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極度貸付・限度貸付・分割貸付に係る保証契約と極度額の定めの要否

1 個人との間で「一定の範囲に属する不特定の債務」を主債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)を締結する場合、極度額を定めなければ、保証の効力が生じない(民法465条の2第1項及び第2項)。
  そして、金融機関が行う貸付けには、極度貸付(コミットメントライン)、限度貸付(コミットメントタームローン)、分割貸付といった種類が挙げられるが、このような貸付けを法人に対して行うにあたって代表者個人との間で保証契約を結ぶ場合、根保証契約に該当して極度額を定める必要があるか否かが問題となる。

2 民法465条の2は、現民法に改正される前は、「貸金等根保証契約」と定められており、①「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの」の保証人は、極度額を限度として責任を負う旨(旧民法465条の2第1項)、②「貸金等根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。」(旧民法465条の2第2項)と定められていた。
  すなわち、旧民法465条の2は、貸金等債務に適用対象が限定されていたが、現民法465条の2はそのような適用対象の限定がなくなったものの、現民法465条の2及び旧民法465条の2のいずれも、「一定の範囲に属する不特定の債務」を主債務とする保証契約が対象とされている点は同じである。
  したがって、旧民法465条の2の「一定の範囲に属する不特定の債務」の解釈は、そのまま現民法465条の2の解釈としても通用するものと解される。

3 そして、旧民法465条の2における「一定の範囲に属する不特定の債務」とは、「実務上、根保証であるか否かの判断に迷うようなケースにおいては、根抵当における判断基準を参照することが有益であろう。」(筒井健夫・Q&A新しい保証制度と金融実務・6頁)と説明されている。そして、抵当権における実務的な取扱いとして、限度貸付(貸付額の上限額に至るまで数回に分けて借り受けることができる貸付契約)及び分割貸付(貸付総額が確定しており、複数回に分けて貸し付けられる契約)については、その性質上、普通抵当権が設定され、極度貸付については、債務者が必要に応じて極度額の範囲内で借入れや返済を繰り返すことができる性質上、根抵当権が設定されている(勝田一男・根抵当権の設定・名義人の表示変更・更正の登記マニュアル・197頁参照)。

4 以上のことから、金融機関が限度貸付及び分割貸付を主債務とする保証契約を代表者個人と締結する場合には、根保証契約に該当しないため、極度額を定める必要はないが、極度貸付を主たる債務とする保証契約の場合には、根保証契約に該当するため、極度額を定める必要があるものと考える。

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