日本酒紀『和風スナック桂子(七尾市)』
きき酒師の漫才師「にほんしゅ」北井です。日本中を旅しながら日本のお酒を楽しむ酒漫才師として活動して10年が経ちます。
日本書紀のような正当な歴史書は重要なものだと思います。そこで、日本のお酒、酒場、酒蔵、お酒の造り手、スナック、つまみに至るまで日本のお酒に関わるものを僕なりに残しておきたいことを「日本酒紀」として書いていこうと思います。
久しぶりの心機一転note投稿。「日本酒紀」第1回目です。
『和風スナック桂子』(石川県七尾市)
39歳の僕が思いきって自分1人でもスナックに飛び込むようになったのは3年ほど前のこと。
初めて、しかも1人で飛び込む居酒屋さんで感じるドキドキも大好きですが、30代半ばになり「そろそろか、そろそろ俺も居酒屋だけじゃなくてスナックに飛び込まねばならぬときが来た」と天啓に似た感覚で飛び込むようになりました。
居酒屋と違って店内の様子が全くわからないスナックへ飛び込むドキドキは居酒屋の比ではない。
しかし、そこで与えられる楽しさや予想外のおもしろさもまた、居酒屋の比ではない。基本的に30代男が1人でスナックに入るとわりとお客さんのおじさんにも可愛がってもらえたりする。
2023年11月末、どぶろくのイベントのお仕事をいただき、どぶろくをテーマにした漫才やミニ講座などをさせていただくために石川県の中能登町へ伺い、コンビで仕事を無事終えて宿泊はすぐ近くの七尾市へ。
ほとんど全ての都道府県にお邪魔したけれど残り少ない未到の県・石川県。初の能登。
相方あさやんとランチのお寿司や地元の人気居酒屋などで飲み、よく飲んで食べてお腹もいっぱい。時刻は21時。
疲れもあり、もうホテルに帰って寝ようかと思ったけれど相方は僕が1人でスナックに飛び込んでああだったこうだったと喋るエピソードが好きなようで「北井はこれからスナックやな、うん!」と鼻息が荒い。こういうときの相方が引き下がらないのはよくわかっている。
外まで声が聞こえるほどに盛り上がってるスナックでは1人で飛び込んでもママともあまり話せず、本当に静かに飲んですっと帰るだけになる可能性が高い。それは避けたい。
できるだけ今は静かな状態のスナックに入らねばならない。ここは慎重さが求められる。
扉に耳を当てるようにお店を探す。七尾駅近くの繁華街には結構な数のスナックがあるので迷ったが「ええい、ままよ!(スナックだけに?)」と飛び込んだのが「和風スナック桂子」
おそらくお着物を着た桂子さんというママがいらっしゃるのだろうという想像以外はスナック歴の浅い僕にはできない。
思いきって「1人いいですかー?」と入った瞬間、お着物を着た上品なママさんがいらした。
まさに「和風スナック桂子」である。
先客無し。30代男1人対桂子ママである。
しかしこちらが全然緊張する間もないほどにテンポよく喋りかけてくれてホッと一安心。スナックのママというのは凄い。能登の人のおしゃべりやノリの良さは意外と関西に似ていると感じた。
僕は酒場やスナックでは基本的には「お酒のことを喋る漫才師」である素性を早々に明かすことはないけれど、この日は桂子ママの話しやすさや僕しか客がいないこともあり、どぶろくイベントのお仕事で初めて能登に来たことや、にほんしゅというコンビでお酒の漫才をして全国あちこち巡っていることを伝えた。
そこからの桂子ママとのトークやお酒は本当に楽しかった。弾むようにお話をするママで、「このスナックに入って良かったー!」という笑いまくりの時間が流れていく。
桂子ママのお話も聞くと、お孫さんがいる。お母さんの桂子さんからこのお店を引き継いだ。などが分かった。
桂子ママだと思っていたママは、桂子ママの娘さんだった。
しかし、そんな僕の勘違いなどはおかまいなしに楽しい時間は過ぎていく。
ママも一杯飲んでくださいということで一緒に瓶ビールをあけることに。
「セットが3,000円なんやけど、ビールはセットには入ってないから1本1,000円やけどいい?」
「もちろんです」
とスナックらしい会話を経つつ、ママとともに瓶ビールは合計3本飲み、セットに含まれているだろう焼酎とはまた違ったお酒も色々と出してもらった。これはお酒の漫才をしていると名乗った僕の特権のようなものでありがたい。
「このパンプキン焼酎飲んでみて!」
「はい!いただきます」
まさか能登へ来てパンプキン焼酎を飲むとは夢にも思わなかったがこの想像の斜め上をいく出来事が起こるのがスナックの楽しいところ。
パンプキン焼酎はまろやかでふわりと甘く美味しい焼酎だった。
セットのおつまみも「和風スナックやからね、乾きものは出さんよ」という意気込みが素晴らしく、セットのおつまみに美味しい豆腐やあっさりした煮物を出してもらい、大満足。
さらに「これ能登の塩やから、なめてみ?」などお酒やつまみに興味のある僕にいろんなお酒やつまみを出してくれた。まろやかで美味しい能登の塩とともに飲んだお酒の味は忘れない。
目の前にいるママは桂子さんではないけれど「和風スナック桂子」という名前通りの品の良さも楽しさも最高のスナックでした。
1時間半ほど飲んだところで常連さんも数名いらしたのでお会計をお願いすると
「えーとね、4,000円!」
なんで???
セット3,000円で、瓶ビール1本1,000円で3本飲んだから3,000円。少なくとも合計6,000円です!
「いやいや、それはダメです!」と言いつつ、なんとか妥結点として5,000円札を置いてきました。
初めて訪れた能登・七尾の夜は美味しい海産物や地酒、あたたかくユーモラスなみなさんのおかげで最高の時間を過ごせました。
感動の初訪問からひと月経った2024年元旦に能登を襲った大きな地震。記憶に新しい七尾の駅前あたりの甚大な被害をニュースで見るたびに胸が締めつけられました。
震災から半年。まだまだ復興なんて段階ではなく、撤去・復旧の段階もクリアしていない非常に厳しい現実が能登のあちこちに。
どんどん報道は減っていますが能登のニュースはずっと追っかけてます。ここから酒飲み、旅好き、漫才師ならではの応援をできる限りやっていきますよー!
みなさんもふっと思い出したときに石川のお酒や富山のお酒を一杯飲んでみてください🍶
石川にも災害が小さいエリアはありましたがそのエリアのお酒でももちろんいいんです。県内のわりと無事だった酒蔵さんが被災した酒蔵さんのサポートを様々にされていますから間接的にですが間違いなく応援になります。
心を寄せて、杯を重ねましょう!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?