハナコのエピソードを聞き
安全な場所を提供してもらった
泣くだけ泣いた一日


今日も一日ありがとう

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