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「申請主義」という、もう一つの「悪」…

   経産省から実体のないサービスデザイン推進協議会に委託され、電通に丸ごと再委託。更に電通の子会社からパソナ、大日本印刷など企業に再々委託され、その後も委託や外注が重ねられて、何と8次下請けまで存在するという新型コロナ対策の「持続化給付金事業」。


  もはや無茶苦茶で、いくら申請しても給付金が申請者の元に届かないのが当たり前というしかないのだが、この事業は安倍首相官邸を牛耳る経産省官僚どもが関係の深い電通などの企業を絡ませることで一緒に「中抜き」をした悪事、謂わば彼らのネコババに過ぎないのはもはや明白だろう。

  この前田経産省中小企業庁長官だけではなく、今は首相補佐官兼内閣広報官として安倍首相の記者会見を取り仕切っている長谷川榮一元中小企業庁長官も「持続化給付金事業」の委託を受けた企業の顧問だったことがバレているのだから、言い逃れなど不可能というしかない。

  この「持続化給付金事業」だけではなく、それ以前の経産省の事業でも、そしてこれからの「Go to キャンペーン」などでも同じような業務委託に名を借りた経産省官僚どもによる「中抜き」、税金のネコババが行われるのは間違いないのだが、これは勿論、今井尚哉を筆頭に今の安倍政権、首相官邸を牛耳る経産省官僚どもによる悪事に過ぎない。
安倍と一緒に彼らを首相官邸から追い出すしかないし、逆に言えばそれで解決する問題とも言える。

  で、今回は、この判り易い構図の「悪」の他に、この「持続化給付金事業」も含めて今回の新型コロナ対策でも明らかになったもう一つの「悪」、「申請主義」について考えてみたい。

「申請主義」と「職権主義」

   例えば、「持続化給付金」を必要としている中小零細業者や個人事業主に素早く届ける方法は決して難しくない。
こういった人々は青色申告や白色申告などの確定申告、法人税や消費税の申告などを必ずしている訳で、税務署が事業内容や収入なども把握している。各税務署が地域毎の休業要請などに応じて影響や営業規模を考慮して給付すればいいだけの話。
これで今年になってから開業した場合を除いて全て対応出来るし、そもそも政府による「給付」はそれこそ「納税」の方向だけが反対なのだから、作業的にもスムーズに行くのは間違いないのだ。

   事実、欧米などではこういうカタチで給付が行われているし、10万円給付などの一律給付でもいつまでも届かない日本と違って税務申告を元に行っているので、一々、国民からの申請を待たずにアッという間に個々の銀行口座に振込がなされたという。

 そう、もう判ったと思うが、欧米などでは決して業者や国民の申請があってから給付をするのではなく、政府がそれぞれに該当するかを調べて給付を、謂わば勝手に送りつけて来るから素早いし、そこが欧米と日本の一番の違いなのだ。

 このように給付を貰う為には必ず申請が必要、市民が行政サービスや社会福祉を利用する前提として自主的な申請を必要とするのを「申請主義」という。   

 逆に、欧米のように政府や自治体が本人の届出を待たずに処理を行うのを「職権主義」という訳だが、今回の新型コロナにまつわる対策でも「申請主義」の日本で持続化給付金や休業補償、10万円給付がいつまでも届かず、「職権主義」の欧米で素早い休業補償や給付がなされたのも当然というしかない。

 「申請主義」の問題点は、勿論、このスピードの差だけではない。


知らされていないは「ない」のと同じ

 今回の新型コロナ対策でも「持続化給付金」や「10万円給付」だけではなく、様々な給付や支援、補助、融資の制度が用意はされている。しかし、その全てが「申請主義」である以上、受ける側が申請しない限りは一切、受けることが出来ないし、それぞれの担当省庁や窓口も違う以上、そういった制度を全て把握することなどほぼ不可能に近い。

 そう、申請者が知らない限りはそういう制度の恩恵を受けることは出来ないし、そういう制度がないのと同じになってしまうのだ。

 逆にそういう制度をよく知っていて上手く立ち回る事が出来れば多いに得が出来ることになるし、高齢者や障害者、生活困窮者など本当に支援が必要な人間ほど「情報弱者」になり易く、必要な社会福祉の制度から遠ざけられてしまうという本末転倒なことも起こりえるのだ。

 例えば、お隣りの韓国では2014年に「社会保障給付の内容、要件と手続き等についての情報提供と広報義務」が法律で定められたのだが、これによって生活基礎保障(生活保護)のパンフレット配布やCMが大々的に行われるようになり、受給率が2.6%(2014年)から3.2%(2016)に増加したと言われている。この時のスローガンが『死角地帯(需給漏れ層)の縮小を』だというのだから、日本との違いは歴然かもだが。


「申請主義」は社会福祉削減の特効薬

 この「生活保護」が一番判り易い例になると思うが、あくまでも申請した人だけを対象にする「申請主義」と、対象になる人を政府や自治体が割り出す「職権主義」では受給者の数、何よりも受給資格がある人が実際にどれだけ受給しているかという「捕捉率」が大きく変わって来る。

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上の表を見れば一目瞭然だが、日本で生活保護を受けられる資格があるのに受けていない人が8割以上もいるのだから諸外国に比べて異常というしかないし、「生活保護」でいつも問題になるのはこの「捕捉率」の低さではなく、件数ベースで2%程度、金額ベースで0.4%に過ぎないという「不正受給」の問題なのだから話にならない。

 今回の新型コロナ下でも、雇い止めや収入の減少などで「生活保護」の受給資格を満たしてしまった人が大勢いる筈なのだが、生活保護の積極利用を呼び掛ける広報など全くされていないし、こんな通達が出ている事も知らされていない。

 このように「申請主義」である限り、知らせなければ給付しない事が可能だし、申請である以上は書類の不備などで申請を拒否することも可能。また事務手続きを複雑にすれば途中で申請を諦めさせることも出来る。それどころか生活保護では「水際作戦」という名前でよく知られているが、窓口の人間が様々な理由をつけて申請書を渡さず、申請を拒否するようなことも堂々と行われている。

 そう、政府が建て前や奇麗事として、国民の為にどんなに素晴らしい社会福祉の制度を作っても「申請主義」を掲げている限りは、実際に国民にその社会福祉を使わせず、国民から巻き上げた税金をケチることが出来るのだ。

 この「申請主義」のやり方はそれこそ日本だけではなく、「ゆりかごから墓場まで」の社会福祉の本家、英国でも今や同じように蔓延しているようで、その辺りはこのケン・ローチ監督の名作でもよく描かれていたが、日本では年金、介護、施設利用、生活保護、高額医療費還付も保育所も…日本の福祉制度利用は何から何まで全てが「申請主義」で私たち国民自身が申請しなければ何ひとつ始まらないのだ。

 この「申請主義」こそが国が社会福祉を削減する特効薬だし、社会福祉の全てを「申請主義」にしている事にこそ、この国の悪しき意志が表れていることを私たち国民は知っておくべきだろう。



※Photo image by https://www.gifu-np.co.jp/news/20200513/20200513-239507.html 

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