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「それ何色?」と問われなくなる日が来るらしい。

もう5年も前のことだ。

って書き出すつもりでいたのね、いま。

全然うそ、うそもいいとこ。6年とか、7年も前だ。
だってわたしはあの春、まだ18だった。


最近ネイルを塗るのにハマっている。
指によって色変えてみたり、百均のきらきらシール貼ってみたり。
高校生の頃くらいに爪に色を付けることはもう覚えてたけど、最近それがレベルアップして、そんで、週一くらいでちまちまそれを直している。
塗る頻度が増えたり、色をうまく使えるようになったから、ネイルポリッシュの数がここ2ヶ月くらいの間にめちゃめちゃ増えた。
安いし、ボトルのデザインがあれこれするのがいやで、買うのはもっぱら信頼のキャンメイク。

中にはネイルを塗るのを覚えだした頃の、高校生か大学生になったばかりの頃のポリッシュもあって、必要以上にきらきらしてたり、もう使わないなぁっていう色を少し前に処分した。
それでもその頃買ったポリッシュがひとつだけ残っていて、グレージュっぽい、あの頃も今も流行っているような、今でも年相応な、大人っぽい色。

本当のところもう中身も結構減っていて、ハケにしっかり液がついてくれなくてやりにくいからずっと使っていなかった。(じゃあ捨てんかい。)
それでも色味が気に入ったままなので、たまには塗ってやるかぁって思って先週塗ってみた。
新品のポリッシュがいっぱいある中で、あからさまに塗りにくくて、なんか中身もこてこて固くなってて、全然きれいに塗れなくて。
しばらくそのまま過ごしたけど、結局汚い感じが気になって2日くらいして別の色に塗り直しをした。


これはもう諦めですなぁって、処分しようと思ってケースにしまわずに机の横にはけてあったの。
今それがふと目に止まって、思い出した。

2014年の春、4月の末の土日。
生まれてはじめて、それから、あれきり一度も乗ってない東北新幹線で荷持を抱えて通路で座り込んでいたあの日のこと。
何周も、何周も繰り返しウォークマンから流していたRADWIMPSの『絶対絶命』のアルバムのイントロ。
あたたかさを見せだした季節のあの日の風。
お気に入りの場所だと言われた土手へ続く階段。

「そのネイルはさ、何色っていうの?」

土手に寝っ転がって真上の空を見上げていたとき唐突に聞かれたその声を。

「え、うーん、知らないけど、グレージュ?とか?」

美大生だから色の名前に詳しいとでも思ったのか聞かれたのに、ただの流行り色で、なんか中途半端な応えをしたのも。

本当は前日の夜に塗り直したかったのに、忙しくて全然余裕なくて、ちょっと先や根本が崩れててほんとは見られたくなかったあの日のネイルカラー。


すきなひとがいたなぁと、ばかみたいに今でも思い出す。
このネイルポリッシュを見る度に、この7年の間に、何度も何度も思い出した「それ何色?」っていう質問。
デートに着てくるのはワンピースじゃないほうが好み、とか、思いっきりワンピースを着て会った日の後にTwitterに書き込むいじわるとか。
「今度会うときは、くちびるがぷるぷるなのが好み」って言うから、生まれてはじめてリップグロスを買いに行ったその後の話とか。
(どうでもいいけどそれもキャンメイクのピンク。べたべたして髪の毛がはりつくからうまく使えないまま、結局2度と会うことなかったので見せてもいない。ほとんど使ってないけど、さすがにもう捨てている)
あの日着てたワンピースももう何年か前に古着に売り飛ばしたよ、もう大人の女になったからね。


あの日履いていたスニーカももう処分したし、
あぁ次は、どうやらこれみたい。


処分することにしたよ。
何故ならもう、使えないから。
わたしの毎日のためでなく、ただの感傷に、思い出になったから、もう処分します、よ。


あと、「好きにして」と言われた借りっぱなしの文月悠光の詩集は、まだ、本棚にあります。


#エッセイ #日記 #ネイル #キャンメイク #初恋


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