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【随想】里山という境界線

季節毎に必ず行く所がある。
樹齢1000年を超える大杉。

幹周りは大人7~8人が手を広げてやっと届く程。特に何かを感じたりする訳ではないが、無性に行きたくなる時が来る。それも1人で。
今年も初詣はこの大杉のあるお宮さんに参拝した。

小さい頃は両親が共働きだった為、未就学児だった妹の手を引いてバスに乗り、山里にある祖父祖母の家へ行っていた。
当時の私は小学校低学年、最近バスに乗ってないのでどんな感じか分からないが、その頃は運転手さんに「〇〇で降ろして!」って言ってた記憶がある。
ここで懺悔を1つ。
あの時の運転手さん、用もないのに下車ボタン押して遊んだ事、ごめんなさい。


たまに祖父母が忙しい日は、更に山奥に入り曾祖父母の家に行く事もあった。
余談だが、前回の記事でも触れたが流石「日本のガラパゴス」だけあって、曾祖母・祖母共に10代で子を成し、母は20歳で私を産んでいる。
その為なんと娘は高祖父母に会っている。
記憶は朧げらしいが…

曾祖父母の家の横には小さなお宮さんがあり、周りは雑木林でわすがに陽の光がさす程度の少し薄暗い場所があった。
明け方には霧が立ち込み、朧げに見えたお宮さんの雰囲気に怖さを感じたのを今でも思い出す。

昔ながらの家で、トイレはボットン当たり前。
猟師だった曾祖父が捕まえたイノシシが「トン子」という名で納屋にいた。
水は山からの湧水をパイプでひいて使っていた。
何故かここで作ったインスタントラーメンを超える味を、まだ作れていない。
もう作れないと半分諦めてもいる。


熊出没のニュースを見る度に、そんな曾祖父母の家を思い出す。
土地が違うからなんとも言えないが、山によく行った身としては、里山から先へ降りなくてはならない熊たちが少し可哀想に思えた。
以前はそれ程野生の動物に会うことはなかったからだ。
「森のくまさん」の内容が今ではシャレにならない時がある。そんな風に思った時、害を及ぼしたのはこんな所までかと、切なさも感じた。

冒頭での大杉に会いに行った時、キツネ・ヘビ・シカ・イノシシなんかには遭遇したが、まだクマだけ見ていない。
どうかお互いの境界線を越えない営みを続けたいと願うばかりである。人も動物も…

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