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《世界の医療事情》vol.20|高齢化の現状と対策

現在の日本は「4人に1人が65歳以上の高齢者」であり、「高齢化社会」からすでに「超高齢社会」のフェーズに入りました。また、団塊世代が75歳以上となる2025年頃には、要介護者や認知症患者の増加とともに、医療や介護の整備が追い付かない「2025年問題」が懸念されています。今後も労働力の減少により税収が減っていくため、医療体制や年金制度の維持が困難になるのは必至といえそうです。

日本は総人口における高齢者の割合が世界で最も高く、
今後も高水準で推移すると見込まれている。
また、65~74歳よりも75歳以上の割合が多いのが特徴。
高齢化の速度について、高齢化が7%から14%に達するまで、
フランスは115年かかっていたのに対し、日本は24年。
韓国や中国では、日本を上回るスピードで高齢化が進んでいる。


韓国:家族の仕送りに依存高齢者の貧困が課題

韓国の高齢化率は2022年の時点では17.5%と、日本の29.1%を大きく下回っているものの、高齢化のスピードが速く、2045年には日本を抜いて世界一位になるとみられています。また韓国は、国民皆年金の開始が1999年と年金制度の歴史が浅く、2023年現在の基礎年金支給額は月3万5800円程度にすぎません。定年後も仕事を続ける高齢層が増え、雇用の拡大もはかられていますが、65歳以上の4割以上が相対的貧困に直面しているとされています。韓国ではこれまで自分の子どもや親戚からの仕送りで生活を維持してきた高齢者が多かったのですが、若年層の就職難や少子化もあり、高齢者の貧困は今後大きな課題といえます。


中国:介護保険の整備に遅れ、ケアの拡充に奮闘

人口の約15%が65歳以上となり、高齢社会を迎えている中国。一人っ子政策の結果、一人っ子の40代が増え、子どもと別居の高齢者「空巣老人」が高齢者の半数以上を占めるようになりました。「孝」の精神による親孝行が美徳のため、高齢の親の元に定期的に帰省する法律があり、高齢者施設への定期的な訪問も義務付けられています。介護保険はまだ整っておらず、地域コミュニティ「社区」によるさまざまな高齢者支援が一部の地域で始まっています。介護ボランティアをすると、その時間ぶん老後に介護サービスを受けられる互助システムやITを活用した見守りサービス「スマート養老」も注目集めており、全国的な社会保障制度の整備が急がれています。


フランス:独居高齢者が多いが孤立を防ぐ施策が充実

フランスで高齢化が始まったのは1864年。100年以上かけて高齢化がゆるやかに進み、2022年では21.66%となっています。個人主義のお国柄のため、高齢の親と子どもの同居は少なく、独居の高齢者が多いのが特徴です。バカンスシーズンには地域住民の見守りや医療体制が手薄になり、2003年夏の猛暑では75歳以上の高齢者を中心に約1万5000人が亡くなったことから、国を挙げて社会システムが見直されました。高齢者の孤立を防ぐ施策でユニークなのは、独居高齢者のアパートの空き部屋を学生に格安で貸し出して同居するサービス。地方では、さまざまな世代が互いに助け合って暮らす「世代間交流住宅」にも注目が集まっています。


フィンランド:家族の介護にも手当在宅介護を手厚くサポート

福祉国家で知られるフィンランド。1970年に「子の親に対する扶助義務」が廃止され、国の政策として施設介護から在宅介護にシフトし、地方自治体が高齢者の自立生活を支援しています。高齢者住宅の運営は民営化され、グローバル企業の参入も増加。最期まで自立した生活を送りたい人が多く、積極的な胃ろうは見られません。特筆すべきは「近親者介護手当」といって、配偶者や子どもなどが在宅介護をすると、国から4万5000円~9万円程度の手当金や休暇、社会保障が受け取れるというもの。消費税率24%という高税率ですが、国民の96%が納得しているそうです。その一方で、移民や難民の流入が増加し、フリーライド問題が議論を呼んでいます。


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