法令遵守ーオンライン授業で市販テキストは使えない
東京都のオンラインマスタークラス「日本語のタネ」の糸川優です。
複数の大学で、日本語教育、キャリア支援、日本人のアカデミックライティングなども担当しています。
さて、たいしたコースではないけれど、コースデザインを考える際に、入口と出口の試験を準備しなければなりません。
オンラインクラスを準備していますから、いつもの印刷というわけにはいきません。
最初、市販の模擬試験の問題は自炊して送り、解答はGoogle Formsに入れてもらえば、提出と同時に結果がわかっていいかなと思ったんですよ。
待てよ、そんな簡単にいくか?これは法に抵触する気がする…。
というので、公益社団法人著作権情報センターに問い合わせました。
NGでした。当たり前だな。自分の安直さを恥じる…。
公衆送信権と複製権に触れるのです。
2020年、遅れて再開した大学のオンライン授業で、まず問題になったのは、そのことでした。
教室は閉じた空間で受講者も限定的ですが、オンラインは基本公開なので、通常通りとはいかないと聞いて、テキスト使えないの?と青ざめる教師を見ていました。私は市販テキストを使っていなかったのでよかったのですが。当時は、日本に入国できず、テキストも購入できず、海外からオンラインに入ってくる状態だったのです。
けれども、大学の場合は、SARTRAS(一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会)に加盟し、対価を払っているので、制限を受けつつも使えるのです。コロナ下の特例もあったようでしたね。出版社もかなり譲歩してくれたケースもありました。感謝に堪えません。
何となく、教育目的なら許されるという甘い考えが、教育業界にはあることは否めません。
が、SATRASに加盟していない学校の場合、また、加盟している大学の関係者であっても大学の授業以外の場所で、オンラインで自炊したものを使うことはもちろん、問題をそのまま流用してテストにしたりするのも違法です。
いやいや、なんでもありと思うのはどうかしています。よく考えれば、テキストを買うはずだった学生は買わずに済んでいるるわけですから、著者や出版社の権利を侵害していることになります。
数あるオンラインレッスンでは一体どうしているのだろうかと疑問が湧きましたが、おそらく、おかしいと思うこともなしに、流用してしまっていると感じましたね。何時間にも及ぶ検定試験について、問題の質、量を何タイプも用意することなどできないだろうと見ています。
というわけで、SARTRAS加盟団体における授業以外では、市販のテキストを自炊したりタイピングしたりして送信することも、ビデオ通話で映したりすることも違法です。
出版社側も、オンラインの時代に対応するものを作成していただき、現実的な形で、きちんと権利を守るべきだと思います。
最後に、私についていうなら、使えないと聞かされた時には結構残念に思ったものの、まあ、一応教育者の端くれだからこそ、そこはきっちりしないとね、と思ったことでした。
自分が法に守られているのだから、自分も法を守らないと。誰かの権利を守らないと。
必要に応じて、調べてみてください。