同性婚の権利、G7で日本だけ認めず 動きは鈍く
カナダで難民認定を受けた日本人女性のカップル。彼女たちは日本でどんな経験をし、どんな思いで海を渡ったのか。
難民決定通知書や2人への取材によると、50代のハナさんは関西地方出身。女性であることの生きづらさを感じながら生きてきた。「跡継ぎ」を望んだ祖父はハナさんが男でなかったことに落胆。両親や親族からは結婚するよう求められた。職場ではセクハラを何度も受けた。性的指向を周囲に話してからも、心ない言葉を浴びせられることが続き、2009年には自殺をはかった。
14年にエリさんと出会い、19年4月、同性婚を認めているカナダを旅行で訪れ、結婚の届け出をした。
日本では、同性婚を認めない現行法は憲法違反だと訴える訴訟が各地で起こされている。地裁や高裁で「違憲」とする判決が出たが、最高裁の判断はまだ出ていない。
このため異性婚と同等の法的権利がないままだ。たとえば、配偶者控除を受けることや国民年金の第3号被保険者になることはできない。子どもを育てていても2人ともが親権者になることもできない。また、パートナーが亡くなった際に法定相続権はなく、遺族年金も受けられない。
立法の動きも鈍い。岸田文雄首相は1月の衆院本会議で同性婚導入について問われたが、「国民各層の意見、国会における議論の状況、同性婚に関する訴訟の状況についても注視していく必要がある」と述べるにとどまった。また、2023年2月には首相秘書官が性的少数者や同性婚をめぐって複数の差別発言をし、その後更迭される問題もあった。
主要7カ国(G7)では、05年のカナダを皮切りに同性婚が認められ、イタリアも同様の法的権利を同性間でも認める制度をつくるなど、日本以外の6カ国は結婚と同じ権利を同性カップルに認めている。
また、カナダでは現在の自由党政権が難民の受け入れに積極的で、23年には約3万7千人が認定された。日本の同年の認定は303人。不認定とされたが裁判を経て難民認定された同性愛のウガンダ人女性がいる。
(2024年5月18日 朝日新聞 大貫聡子、花房吾早子)
〈ことば〉
難民…戦禍や天災、政治的・宗教的な迫害を受けて生活に困った人々。
特に、それらを避けて国外に逃れた人々。
認定…事実、資格、ことがらなどについて調べ、それと判断して決定するこ
と。
性的嗜好…性的行動において、何に惹かれるかという好み。
心ない…思いやりがない。
同性婚…男性同士、女性どうしで結婚すること。
配偶者控除…夫から見て妻、妻から見て夫がを配偶者という。
日本では収入のないまたは少ない配偶者がいる場合に
税金の控除が認められる。
法廷相続権…被相続人の遺産を受け取る権利を持つ人。配偶者は常にその権
利を持つ。
訴訟…紛争、利害の衝突を解決するため、裁判所に裁判を請求すること。
更迭…ある地位、役職にある人を入れかえること。
皮切り…ものごとのしはじめ。手始め。
1 日本国憲法は、国会(立法=法律を作る)、内閣(行政=政治を行う)、裁判所(司法=法律に基づいて紛争を解決する)の3つの独立した機関が相互に抑制し合い、バランスを保つことにより、権力の濫用を防ぎ、国民の権利と義務を保障する「三権分立」の原則を定めています。
*本文を読んで、( )に適する言葉を入れなさい。
① 現在、日本の法律は同性婚を認めて( )が、それは憲法違反だとし
て各地で訴訟が起きている。
② 地裁(地方裁判所)や高裁(高等裁判所)で、同性婚を「違憲」とする判
決が出たが、最高裁の判断は( )。
③ 首相はじめ保守的な意見の多い国会では( )の動きが鈍く、同性婚
はなかなか認められない。
2 同性婚が認められないことで、どんな不利益がありますか。それを説明し
ている部分の始めと終わりの5字を、それぞれ答えなさい。
3 主要7カ国(G7)は、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツのほかに、
どこの国が入っていますか。
*もう一度読んでみよう。
カナダで難民認定を受けた日本人女性のカップル。彼女たちは日本でどんな経験をし、どんな思いで海を渡ったのか。
難民決定通知書や2人への取材によると、50代のハナさんは関西地方出身。女性であることの生きづらさを感じながら生きてきた。「跡継ぎ」を望んだ祖父はハナさんが男でなかったことに落胆。両親や親族からは結婚するよう求められた。職場ではセクハラを何度も受けた。性的指向を周囲に話してからも、心ない言葉を浴びせられることが続き、2009年には自殺をはかった。
14年にエリさんと出会い、19年4月、同性婚を認めているカナダを旅行で訪れ、結婚の届け出をした。
日本では、同性婚を認めない現行法は憲法違反だと訴える訴訟が各地で起こされている。地裁や高裁で「違憲」とする判決が出たが、最高裁の判断はまだ出ていない。
このため異性婚と同等の法的権利がないままだ。たとえば、配偶者控除を受けることや国民年金の第3号被保険者になることはできない。子どもを育てていても2人ともが親権者になることもできない。また、パートナーが亡くなった際に法定相続権はなく、遺族年金も受けられない。
立法の動きも鈍い。岸田文雄首相は1月の衆院本会議で同性婚導入について問われたが、「国民各層の意見、国会における議論の状況、同性婚に関する訴訟の状況についても注視していく必要がある」と述べるにとどまった。また、2023年2月には首相秘書官が性的少数者や同性婚をめぐって複数の差別発言をし、その後更迭される問題もあった。
主要7カ国(G7)では、05年のカナダを皮切りに同性婚が認められ、イタリアも同様の法的権利を同性間でも認める制度をつくるなど、日本以外の6カ国は結婚と同じ権利を同性カップルに認めている。
また、カナダでは現在の自由党政権が難民の受け入れに積極的で、23年には約3万7千人が認定された。日本の同年の認定は303人。不認定とされたが裁判を経て難民認定された同性愛のウガンダ人女性がいる。
〈こたえ〉
1 ①いない ②まだ出ていない ③立法
2 配偶者控除~けられない (配偶者控除~られない。でもよい。)
3 カナダ、イタリア、日本
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