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再び日本語の外来語加工技術

                             鶴田知佳子

1月6日の大統領選挙人により大統領選挙の結果が確定する日にはからずもアメリカ議会議事堂の占拠事件が発生、議会議事堂への乱入というまれにみる出来事で歴史に残る日となった。Insurrection という単語が使われたことで、その語の成り立ちをあらためてふりかえった。

英語の場合、どのように単語が作られているのか

それは語幹別に分けて考えることができる。「反乱」in 「中で」sur 「下から」rect 「立つ」-ion「こと」など接頭辞や接尾辞などの語幹の組み合わせで、これがあわさって「内部の下のものたち(市民など)が立ち上がることで反乱がおきる」という意味になる。しかし、一つずつの語幹が独立した単語でないのが日本語の場合と違う。

最近のコロナ関連の造語

本ブログの「和製英語の弊害」でもとりあげられた「ウイズ・コロナ」は、英語の前置詞を借用して「新型コロナウイルス」の短縮形である「コロナ」と併せている。結果として、短縮形をもとのcoronavirusに戻してwith coronavirus は英語では通常は使われていないことは、すでに「和製英語の弊害」で指摘されているとおりである。

力の強い国の言葉を使う造語を用いたい心理

平安時代初期には『日本霊異記』という訓読を前提とした「変体漢文」で書かれ、中国語としては読めない、現代の「変体英文」に通じるところがある本があったという。力の強い国が使う言葉を用いた造語を用いたい心理が働くのは、平安時代から続くことなのだろうか。

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思い出すのが、たとえば子育てのときに身体的なふれあいが大事だとする「スキンシップ」というカタカナ語である。skin +shipでいかにも英語のように聞こえるけれど、一説によると児童心理学者が海外での会議参加の折、出席者の造語を持ち帰ったのが広まったという。こういう形で英語の接頭語、接尾語を組み合わせた造語が多くあるとあらためて気づいた。かくいうname+ing「ネーミング」(名前をつける)もそうである。

すでにとりあげたmy number「マイナンバー」(個人番号)の場合のmy、skill upスキルアップ(技能を高める)のup、などのように、頻繁に造語に使われる英単語がある。たとえば、「マイ」は最近のエコブーム(これも和製語だが環境に配慮)のために「マイボトル」(個人用の瓶)「マイバッグ」(買い物に自分の袋を持参)するなどの例があるし、「アップ」はレベルアップ(水準の向上)ライトアップ(照明)などがある。

そう考えると、本来の英語の使い方ではないものの、実は英語から熱心に学んで単語や語幹は取り入れている。日本語で言えるのに外来語を使用すると「レベルアップした」表現にすると格上の表現になるとの意識があるのだろうか。

「通訳・翻訳」の観点から言語をみると、政治やイデオロギーやそのときの支配的な文化など、いろいろなことがみえてくる思いがする。

                          (2021年1月11日)

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