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【#弐七農園】2021年のサンふじの動向について

当たり前のことですが、りんごはその年の気候の影響を多分に受けます。もちろんりんごに限らず植物全般そうでしょうが……。果実自体の見た目、味、そして翌年以降の木の育成状況。おおよその農作業の流れは毎年変わりませんが、気候に応じてひとつひとつの作業のタイミングや防除・肥料を変えたりしながら栽培していきます。作業を変えながらも毎年目指すのは同様に「美味しくて美しいりんご」なのですが、年毎に傾向が出てきます。

夏の高温や想定を超える多雨、春の訪れの早さなど異常気象はもはや毎年のこと。2021年度はいきなり冬が明けて春が来た……という陽気になり、そこからまた寒さが戻り……という気候条件が災いしました。感覚としては春の訪れが2週間早かった。徐々に春が来るというのとは違って、いきなり春が来た感じ。冬は剪定を進めるのですが、あれ、ちゃんと計画通り進めていたはずなのに2週間サボったっけ?という感覚に驚いたのを覚えています。

春が来た!と思った花芽たちは一気に膨らむものの、しっかりと春が到来したとは言えないので朝晩は冬の気温となり霜が降りる。花が咲いたあとの霜ももちろん大打撃ですが、蕾の段階で死んでしまったものも多かったのが今年の印象です。蕾をいくつか採取して開いてみたら雌しべがすでに傷んでいる。蕾も花も霜にやられた。開花の時から異常でした。花の数が圧倒的に少ない。花が咲いても実がならない。ざっくりいうとそんな感じの気候でした。

秋が来てどんな実ができたかというと……。

まずは圧倒的に実が少ない。花が咲いたら花を摘み、実ができたら段階を追って摘果していきますが、花が少ないので花摘みはほとんどせず。摘果も圧倒的に楽でした。だって実がないのだもの……。実が少なすぎると、木が「暴れる」といって枝や葉に影響が出て、翌年以降に響きます。なので、本来は落とすべきところの実を摘果せずに残してみて調整をかけました。その結果、わかってはいましたが青実(なんとなく色がぬるくて、えぐみのある味、商品価値はほぼなし)もたくさん出ました。

そして変形

変形

りんごはひとつの花から5個の実ができますが、そこから育てるのは中心の1個がベスト。けれど、今年は霜の影響を最も受けたのがこの中心果。結果的に、中心以外の子である側果を残さざるをえなくて、変形して育ってしまう。個性と言って愛でていられればいいのだけれど、変形していれば発送用のパックになかなかはまらないので困りものです。絵に描いたような丸いりんご、実はそれ以外の形の子たちもたくさんいるんです……。船形、星形、楕円などなど。

さらに、これも霜の影響が大きいと思われますが、サビもひどかった……。

サビ

量の少なさ・変形は当初から覚悟しておりましたが、実際に収穫に入ってみてショックだったのはこのサビの多さ。要は果皮がガサガサの状態のりんご。サビも軽度から重度まで個性豊かなので別記事でまとめます。世間的にもサビ自体の原因はこれといって特定されているわけではないようですが、霜や降水量の影響の他にも樹齢も関係しているようです。当園のサビは、若木については比較的マシで、老木・しかも枝によっては全てサビ……という状況でした。

サビがあまりにも多すぎるので、今年は「見た目」のレベルを全体的に落として発送をすることになりそうです。(悲しすぎる……)ただ、サビ自体が味に影響を与えることはまれで、程度にもよりますが皮を剥けば普通に美味しく食べられます。皮ごと食べたい!という方には今年はごめんなさい……という状況です。

また秋になって心配したのが、早い段階で葉が落ちる現象でした。最終的には葉摘みをしてまんべんなく色付けをして……というのがお決まりですが、ある程度の時期までは、葉っぱにはしっかり光合成をしていただいて栄養を実に送っていただきたいという思いがあります。早く落ちられるとそれだけ養分が実に行き渡らない。そこで当園では今年、葉っぱを健康に保つマグネシウムや天然由来のアミノ酸系の肥料を葉っぱに散布することで、残された葉をできる限りキープすることに力を入れておりました。これは園長ZENの肝煎りの対策。肥料代を顧みず、昆布とかカツオとか天然由来のアミノ酸だ!と意気込んでおりました。

そのおかげか、見た目は劣るものの味はどれも平均して美味しい実に仕上がっていると思います。「美味しい」というのは当園の感覚では「かじった時にガツンと濃い味が広がる」ことをイメージしております。今年のサンふじの味については、必ずしも見た目に比例せず、え?という見た目でもそこそこしっかり味があるという印象です。そこだけは不幸中の幸い、本当に良かったと思います。

そうは言うものの、葉っぱが落ちるタイミングが異常に早かったことが災いして日焼けりんごも多めです。

日焼け2

日焼けりんごには白色日焼け、オレンジ日焼け(↑写真)などありますが、いずれにしても見た目が劣るとともにそこから傷みやすいのでかなり厄介です。出荷前にすでに柔らかいもの、日焼け面積が大きいものは問答無用で破棄/もしくは加工へ、本来は市場に乗せたくないのですが、今年はあまりにも量が多くもったいないので、日焼けの中でもレベルに分けて何らかの方法で出荷していきます。

またその一方で、残った葉っぱを大切にしたいという想いから、りんごを満遍なく赤く色付けるために行う葉摘のタイミングを遅らせたため、葉あと・枝あとが多いのも現状です。

はあと3

こちらの「葉あと」りんごに関しては味・日持ちに全く問題がないため、「色基準」が厳格な一般市場への流通は別ですが、当園からの直送するりんごに関しては「瑕疵なし」とみなします。

まとめると、今年のりんごは変形・サビ・日焼けが異常に多いということです。

安曇野市全体の市場の様子

以上は当園のりんごを見回して感じた所感ですが、こちらでは当園も含む安曇野市のりんごについて感じることについてまとめます。

やはり春の霜の影響で、市場全体としてりんごの量が圧倒的に少ない。少なさを実感するのは、直売所・スーパーを含め「贈答品」の予約・受付を休止しているところがあまりにも多いこと。近所の直売所では、毎年サンふじの時期には店舗外に特設スペースを儲けて発送用のりんごを平積みしておりますが、そんなものは存在せず。売る側もどれだけの量が農家から出てくるかわからないので、予約は軒並み断っている模様。そういう説明をされているお店の方たちの声もよく聞きます。

直売所にはオープン前からお客さんの長蛇の列ができて、わずかに納品される贈答品は一瞬で消えていく。そのせいか巷で贈答品をほとんど目にしておりません。家庭用の箱入りのりんごも午前中のうちには完売してしまいます。直売所の外では、袋入り・家庭用箱のりんごを解体して、新聞紙でくるんで発送しているお客さんの姿もよく目にします。発送に耐えられるのか少し心配ではありますが、楽しみ方は人それぞれですね。こんな状況でも必死にりんごを求めてくださる方々が多いのは、とてもありがたいなあと思います。

畑で収穫や選果をしていると、りんご売ってませんか?と聞かれることが今年は特に多かった印象です。こちらも量に限りがあるので、直売所で販売しているレベル以上のものをその場で売ることはできないのが現状。おそらくお客さんが欲しいと思っているレベルのりんごは、地域の畑を見回してもなかなか出てこないのだろうな……となんとも複雑な気持ちになることもしばしば。

同じ地域では、畑によってヒョウにやられたところも無数にありました。そうするとそこではもう一般的な基準でのりんごは出荷できず。そういうことも重なって全体として量が少ないのだと思います。近年はどこかしらでヒョウが降り、もうこれは運としか言えないレベルの話になってきました。当園でりんごが少ないながらもある程度の出荷量を確保できたのは、たまたま運が良くてヒョウを免れたことと、そして例年開催しているオーナー制度を見送ったためだと思われます。例年であればオーナーさんが収穫して持ち帰る分のりんごを発送に回しているわけで、それを考えでもやっぱり量は少ないということですね……。

そして市場で並んでいるりんごを見てみても、やっぱりサビと日焼けが多い。サビと日焼けに関しては、各市場ごとに例年よりも基準が緩くなっているとはいえ、それを越して瑕疵のある子たちの量が多い。これらをどうやってさばくか……農家としては悩みどころです。

2021年度、当園の「上品規格」のりんごについて

味は上々、でも量が少なめ、見た目が劣るりんごたち……。

以上を踏まえ今年の当園の発送用の規格は、例年になくかなりの調整をさせていただきました。

当園では発送用として基本的にはメール会員様限定で、贈答品も含む「上品」と、自家用消費を想定した「ハネだし品」の大きく2つに分けて用意しております。(※今年度の「上品規格」相当の発送受付は既に終了いたしました。)

いずれの規格でも輸送に耐えうるものを選び抜き、その中でも上品には「日持ちのするもの」「おいしそうなもの・見た目」を大前提に選びますが、例年ですと見た目の問題から上品に含まないものも今年に関しては「上品」に含ませていただく予定です。具体的には下記のようなものも今年は「上品」に入れて発送いたします。

軽度のサビ(全体に散在するもの、上部の窪みに少々サビがあるもの、全体として外観に気持ち悪さを感じない程度)
軽度の日焼け(内部に影響を及ぼさない程度のもの)
○軽度の変形(発送用のパックに入り、きちんと固定されるもの)
軽度のスレ(表面のみで内部に影響を及ぼさない、小さなカサブタのようになっているもの)
葉あと・枝あとのあるもの

1番の悩みであるサビについてですがこのくらいのレベルまでは「上品」として入れる可能性があります。

サビ限界レベル

もちろん、この見た目ばかりのものが入っていたら、え?という感じなので全体のバランスは整えます。もちろん上記のような瑕疵が全くないりんごたちもありますので。

今年の「上品」にギリギリ入るボーダーラインのりんごたちを集めた模様はこちら。サイドのりんごの歪みはカメラのレンズによるものです。

画像6

こちらは「上品ボーダーライン」の子たちを集めた写真なので、全体のバランスとしてはこれよりも見た目がいいものを選んで発送する予定です。もちろん例年基準で見た上での瑕疵のないりんごたちも量は少ないものの控えておりますので。

昨年は「特上品」も作って見た目にもこだわることができたのですが、今年は残念ながら量的にそのような余裕がありません。それでも美味しいものをお届けできれば嬉しいという想いをバネに、限られた量の中での最善を尽くしたいと思っています。よろしくお願いします。


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