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ハーフは自分の子どもに2つの言葉を教えるか

子どもの成長段階は言語だけに関わらず、おおよそ3つの壁があるらしい。
1つ目は2,3才。
2つ目は7才前後。
そして、最後が10~15才くらいの、いわゆる思春期。

まあ、幼稚園に入る時期、小学校に入る時期、中学校というのは、おおよそその時期と重なっている。
確固とした自我が芽生えたり、強くなっていったり、揺れたりする時期だろう。

言語でいうと、2,3歳までに聞いたことのない言語の発音を聞く力が失われるらしい。
それまではどこに生まれても、どの言語でも聞き取って、学んでいくことができるそうだ。

私の知り合いは、子どもが生まれて1年ぐらいで仕事に復帰し、その子どもは預けていた。
3才の誕生日に「私、もう日本語は話さない!」と宣言して、それ以来、もう一言も日本語を話さないだそうだ。
(もう二十歳くらいかな)

仕事と育児を天秤にかけなくてもいい時代は来ているのかもしれないけど、二言語、三言語環境(バイリンガル児の家庭環境)ということに限っていえば、やはり親との濃密な時間なくして、子どもの言語的な成長は難しい。
そのお子さんは、1才からほぼドイツ語環境で育っていたのだから、「外国語」みたいな日本語に抵抗が生まれても仕方なかったのだろう。
その人はドイツ語が堪能だからできるんだろうけど、私はドイツ語で自分の子どもと語りあえないなあ・・・

幼稚園に入ると、現地語が一気に強くなる。
この時期はどんどんドイツ語が侵略してきていた。
「今日はKneteで遊んだの。」
「Kneteってなあに? お母さん、ドイツ語分からないから、日本語で言ってね。 こうやって? ああ、粘土のこと?」
というように徹底的に日本語だけで話していた。
もちろん、子どもたちにとっては、ドイツ語でも新しい言葉の場合もあって、その日本語を知らないこともあるけど、この時期の言葉は物質名詞が多いので、やりとりをして推測することだって可能だ。

読み聞かせもたくさんしたし、日本語アニメも毎日30分許可していた。
午後に遊ぶ友達も、私の日本人の友達の子が多くて、日本語環境にはいた。
補習校幼稚部が始まったのもこのころだ。

さて、7才前後から、音だけの世界から、文字の世界にも足を踏み入れていく。
幼稚園時代に手抜きをしていると、補習校の小学校の2,3年生くらいで危機が生まれる。
1年生はまだ楽しいねで済むけれど、段々漢字も増え、語彙も増えていく。
何でも親のいう通りだった時代が過ぎ去り、「なぜ日本語をやらないといけないのか」という気持ちが強くなれば、勉強にもプラスには働かない。

そして、ドイツの学校の進学前後は、ぐっと現地校の負担が増える。
授業が長くなったり、宿題が多くなったり、科目が増えたり、テストが厳しくなる。
この時期までに自主的に「日本(語)が好きだ」と思えていないと、まあ、継続は難しいと思う。

その理由は何だっていい。
日本の祖父母が好きだとか、お菓子やポケモンが好きだとか。
そういう根っこがあって、ある程度日本にも何度か行っていれば、その「スキ」はもっと育っていく。

しかし、このぐらいから精神的な成長も著しくなって、自分の気持ちを日本語で言語化できなくなってくる子がいる。
外国語を勉強したことがある人は、言いたいことが言えないもどかしさを知ってるだろう。
できない理由は、抽象語彙が欠けているから。
日常生活で使わないような言葉は、書物で補うものだが、読書習慣がついていないと厳しい。

しかし、その時期を抜ければ、何だかんだ一人で学習できるようになるので、日本に留学したいとか、アニメを見て勉強してるとか、継続できていくようになる。

うちは長女は中学に入るころからそんな感じ。
日本語を話している自分の方が好きらしい。
言語によって、キャラクター変わるってあるよね。
日本人が好きなんだと思う。
この秋、一人で日本に短期留学(中学校での体験入学)するので、ますます好きになるか、はたまた嫌いになって帰ってくるか?!

次女はこの春中学に入り、言語能力という点ではドイツ語も含めて姉に劣る。
しかし、日本が好き、アジアが好きという気持ちはあるので、なんとかかんとか頑張っている。

大体どこの家庭も下の子の方が現地語じゃない方が苦手だ。
私が日本にいたころ、カナダ人の同僚が「下の子の英語が下手で・・・」と愚痴ってたしw
上の子は、親との時間がたっぷりあるのかもしれない。

さて、そして今日のテーマに戻って、「ハーフは自分の子に2言語教えるのか」。
補習校にクオーターはちょこちょこいるけど、大体日本が4分の3という人が多い。
日独ハーフと日本人の組み合わせ。
しかし、日独ハーフとドイツ人の組み合わせもなくはなくて、その場合は、日本が4分の1!
それで日本語を流暢に話せるのだから、そのハーフの親御さんが普通に日本語が上手にできて、自分の子どもと日本語で話すということなのだろう。

実は今の大学のクラスに日本が4分の1のクオーターがいる。
日本語はゼロだった!
つまり、ハーフの親御さんは、日本語を一切教えていなかったのだ。
お婆さんが日本人と言っていたが、接点がなかったのかどうか。
ファーストネームが日本の名前(セカンドネームはドイツの名前。見た目は100パーセントドイツ人)なので、日本が嫌いなわけじゃないだろうに、その親御さんに日本語力がそこまでなかったということなのかもしれない。

また、以前教えた子は日系ブラジル人で、おじいちゃん、おばあちゃんはみんな日本人だという。
彼女自身は三世。
でも、日本語はほぼゼロだった。
(ちなみにこの子はセカンドネームが日本の名前。苗字も日本!)

だから、ハーフが現地語じゃない方の言語(うちなら日本語)を身に付け、さらにそれを自分の子に教えられるってすごいなあと思う。

そんな話を長女にしていたら、長女は
「私がもし、ドイツにいるなら絶対日本語を教えるけどなあ」
と言っていた。
日本にいるならドイツ語を教えるそうだ。
そう言ってくれたことがすごくすごくうれしかった。

近くにいるなら、私はお節介バーさんになって、もう止めてって言われても孫と日本語で話すけどねw

まだまだ成長はしていく時期ではあるものの、3つの壁は無事越えてきた。
恐らく親子関係ももう変わらないし、二人が日本を好きな気持ちも大きな変化(留学とか引っ越しとか)がない限りは、変わらないだろう。

「絶対に学ぶべき!」と思っていた時期も、「お母さんのせいで、余分に勉強しなきゃいけなくてごめんね」と思っていた時期もある。
今は、どちらも自分のルーツだから、同じくらい愛して、大切にしてほしいと願っている。



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