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日本が新型コロナの検査をしない四つの「理由」

  前回、3月末に新型コロナのPCR検査をしない日本の対応を批判したが、その状況にはほとんど変化がない。それどころか、感染が拡大する中、検査を求める人が医療機関に押しかけることで院内でも感染が拡大。医療機関が閉鎖されて医療崩壊に拍車をかけるような事態も現出している。


   そんな中でやっと感染を疑って検査を求める人々を専門に受け入れる「発熱外来」や「検査所」を作る動きが出て来たが、韓国などがドライブスルー検査などで積極的検査を行い、既に感染拡大抑止に成功している中では遅きに失したというしかないだろう。

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 上の表を見て貰えば一目瞭然だが、世界の中でも日本の新型コロナの検査数の少なさは異常。米国などとは一桁どころか二桁違うし、日本よりも人口の少ない韓国でも6倍、ドイツで21倍などと比較にもならない。当然、そこから導き出される感染者数も無意味だし、死者数も肺炎など新型コロナ感染の疑いのある患者を全て検査している訳ではない以上、全く信用のおけない数字というしかないだろう。

 では、なぜ日本は諸外国と違って、新型コロナの検査をしないのか?その「理由」を今回は改めて考えてみたい。


①東京五輪を開催するために感染者数を少なくしたかった

 上の記事は出元が出元だけに、単なる噂話と見なした方が賢明だとは思うが、安倍や小池などの態度が3月24日の東京五輪開催延期の決定でガラッと変わったのは事実。それまでは野党などに追及されて“やるやる”とは言うものの、実際には全く増えていなかった検査数も増え出したし、こんな宣言までする始末。

 当初、新型コロナが世界中で蔓延するパンデミックを起こすとまでは考えられていなかったのは確か。クルーズ船の寄港などで日本にも上陸の恐れはあったものの、それこそ検査を絞って公表される日本の感染者数だけを増やさなければ、予定通り、7月には東京五輪が開催出来るという甘い見通しを安倍や小池などが持ったのも当然かも知れないのだ。


②「専門家会議」が判断を間違えた

 この安倍や小池などの甘い見通しを好都合なことに支えたのが、国立感染症研究所などの関係者を中心に作られた政府の「専門家会議」。事実、この会議の中心メンバーである東北大学の押谷教授は1月20日の時点で『国内で感染が広がるリスクはほぼない』とまで言い切ってしまっていたのだ。


 その後、感染が東アジア各国に拡大。日本でもダイヤモンドプリンセスの寄港などによって水際対策も失敗し、国内に上陸した新型コロナウイルスが感染が拡大していく訳だが、そんな中でも「専門家会議」は、また判断の間違いを犯す。

   それが今も彼らが言い続けている「クラスター」対策なる代物。新型コロナの感染者が誰かに濃厚接触することで感染させ、感染者の集団・クラスターが出来るというこの理屈だと、そのクラスターの中にいた人々だけを追跡して検査をし、陽性の人を見つけて隔離する事でクラスターを潰せば感染は拡大しない、という理屈になる。

   当然、検査はクラスターの中にいた人、感染者と濃厚接触した人だけをすれば十分ということになるし、これが日本で検査数が少なかった一番の理由と言ってもいいだろう。

 この対策というか、理屈自体は間違いとまでは言えない。事実、2002~03年に中国から広がった「重症急性呼吸器症候群(SARS)」では、この方法が有効だった。ただし、これはあくまでも「SARS」では有効だっただけの話で、「新型コロナCOVID-19」には全く通用しないのだ。

 というのも「SARS」のコロナウイルスは「新型コロナ COVID-19」のウイルスよりも感染力は弱いものの病原性が強く、感染した場合には必ず症状が顕れるので感染者を見つけて、クラスターを発見したり、感染の疑いがある人を追跡する事も可能。

ところが「新型コロナ COVID-19」のウイルスは病原性や致死性は「SARS」ウイルスよりも弱いものの感染力が遥かに強い結果、軽い症状や全く症状の出ない感染「不顕性感染」までも引き起こすウイルスだったのだ。つまり、感染しているかいないか判らない人がその辺りにいて、その人が感染を広げていく訳だから、そもそも感染者の追跡など不可能。誰から誰にうつしたかも判らないまま感染が広がっていく「市中感染」が最初から不可避な感染症だったのだ。

   逆な言い方をすれば、症状だけではその人が感染しているか、していないかが判らない以上、とにかくどんどん検査をして少しでも早く感染者を見つけて、隔離や治療をしていかない限り、新型コロナでは感染拡大を防ぐ方法はないということになる。だからこそWHOの事務局長は「検査!検査!検査!」と検査の重要性を強調し続け、韓国やドイツなど日本以外の国は積極的に検査をしている訳だ。

   しかし、日本の「専門家会議」は「新型コロナ COVID-19」のウイルスは感染力が強く、不顕性感染まであり、市中感染も不可避という知見に接しても、当初の考え、「SARS」では有効だった「クラスター」対策とかいう理屈を変えなかった。だから、その結果として検査も増やそうとしなかったのだろう。

   この「専門家会議」は何と今でも「クラスター」だ、濃厚接触だとか言い続けているし、自分たちの過ちも一切認めていない訳だから、空母の時代になっているのに戦艦大和を作り続けた旧日本軍部の愚かさにも通じる愚劣さと無責任さというしかない。


③「利権」の存在が邪魔をした

 この「専門家会議」や政府の姿勢とも絡んでくるのだが、「利権」の問題も忘れてはいけない。「アビガン」については、このnotoにも既に書いたが、新型コロナの治療薬やワクチンだけではなく、新型コロナの検査についても莫大なお金、利権が存在するのだ。

  最近、4月7日にこういう記事が出たのだが、実はこのロシュが作った新型コロナのPCR検査キットは世界中でもっとも早く、1月下旬には開発を終えて販売体制が整ったものであり、尚且つ、他の感染症の診断用として販売してきた大型自動診断機器「コバス6800」、「コバス8800」とこの検査キットを使えば従来のPCR検査に比べて半分の時間、3時間で検査が終了。24時間で最大4000人分もの検体を調べることが可能という優れた検査機械なのだ。

 で、この優秀な検査キットの日本での製造販売の承認が何と4月に入ってからという遅さなのだから、20年以上も前の古くて時間も掛かる診断機器を使って日本の感染研究所や防疫所の多くがPCR検査をしていた以上、検査数が増えなかったのもある意味、当然といえるかも知れない。

 ただ、ここには別の面もある訳で、それこそ新型コロナの検査数を増やすことをもし日本政府や専門家会議が至上命題にしていれば、当然、2月にはこのロシュの検査キットと診断機器を大量に日本が導入していた筈で、他のメーカーの診断機器が日本市場を追われていたのは間違いないのだ。

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 上の一覧表を見て貰えば、判る通り、この新型コロナの検査については国内メーカーも多数、開発に加わっている。こういった国内メーカーや既存の検査機器メーカーを守る為には、何としてもロシュの進出を阻むしかないし、それは結果として検査出来る数を減らすことに繋がる…つまり、「検査数の抑制」が専門家会議などの専門家や政府、それこそ官邸を牛耳る経産省などにとって、ある種の「利権」の保護にもなっていたということなのだ。


④そもそも検査が出来なかった

 これが最後の「理由」ということになるが、実は日本は検査を増やそうにも増やせない、新型コロナのPCR検査すらまともに出来ない国になっていた可能性が高いのだ。

 上の検査機械の所でも触れたが、日本の感染研究所や防疫所、保健所などの多くは20年以上も前の古くて遅い診断機器を使っていたり、そもそも検査技師などの人員も削減される一方。

 今回の新型コロナの検査や防疫対策の中核を担う「国立感染症研究所(感染研)」の人手も予算も減らし続けてられて来た現状の中では、検査をしたくても出来ない、検査をしないですむ対策を考えるしかない、という側面もなかったとは言い難い。

 更に減らされているのは感染研の人手と予算だけではない。1994年の「地域保健法」改定の前は全国で847カ所あった保健所が2019年には472カ所と半減させられているのだ。

    大阪では橋下府政の前には府内28カ所あった保健所を14カ所に半減。さらに人手も減らしたことから、最近は前任の太田元知事と橋下との間で舌戦になっていたのをご存じの方も多いだろう。また、名古屋市でも16の区全てに一つづつあった保健所をたった一つにし、残りを医師などがいなくてもいい保健センターに改組するという無茶苦茶が行われ、新型コロナでも濃厚接触者など1日に200件もの検査が必要なのに20件の検査しか出来ない事態を招いたとも批判されている。

 勿論、新型コロナの検査を受ける時に自分の意思は勿論、医師の判断でも出来ずに、全て保健所や保健所内に設置された「帰国者・接触者相談センター」の許諾が必要という仕組み、今の検査抑制の仕組みが元凶ではあるのだが、予算も人手も数も減らされた中では検査そのものが難しくなるのは当然だろう。

   また、予算や人手の削減で、保健所や厚労省などでも「非正規雇用」化が進行しているし、これも検査などの新型コロナ対策を膳弱にしているのは間違いない。

   他にもまだある。これは検査数とは直接の関係はないが、医療費や病床の削減という流れの中で、全国の「感染症指定医療機関」の数も100以上減らされているし、一般病床数はまだまだ多いものの、今回の新型コロナの治療て必要になるICUの病床数に限れば、医療崩壊したイタリアなどよりも遥かに少ないのが実状。

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 そして、何よりも根本的に日本は医師の数が海外と比べても圧倒的に少ないのだ。

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    マスコミはまるで日本を医療先進国のように伝えるが、実は日本の医療体制は貧弱そのもの。それこそ新型コロナの検査さえもまともに出来ない程、情けない国になっていた可能性も否定出来ないのだ。


  いずれにしても新型コロナから私たち国民の生命を守る為には検査は必要不可欠。

   特にここまで感染が拡大してしまっては、既に検査も受けられないまま治癒してPCR検査では陰性になってしまう人も少なくない筈。そういう面も考えれば新型コロナの確定診断には向かないものの、いま感染しているかだけではなく、今までに感染したかも判る「抗体検査」も併用していくことが必要だろう。

   「発熱外来」や、ドライブスルーや屋外型の検査所を作って、検査を希望する人はその場ですぐ判る抗体検査を行い、肺炎などの症状がある人は確定診断としてPCR検査を行う。こういった二つの検査を組み合わせて、少しでも多くの人を検査していく…とりあえずこれが新型コロナ対策として最低限のことだし、今からでも検査をする国、検査が出来る国に変えていく努力を惜しんではならないと私は思うのだが。

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