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[わたしのおすすめ作品」【敦煌】

「敦煌」は日本人の作家の井上靖によって書かれた小説。
井上靖は昭和を代表する文学作家で色々な作品を書いているが、東アジア(西域)を舞台とした歴史小説を複数書いている。

その中でも特に人気がある「敦煌」は長い物語だが、主人公の不思議な旅路と、異国の情緒に惹かれて、あっという間に読み終えてしまった。

1900年に敦煌の莫高窟で大量の経典が発見されたが、実際に誰がどのようにしてここに置いたかは解っていない。
「敦煌」はフィクション(創作)小説だが、まるで事実であるかのように、この謎が解明されていく。

1026年、宋の時代、主人公の趙行徳は南京で西夏から来た女と出会う。行徳は進士の試験に失敗した直後で、人生に絶望していたが、見たこともない西夏の話や文字が書かれた布を見て、自分の世界の小ささを知った。
そして西夏を実際に見てみたいという衝動で、西夏へ向かう。

趙行徳は西夏へ向かう長い旅の中で、様々な民族と出会い、宋と西夏の戦争に加わりながら移動を続けていく。

自分の出身地から遠く離れた土地で、何度も襲い掛かる(戦争の)死の恐怖や、未知の国での生活。主人公の人生は「波乱万丈」だ。
しかし、この趙行徳はそれらを恐れず、なんでもないもののように受け止める。困難があっても平然と向かっていく姿が印象的だ。まるで西域の砂漠の砂のようだ。

この小説は日本で映画化もされた。
日本とは全く違う砂の世界と、夢の都西夏の衰亡が、日本人にとっては「ロマンチック」に見えたのだ。
それで日本人は「敦煌」と聞くと、「異国の夢」を感じる人が多い。

日本人が書いた、中国の歴史小説。
中国出身の人が読んだら、どう思うのか、感想を聞いてみたいと思う。


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