【#弐七農園】りんご(サンふじ)の個性について ④傷

農作物に傷……というのはとても想像しやすいことだと思います。成長の過程での枝ズレだったり、何かにぶつかったり、そして収穫時に傷をつけてしまったり……。程度も様々、傷がつくタイミングも様々なので、「個性」として括ってみた場合にこれほど奥深い個性ってないかもしれない。

じゃあ農家が出荷ベースで考えたときにどの程度までの傷を「瑕疵なし」とできるのか。傷はなかなかシビアなんですよね……。

傷1

出ました、なかなかハードな生傷系。これは収穫の数日前にかなり強めの風が吹いたときにできた傷。触ると柔らかくなっております。ここから傷んできます。この傷、即販売して手にした方がすぐに食べる……という状況なら(大きさによっては)いけるか?どうか?という傷です。この傷を見せた上で直売所とか手渡しでの販売ならやってもいいかな?どうかな?というレベル。卸を通す場合はキビシイなぁ。

右の上の傷は生傷。収穫数日前の風が原因で枝などにぶつかったのだろう。収穫時期に相当な風予報が出た時は、こういう被害があるから早めにとっておくべきか非常に悩む。


傷2 枝スレ


これも傷。おそらく枝などで押されて傷がついたもの。枝スレなんて言い方もします。写真だとわかりにくいのですが、これは触っても柔らかくないかたい傷。カサブタのような状態といいましょうか。傷ができてからだいぶ経つのでこの部分はボソボソして食べられませんが、ここから傷みが広がるということはあまりありません。削れば問題なく食べられる。
なので完全に大きさ・見た目の問題になってきます。全体として美味しそうであれば直売所でよく売れるタイプ、その他に問題がなければ、自家用の直販セットには入れてしまいます。

これはちょっと前の刺し傷と思われます。「もったいない傷」の代表格が刺し傷。収穫時に枝を刺してしまったり、爪があたったり……というのが刺し傷の「もったいない」感情の由来ではありますが、枝に下がっている間に芽にぶつかったり枝にぶつかったり……ということでももちろん発生します。
写真の例では、傷は古そうですが、刺し傷は深くまで到達している場合があるので、よく観察してから判断します。傷の面積的にはこの程度で日持ちに問題がなさそうだと市場出荷でもパスできる場合があります。


写真がありました、もったいない刺し傷。この右上部の点がおそらく収穫時に芽か枝に刺してつけてしまった傷。これは本当に悔しい傷。これさえなければ……という出会うとブツブツ嘆かずにはいられない子です。ガタッと価値が下がる。贈答品には入れられない、市場も出荷できないわけではないけれど価格は下がる、直売所か家庭用か……そういう判断を迫られます。

こちらは刺し傷と裂けた傷のコラボレーション。前に写真で出していた茶色に変色した傷は、皮が破れなかったケースですがこちらは皮が裂けた傷。中身を見る限り、古い傷ではないですが、収穫直前でもなさそうな乾燥具合。こういうのは直売所で傷を見せた状態で販売しています。それでも傷の面積を見てこのくらいが限界かなぁ……というのが正直なところ。
これは傷が複合したケースですが、何かしらの障害って本当に複合したケースが多いです。

1つの瑕疵でこの程度なら許せるのに、それが2つも3つもあるとなぁ、1つ1つは大したことないのに……とボヤかずにはいられないりんごたちもたくさんいます。

当たり前ですが、「傷」といっても大きさも具合もそれぞれなので、出会うたびにうーんと首を傾げながら判断しております。そして最終的には、お客さんが手にしたときにどんな感情か(許せるか許せないか)を想像します。

ワレ

こちらは傷というより「ワレ」というやつです。直売所の出荷基準だと「カミソリ傷程度なら可」などどいう表現が使われます。
生傷同様、ここから傷んできます。程度にもよりますが、発送には最新の注意を払って家庭用のみ入れたりします。基本的に直売所が多いかも。卸を挟む場合はかなり厳しいのが現実です。収穫前の雨量の影響を多分に受け、2021年度はこのワレは少なかったのですが2020年度は多発しておりました。


番外編の傷。中央から下、やや右寄りのあたりに傷があります。これ、鳥さんが召し上がったあとの「鳥害」ってやつです。
これは程度の差もなく、足跡だけついた状態でも、いずれの場所にも出荷しません。加工にも回しません。その場でかじって畑に捨てる、もしくは私たちが自宅に持ち帰り親族で食べるだけの運命。

「もったいない」ベースで話をするのならば、削ったら問題なく美味しく食べられますよというりんごがとても多いのが現実です。特にこの傷りんごについてはその側面が多い。けれど私たち農家の手を離れてからどれくらい時間が経つのか、その間にりんごがどう変わってしまうのか、そのあたりを考えるとやっぱり出荷する際に悩んでしまう。実に悩ましい、個性豊かな傷りんごたちです。



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