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信頼していた賃貸管理会社が予告なく倒産したときの話

本業の傍ら不動産投資で資産形成を進めている投資家の杉谷様。『55歳でリタイア』を目標に、物件の購入と積極的な繰上返済を行っています。今回は、投資を始めたきっかけや目的、物件を増やす考え方などについてお話を伺いました。

不動産投資の良さに気づいたきっかけは1戸目のローン完済

——まず初めに投資を始めたきっかけからお聞かせください。

大きくは「自由な時間を手に入れたい」ということと、「お金に不自由のない人生を送りたい」ということが投資を始めたきっかけです。父親が漁師をやっており、当時は365日ずっと働き詰めみたいな感じでした。それを見ていて、確かに「ありがたかった」という感謝はあるものの、あまり両親と接する時間もなく、振り返れば少し寂しかった、という思いが正直ありましたね。自分はそうではなくて、「子供と一緒に過ごしたい」とか、仕事に追われずに「自分の大事なことに時間を費やしたい」という思いがあったのです。
また「お金に不自由がない人生」というのも、そういう過去の思いからきているのかもしれません。親の背中を見続けていたので、良いときもあれば悪い時もある、ということを子供のころから実感していました。結果的に恵まれていた方だと思うのですが、小さい頃はそれがよくわかっておらず、「お金がかかる、お金がかかる」と親が口にしているのを聞き、子供ながらに我慢していた部分も結構ありました。そういったことがきっかけで、29歳の時に株式投資を始めました。

——最初に株式投資を選ばれた理由は何ですか?

一番大きな理由は、会社の先輩がやっていたことです。今から15年以上前ですね。当時はまだ、株式投資をする人は少なく、親からも「そんなことは止めなさい」と言われる時代でした。とはいえ、仕事ができる先輩が株式投資をやっていて、最初は見よう見まねでやっていました。投資額は年間に数十万円ずつくらいです。
ところが、株を始めて数年たった頃にリーマンショックが起きました。びっくりしましたね。一気に株価が下がり続けて、売るに売れないような状況になってしまって。
また、逆もしかりです。もし株価が上がったとしても、どこで売っていいのかが分からない。自分の中で売買のルールが決められていなかった、というのもあります。よく株式投資の本を見ると「上下20%に達したときに売りなさい」というのがあります。頭では分かっていても、なかなかそれが出来ないものです。リーマンショックの経験から、株式投資だけでの生活というのは難しい。並行して何かやらないと、と考えるようになりました。

——そこで考えた選択肢のひとつが不動産投資でした。

はい。ただすぐに始めたわけではなく、転勤や結婚、育児など、プライベートがいろいろと忙しかったので時間がかかりました。まあ、「何かやらなきゃ」とはずっと思っていたのですが、やはり目の前の雑多なことに時間を取られて余裕がなかった、といったところですかね。
またちょうどその頃から給料がそれなりに上がってきて、一時の満足感がありました。仕事も一番楽しい時期でした。
そのころでしょうか。仲の良かった同僚が不動産投資を実践しているのを知って、いろいろ話を聞きました。その同僚は地方の物件を安く購入して、家賃収入を得ていました。ただ家賃収入を考えるなら「東京が良さそう」という思いがあり、某不動産会社に資料を請求して説明を受けたことがあります。ところが、この時はあまり腑に落ちなくて。「何で最初に100万円を払っているのに、直ぐに100万円が戻ってこないのだろう」、「投資をしていても戻ってくるのが何十年も先か……」という思いがありました。
株式投資なら、100万円を投資すればすぐに105万円とか110万円になる。「お金儲けとはそういうこと」と思っていたのです。また長期的な投資なので想像しにくい部分があったのではないでしょうかね。おそらく不動産投資に踏み切れない方の多くが、このあたりを難しく考えているように思います。
ただ、少しずつ勉強を重ねて、まずは実践してみようと都心の中古ワンルームをローンで購入してみました。
不動産投資の良さを心から実感したのは、1戸目のローンを完済した時です。毎月の家賃収入が満額入ってくるフローが出来たときに「ああ、なるほど」と腑に落ちました。

突然告げられた「管理会社が変わります」

——実感したのは1戸目を完済したタイミングだったのですね。ただその前に、なかなか腑に落ちない中で物件の購入に踏み出せた理由を教えていただけますか?

やはり、すでに同期がやっていて、それなりの成果を上げていた、ということです。「まあ、自分もやらなきゃいけないよな」というのが正直ありましたね。当時、37~38歳くらいだったのでそれなりに資金もあったし、「駄目もとでやってみるか」という感じでした。「物件さえ間違えなければ大丈夫」というのも何となくあったので。
また、妻と「貯金で持っていても今後どうなるかわからないよね」と話したことも影響してました。日本政府がインフレを加速させたときに「お金のまま寝かせておくのはちょっと怖い」という思いが妻にもあり、実物資産となる不動産に代えることを考えたのです。

そうした中でいろいろ物件を見て、一番初めに買ったのは品川区の物件でした。これはリニアの話もあったし、持っていて損はない物件だと思いました。また、築浅でもあったのが大きいです。
その3カ月後に、築年数の経っていた少し安めの新宿区の物件を購入しました。私はあまり東京の地理に詳しくなかったのですが、学生街に近かったということが大きかったですね。最初に完済したのがこの物件です。
立地で選んだこともあって、退去してもすぐに埋まっていく、というのが結構心強かったです。そのことが後押しになって、3戸目の購入に至りました。

——まずは3戸購入していったのですね。2戸目の物件を最初に完済されたといことですが、どのくらいの期間で完済したのでしょうか?

5年です。もともと『55歳までには会社を辞めたいな』というのがあったので可能な限り早く完済物件は作らないといけないなという思いがありました。さらに前の賃貸管理会社から紹介を受けてローンを組んだ金融機関では、5年目までは繰上返済手数料が高いという条件がありました。ですから、借入時に借入期間を短くし、せっせと一生懸命毎月の返済をし、5年経った時点で一括返済しようとずっと決めていました。

そのさなかでした。前の賃貸管理会社から『管理会社が変わります』と突然連絡が届いたのは。要は、投資用の不動産を預けていた管理会社が倒産したのです。