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チャットGPTは、筆者の意図を汲まない要約を書く

東京都のオンラインマスタークラス「日本語のタネ」の糸川優です。
複数の大学で、日本語教育、キャリア支援、日本人のアカデミックライティングなども担当しています。

最近、授業以外でも日本語能力を高めたいという感心な学生がいて、要約書いてみたら?ということになりました。ただし、授業外で、私が毎回その学生の書いた要約文をチェックすることも現実的ではないため、チャットGPTを使ってみてはどうかという話になりました。チャットGPTに「模範的な」要約ができるなら、それを解答として学生の要約を検証できるのではないかという目論みです。

果たして、チャットGPTに要約が書けるのか、自分でも実験してみました。
山本富美子『国境を越えて』新曜社より「地球温暖化」(1953文字のものを400文字に)

糸川要約
 近代機械文明の恩恵の一方で、地球温暖化、オゾン層破壊、酸性雨、生物の種の減少などの問題がもたらされることとなった。温暖化は人為的なものであり、自然災害をも引き起こしているとの報告もあり、作物への影響から、近い将来には、食糧危機の恐れもある。
 このような事態を背景に、2005年に、141カ国・地域 が批准した「京都議定書」が発効し、7カ国が温暖化ガスの排出削減義務を負うことになった。しかし、経済成長優先の思惑もあり、米国は離脱、そして、中国・インドはCO2の削減を義務付けられていない。しかし、一方で、欧州の省エネ先進国では、代替エネルギー開発と省エネ政策により、安定した経済成長との両立に成功している事例もある。
 日本は、ハイブリッド車や、水素エネルギー電池といった次世代エネルギー技術を開発するとともに、地球環境保全のリーダーとして、米国をはじめとする他国に議定書への参加を促していくべきだろう。(391)

チャットGPT要約
18世紀の産業革命以来、近代機械文明は飢餓や病気から人類を解放したが、同時に地球規模の環境破壊を引き起こし、地球温暖化や環境変化といった問題が拡大している。国際的な取り組みとして、1988年にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が設立され、地球温暖化の深刻な影響が指摘された。地球温暖化は主に人為的な要因によるもので、気温上昇と海面上昇は多くの国に影響を与え、食糧生産にも悪影響を及ぼしている。1997年には「京都議定書」が採択され、先進国に温暖化ガス排出削減を義務付けたが、経済成長とのバランスが難しく、一部の国々は取り組みに消極的。欧州では省エネ政策と代替エネルギーの開発に成功し、安定した成長を実現。日本も積極的な省エネ技術の開発が必要であり、地球環境保全のリーダーとして他国と協力すべきだ。(341字)

チャットGPT、文字指定をほとんど無視しています。
そして、チャットGPTの要約、一見、優等生的ですが、何か、非常に平面的な印象を受けます。この元の文章は、筆者の主張があるタイプの文章で、最後の1文に至るまでの文章を見ると、それは最後の主張に確実に結びついていくのです。つまり、最終的に現れる主張のために、経緯なり根拠なりが展開していきます。けれども、チャットGPTの要約は、事実が書き連ねてある新聞記事のようであり、唐突に最後の文で「べきだ」と言われても、目を白黒させてしまいます。どうも、筆者の意図・主張を反映しているようには見えません。チャットGPTは、文章の種類を認識していない、筆者の主張を受け取ってないというべきでしょうか。平均的に縮小しても要約にはならないなと感じます。

ということで、どうやら、チャットGPTに「模範解答」を任せるわけにはいかないようです。
チャットGPTの商用活用が堰を切ったように出ていますが、できることとできないこと、得意なことと不得意なことを知った上で活用できるといいですね。


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