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新潟県が掲げる『自然エネルギーの島構想』について

新潟県の沖合に浮かぶ佐渡島と粟島をご存知ない方は新潟県にはいらっしゃらないでしょう。多様で恵まれた自然環境を誇る美しい離島で、そこは豊かな自然に囲まれるだけでなく、農林水産業や観光業などの文化資源や地場産業が発展してきた島々です。

しかし、一方で類にもれず日本全国的な課題となっている人口の減少や高齢化、地域経済の低迷といった多種にわたる社会的な脅威を抱えていることに間違いはありません。

その中でも大きな課題となっているのが、エネルギー供給の問題です。

現在、佐渡島と粟島では、発電量の90%以上をディーゼル火力発電に依存しており、環境負荷や燃料輸送コストが高いという問題を抱えていますが、このことは決して多く知られていません。

では、太陽光発電などの再生エネルギーを導入すればいいのかというと、電源供給が安定的ではない分、火力発電などの代替電力を残しつつ徐々に移行を図っていくなど、電力需給の調整が必要ですが、島々の電力網が本土から独立しているため広域的な電力需給調整ができません。

つまり、いくら本土で電気が余っていたとしても、佐渡や粟島浦村へ電力を供給することができないのです。

そこで新潟県は、この島々における地域経済の活性化、防災力の向上、豊かな自然環境の維持を目的とした「自然エネルギーの島構想」を打ち出しました。

今回のnoteでは、先進的な事例として日本だけでなく世界に発信できる事例になることを期待する意味を込め、解説していきたいと思います。

自然エネルギーの島構想の目的

新潟県が掲げる佐渡島と粟島を対象とした「自然エネルギーの島構想」は、佐渡島と粟島で再生可能エネルギーの導入を拡大し、自然と調和した持続可能な循環型社会を実現しようとするもの。

エネルギー自給率を高め、現状のディーゼル火力発電で利用している化石燃料の調達に伴う資金流出を抑えることで、環境だけでなく、新たな雇用の創出や企業の事業拡大など、地域活性化を促進するための取り組みであり、より持続可能な未来に向けた先導的な取り組みだといえます。

技術革新や国の政策動向を踏まえ、地域社会や官民が一体となった先駆的なプロジェクトが実現することにより、佐渡島と粟島にとどまらず、日本中にある離島が希望を抱けるプロジェクトにすることができると言えるものであり、もしかしたら世界中の離島でも同様の課題を抱える島々の課題を解決することにつながる可能性を持った計画です。

佐渡島と粟島が抱える課題

「自然エネルギーの島構想」を実現するために抱えている佐渡島と粟島は、現状いくつかの課題があります。

90%以上を占めるディーゼル火力発電による供給

まず、電力生産のうち、90%以上をディーゼル火力発電に依存しているため、環境面や経済面で大きな課題があります。ディーゼル火力発電とは、軽油を利用したディーゼルエンジンを利用して発電する方法のことです。

ディーゼル火力発電は比較的小規模な発電設備で済むため、燃料を保管するスペースが少なく済みます。また、軽油を利用するため石炭や天然ガスのように大量の貯蔵スペースが必要ではないため一定以上の土地があれば建設が可能な発電施設で、運用コストも他の火力発電と比較すれば安価で済むことも特徴です。

しかし、軽油を利用して発電するため、二酸化炭素や窒素酸化物、微小粒子状物質などの排出が発生します。また、燃料を輸入する必要があるだけでなく、輸送する際のコストも高く、燃費も悪いため、長期的には別の燃料へ代替できることが理想です。

本土からは独立している電力網

電力会社や発電所が発電した電力を、各家庭や事業所、工場などに送るためには送電線と配電線と呼ばれる、いわゆる電線を通して届けられます。

送電線は高圧・超高圧の電力を運ぶ電線で、送電会社や発電所が発電した電力を各家庭や事業所、工場などに送るために使用されます。一方、配電線は、送電線から送られた電力を各家庭や事業所に分配するための電線で、低圧のものが多く、建物内に入っている配電盤から電力を供給します。

これらの配線をうまく活用することで、電力の需給バランスを整えているのですが、佐渡島と粟島の電力網は本土から電力網が独立しているため、本土との広域的な電力需給の調整ができず、再生可能エネルギーによる安定的かつ信頼性の高いエネルギー供給を実現することが困難なのが実情です。

現状、太陽光発電などの再生可能エネルギーは夜間、電源とはなり得ませんし、昼間に発電したものを大量に保管できるような蓄電池の開発はされていません。

人がいなくなるだけでなく産業も衰退傾向

さらに、日本全国でも課題を抱えている人口減少や過疎化、地場産業の衰退など、社会的・経済的にも多分にもれず大きな課題を抱えています。コロナ禍によって観光客の減少や観光需要の季節変動が起こりましたが、こちらも地域経済にさらなる影響を及ぼしています。

自然エネルギーの島構想が実現することによるメリット

佐渡島や粟島のような離島が抱えるエネルギー課題を解決するためには、官民が一体となった取り組みが必要で、「自然エネルギーの島構想」は、再生可能エネルギー関連産業の振興だけでなく、地域社会や企業を巻き込んだ先駆的なプロジェクトとなる可能性があります。具体的には、新たな雇用機会の創出や地域経済の活性化でしょう。

長期的な視点に立ってみると「自然エネルギーの島構想」が実現するためには、CO2排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)を達成するために必要となる技術革新や国の政策動向も考慮しなければなりませんから、実現できるとしたら、それは豊かな自然環境を守り、文化資源を維持し、自然と共生する持続可能な循環型社会を確立し、その価値を次世代に伝えていくことができます。

経済成長への期待

自然エネルギーを活用することによるエネルギー自給率の向上は、化石燃料調達に伴う諸外国への資金流出の減少となります。また、自然エネルギーにまつわる事業の拡大は雇用創出を生み出すことが期待できますし、あわせて島内にある産業の成長も期待できるでしょう。

また、再生可能エネルギーを導入・促進することで輸入化石燃料への依存度を下げることができますから、世界の燃料価格の変動による影響を軽減することができることから、エネルギー価格の安定を図ることができます。つまり、コストを下げることができるのです。

環境負荷を低減できる

太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用することは、待機中の熱量を蓄積し地球温暖化を引き起こす温室効果ガスを少なくすることが期待できます。特に、化石燃料や原油の利用率を下げていくことは二酸化炭素の排出量を大幅に削減し、気候変動の緩和に寄与することができます。

これは、新潟県の離島地域への利益だけでなく、地球規模でも好影響を与えられるでしょうし、何よりもエネルギー自給率が高いことによってエネルギー安全保障にも貢献することが期待できます。

エネルギー安全保障とは、国や地域が必要なエネルギーを安定的かつ安全に確保することを指します。石油や天然ガスなどの化石燃料は、輸入に依存することが多く、その需要と供給のバランスが崩れた場合には、エネルギー価格の急激な上昇や供給不足に直結します。

自然エネルギーの利用によって、化石燃料に依存しないエネルギー供給体制を構築することができます。また、自然エネルギーは、地球温暖化や環境負荷を低減することができるため、エネルギー安全保障と環境保護の両面に貢献することができます。

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世界情勢や燃料価格に関して個人や法人ができることはありませんが、消費電力を抑えるための設備投資を行うことや再生エネルギーによる自家発電の導入など、対策として取れる手段は確実に存在します。
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