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リケジョを英訳すると!? ~ 生成AIとアンコンシャスバイアス

楠田倫子

さる3月8日は「国際女性デー」でしたね。私の勤務する会社では社会貢献活動として女性科学者の活躍支援を長年行っており、「国際女性デー」にちなんで、科学領域におけるジェンダー格差について外部講師を迎えて社内イベントを行いました。

その折、講師から興味深いことを教えていただきました。
「理数系の女性」を意味する「リケジョ」をAI翻訳のDeepLにかけるとどう英訳されるのか? 

結果はこちらです。

和訳すると「恋愛や女性的な興味などを犠牲にしてキャリアを追求する、とされる女性」という意味になります。。。!?!? 
こんな訳が生成されるなんて、「リケジョ」が揶揄的な文脈で語られることがいかに多いか、の表れに他ならないのでしょう。

生成AIというのは、ご存じのように、ネット上に存在する膨大な過去データを独自のアルゴリズムによって解析する仕組みです。社会の抱える矛盾や差別がそのまま「現存するデータ」としてフィードインされ、AIによって増幅される可能性がある、というのは知識として知ってはいましたが、まさかこんなに端的な事例が身近にあるとは。

このような誤りを避けるには、まず第一にアルゴリズムにフィードインされるデータのクレンジングとメンテナンスが不可欠ですが、日本の社会からジェンダー格差が消えるのは700年後という試算もあるとの由で、少なくもジェンダー格差関連に関しては、完璧にバイアスのないデータを保証することは当面現実的には不可能でしょう。となると、やはり、アウトプットの精査。翻訳の世界でいえば、査読校閲は欠くことのできない極めて重要な工程ということになります。

近年、AI翻訳の進化は著しく、DeepLはGoogle Translateと双璧をなす優れた翻訳エンジンだと思います。当会のnote記事の中でも、DeepLなどのAI翻訳を有効利用することの利点について何度か紹介してきました。
しかし同時に、AI翻訳にかけるだけでなく人間(願わくばネイティブスピーカー)による校閲査読が不可欠であることも、強く提案し続けてきました。

今回、思いがけない形で、AI翻訳の査読の重要性を再認識しました。読者の方々も、AI任せにせず、ぜひ査読校閲を習慣化してくださいね。

日本のリケジョの名誉のためにも!!!

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