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「やさしい日本語」で、英会話!

加藤 麻子

大人の英会話初級者は、中学・高校で英語を学んでいるため英会話に必要な語彙を既に十分習得している。しかしながら、長い間使っていないために、脳の使わないファイルに保存されたままだ。

それでは、大人の「やり直し英語」の生徒が英語を全く話せないかというと、そうではない。週に1回60分、数ヵ月学ぶうちにだんだん思い出し、使わないファイルから「使うファイル」へと言葉が移動を始める。そして少しずつ英語が口から出てくるようになる。かなり難しい単語も登場する。だが、ここで一つの問題にぶつかる。思い出した単語をどのように使っていいか分からないのだ。それは、思い出した単語が見たり聞いたりすると分かる「受動的語彙」で、自分で積極的に使える「能動的語彙」ではないからだ。そこで、取り急ぎ日本語発想のまま辞書を使って英作文をするのだが、英語話者にはいまいち伝わらない。

大人は、日本語で考えている時、動作や気持ちや概念を日本語の2字漢字(和製漢語)で考えて話すことが多いため、英語で話すときにその対訳を見つけようとする。ところが、日本語と英語は全く発想の違う言語なので、単純な単語の置き換えでは伝わりにくい。

一つ例を挙げてみよう。

「台風が接近しているため目黒川が氾濫水域を超えています。至急、指定の避難場所に避難してください。」とパトカーが拡声器で駅周辺を廻ってアナウンスしている場面だ。日本人が英作文をするとこうなりがちだ。

Due to the typhoon approaching, Meguro River is above the flood level. Please evacuate to the designated evacuation site immediately. 

もう少し英語らしくすると、こんな感じだろうか。Due to the typhoon, Meguro River is flooding. Please evacuate to your nearest evacuation area immediately.

しかし、日常会話ではこんな難しいことは言わない。隣の外国人に伝えるにはこう言えば十分だ。「台風が来ています。目黒川が溢れています。すぐに高台に行ってください。」

A typhoon is here. Meguro River is flooding. Get to higher ground as soon as possible.

日常会話において、英語は日本語より「やさしい」言葉を使う傾向がある。特に、多民族国家のアメリカでは誰でも分かる英語を使う。ホワイトハウスのツイッターを見ても、日本の中学で習う単語がほとんどだ。

文法をやり直さなければならないとか、語彙が足りないと大人はよく言うのだが、英会話初級者に必要なのは、自分を主語にしてsight wordsを自由自在に使いこなす力だ。Sight wordsとは子供が目で見てすぐに認識できる年相応の使用頻度の高い単語である。例えば、5歳児レベルだと、do, did, see, saw, go, went, have, had, can, could, please, say, said, was, fun, want, make, yes, no, if , get, got, etc...等々だ。 これらの言葉を読んだり話したりできると5歳児の日常生活は事足りる。

話を大人の英会話に戻すと、言いたいことを小学校低学年の子供に話しかけるように「やさしい日本語」に置き換えて考えてみよう。次に、頭のチャンネルを「英語」に切り替えて、知っている英語だけで話してみよう。驚くほど英語らしい英語が出てくることに気がつく。「やさしい英語」は幼稚に聞こえませんか?とよく聞かれるが、答えはNo.

やさしい単語は奥が深いので、時間をかけるなら 動詞 get や takeやworkを使って、自分の言いたい文章を作ってみるととても役に立つ。やさしい日本語と日常英会話の親和性は高いのだ。英会話中級者でも、中学3年までの英語を自由自在に操れれば、十分に英語で意思疎通ができるのである。




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