共通テスト 化学基礎

ニヒコテです。一応化学系の大学院生です。

今回は昨年度の共通テスト化学基礎の解説をしていこうかと思います。別にネタが切れたからではありません。ネタはまだあるし(笑)。問題はこちらからどうぞ。平均点は24.65/50ですので例年より少し難しかったのかな?くらいだと思います。

第1問(配点:30点)

問1 単体・化合物・混合物の違いさえ分かれば秒殺問題です。
空気は78%が窒素、21%が酸素、0.9%がアルゴン・・・と何種類もの気体から成る混合気体ですので混合物となります。
メタンは分子式でCH₄。炭素Cと水素Hの2種類の元素から成る気体ですので化合物です。
オゾンは分子式でO₃。酸素Oの1種類の元素のみから成る気体ですので単体です。
よって答えは⑥となります。間違えてしまった人は猛反省です。

<Point1>単体・化合物・純物質・混合物の違い
単体・・・1種類の元素のみから成る物質(水素H₂や鉄Feなど)。
化合物・・・2種類以上の元素から成る物資(水H₂Oや二酸化炭素CO₂など)。
純物質・・・1種類の物質から成るもの。単体と化合物の事です。
混合物・・・2種類以上の物質から成るもの(空気や海水など)。

問2 問題文に注意です。問われているのはO原子の物質量です。
①0℃、1.013×10^13Pa(標準状態)の気体分子O₂の物質量は1molとなります(アボガドロの法則です)。ところがO₂分子には2個O原子が含まれているのでO原子の物質量は1×2=2molです。
②H₂Oの分子量は18ですので、18/18=1mol。H₂O分子1個につきO原子は1個含まれているのでO原子は1molです。
③H₂O₂分子1個のつきO原子は2個含まれているので1molのH₂O₂には1×2=2molのO原子が含まれています。
④Cの物質量は12ですので、12/12=1mol。黒鉛の燃焼の化学反応式はC+O₂→CO₂。C1molを燃焼して発生するCO₂にはO原子が2個含まれているのでO原子は1×2=2molです。
よって①・③・④は2mol、②は1molですので答えは②となります。

問3a アは見慣れないグラフですので一旦スルー。
イは比例の直線でいずれも原子番号と等しい数値となります。このことから原子核内に入っている陽子であると分かります(陽子は基本移動しません)。
ウは原子番号2・10・18の時に0となり、後は1ずつ比例して増えています。原子番号2・10・18はそれぞれヘリウム・ネオン・アルゴンといずれも貴ガスですので貴ガスで0となるものを考えれば価電子しかありません。
よってアは残った中性子となり、答えは③となります。同位体の安定率は物質によって様々ですので一概に比例するとは言えません。

問3b 質量数=陽子数+中性子数です。原子番号18のアルゴンは陽子が18個、中性子が22個と図1から読み取ることができるので18+22=40個となります。
M殻に電子がない&原子番号最大はL殻で閉殻状態となる第2周期の元素を選べばよいと分かります(電子殻はK殻,L殻・・・と続きます)。電子殻が閉殻状態というのは電子が容量いっぱいまで入ることですから選ぶのは貴ガス元素で、これに該当するのが原子番号10のネオンです。
以上より4:④・5:⓪・6:①・7:⓪となります。

問4 自由電子を持ち電気をよく通すのは金属結晶の特徴そのものです。
ナフタレンと言われたら分子結晶です。これ以上も以下もありません。
ウの結晶の例として黒鉛が挙げられていますが黒鉛は例外で基本は電気を通さないとあります。このことから共有結合の結晶だと判断します。
よってア:金属・イ:分子・ウ:共有結合となる⑤が正解です。

<Point2>分子結晶と共有結合の結晶
分子結晶とはファンデルワールス力という弱い結合からなる結合をもつ結晶の事です。ナフタレン・ヨウ素・ドライアイスは分子結晶としてよく出題されるので覚えておくとよいかと思います。ちなみに分子結晶は常温で昇華しやすいという事もたまに聞かれます。
一方共有結合の結晶は多数の原子が次々と強力な共有結合で何個も繋がって巨大で頑丈な三次元構造を作るのが特徴です。ダイヤモンド(C)やガラス(SiO₂)がこれに該当すると知っていればイメージはしやすいかと思います。

問5 理系化学でやる話なので知らねえよ!と思った人もいるかもしれません。まあドンマイです。これを機に覚えましょうや(笑)。
Mgは反応性が高い金属ですのでなんとなく反応しそうだなーというイメージはあるでしょうか?イオン化傾向が大きいのでそう思っていただけると良いかと思います。熱水にも高温の水蒸気にも反応して水酸化マグネシウムとなります。
Alも反応性が高い金属ですので熱水とは反応しないものの、高温の水蒸気とは反応します。水酸化アルミニウムとなります。
一方Ptはプラチナと呼ばれる貴金属ですので高温の水蒸気如きでは反応しません。溶かしたいなら王水でも使わないと無理です。
よって高温の水蒸気と反応するのはAlとMgですので答えは④です。

<Point3>水との反応性
水との反応性はイオン化傾向に依存します。NaやLiといったイオン化傾向の大きいアルカリ金属は水とものすごく反応します。水は常温でも構いません。
Mgは反応性は高い方ですが、常温の水とは反応しません。その理由はMgが空気中の酸素に晒されて酸化物の被膜を作るからです。被膜を溶かすには熱水が必要なのです。Alも同様に酸化物の皮膜を作りますが被膜がマグネシウム以上に強力なので熱水では太刀打ちできず、高温の水蒸気が必要なのです。

問6 ー線を引いた物質が酸化剤として作用している反応式を選ぶ問題です。酸化剤というのは相手を酸化させる物質の事ですのでー線を引いた物質は還元します。還元と言うことは反応の前後で酸化数が減少すればOKです。
①反応前COの酸化数は+2、反応後CO₂の酸化数+4ですのでCOは還元剤(自身は酸化)となり不適です。
②弱塩基の遊離反応なので酸化還元反応ですらありません。酸化数は反応前後で変化しません。
③弱酸の遊離反応なので酸化還元反応ですらありません。酸化数は反応前後で変化しません。
④反応前のBr₂の酸化数は0、反応後のKBrの酸化数はー1ですのでBr₂は酸化剤(自身は還元)となり正解です。
よって答えは④です。

問7 しょっちゅう見かけるタイプの計算問題です。
密度d(g/cm^3)の溶液が100mLあるので、溶液の質量はd×100=100d(g)です。
そのうち溶液の質量%濃度がx(%)ですので、溶液100d(g)中に含まれる溶質は100d×(x/100)=xd(g)です。
これを溶質のmol濃度M(g/mol)で割れば物質量は求まります。
従って物質量はxd/Mとなるので①が正解です。

問8 水が生成するのは正極の反応です。半反応式の係数に注目してください。e⁻:H₂O=4:2=2:1(係数比)ですので、電子2.0molに反応する水は2.0×(1/2)=1.0molです。水の分子量は18ですので生成する水は18×1.0=18gとなります。
水素を消費するのは負極の反応です。同じく汎反応式の係数に注目してください。H₂:e⁻=1:2(係数比)ですので、電子2.0molに反応するH₂は2.0×(1/2)=1.0molです。水素の分子量は2.0ですので消費される水素は2.0×1.0=2.0gとなります。
以上より答えは⑤となります。これにて第1問は終了です。

第2問(配点:20点)

問1a 正塩というのは塩の化学式の中に単体のHもOHも含んでいない塩の事です。正塩が何かさえ分かっていれば③のNaHSO₄のみ正塩ではないことはすぐに分かるかと思います。
答えは③です。ちなみに④のNH₄CLのHはNH₄(⁺)ーCl⁻で1セットなので単体のHには該当しません。

問1b 陽イオン交換膜は金属陽イオンと同じ分の水素イオンに交換するためのイオン膜です。なので同じ物質量分だけ水素イオンが交換されるのがポイントです。
①KCl→HClとなるのですが、K⁺1molに対してH⁺は1mol対応します。
②NaOH→HOH(H₂O)となるのですが、Na⁺1molに対してはH⁺は1mol対応します。
③MgCl₂→2HClとなるのですが、Mg²⁺1molに対してはH+は2mol対応します。これはMg²⁺が2価の陽イオンなので物質量が釣り合うためには1価の陽イオンH⁺は倍の2molが必要となるからです。
④CH₃COONa→CH₃COOHとなるのですが、Na⁺1molに対してはH⁺は1mol対応します。
よって①・②・④は1mol、③は2molの水素イオンを得ることができるので答えは③です。

問2a CaCl₂はHCl(1価強酸)とCa(OH)₂(2価強塩基)から成る塩と推測ができます。
濃度不明(x(g/mol)とする)のHCl10.0mLを0.100mol/LのCa(OH)₂で中和滴定するのに40.0mL必要なので、HClが1価強酸、Ca(OH)₂が2価強塩基ということに注意すると、x×(10.0/1000)×2=0.100×(40.0/1000) より、x=0.200mol/Lとなります。HCl:Ca(OH)₂=2:1の比で反応するので(H⁺・OH⁻の価数の比です)0.200mol/LのHClと0.100mol/LのCa(OH)₂のmol濃度の比は2:1と分かります。反応比と物質量比は等しいので過不足なく反応するわけですから反応後の液性は中性となります。
濃度はいずれも0.100mol/L、体積は10.0mLなので、
①希H₂SO₄(2価強酸)+KOH(1価強塩基)=酸性となり不適。
②HCl(1価強酸)+KOH(1価強塩基)=中性となり、これが正解です。
③HCl(1価強酸)+NH₃(1価弱塩基)=酸性となり不適。
④HCl(1価強酸)+Ba(OH)₂(2価強酸)=塩基性となり不適。
以上より答えは②となります。

問2b 中和の基本問題。間違えたら猛反省。
①溶液を正確に計り取るのをビーカーに頼むのは酷です。ビーカーではなくホールピペットを使います。
②仰る通りです。これが正解です。
③④中和滴定でメスシリンダーは使いません。使うのはメスフラスコです。
よって答えは②です。

<Point4>中和滴定に用いる器具
メスフラスコ・・・一定濃度の溶液を一定体積作るために用います。ビーカーで試料を少量の水に溶かしたものをメスフラスコに移します。移した後は標線まで水を加えてよく混ぜます。洗浄は純粋な水で行います。多少ぬれている程度なら問題はありません。
ホールピペット・・・溶液を正確に一定体積はかり取るために用います。標線まで溶液を吸い上げます。水が入ると濃度が変わってしまうので共洗い(使用する溶液を使って内部を濯ぐこと)必須です。
ビュレット・・・溶液を滴下して滴下前と後の体積の減少量を調べるために用います。メモリが付いているのでメモリを見て滴下量が一目瞭然。長いし高い。過去に壊したことがあるので軽くトラウマ。水が入ると濃度が変わってしまうので共洗い必須です。
コニカルビーカー・三角フラスコ・・・ビュレットで滴下した溶液を受け止めるために用います。洗浄は純粋な水で行います。

問2c 難しいように見えてそこまで難しくない問題です。
中和滴定の際に用いた塩酸は10.0mLですが、塩酸は実験2で500mLに希釈されています。これにより500/10.0=50倍に希釈されたと分かります。
また0.10molのHClを0.100mol/LのNaOH40.0mLで中和しているのでHCl:NaOH=1:1(H⁺・OH⁻の価数の比)に注意してHClの物質量を求めると、0.100×(40.0/1000)×1=0.0400molとなります。
実際にはHClは500mLあるので50倍して、0.0400×50=0.200molとなります。
CaCl₂:HCl=1:2で反応するので、塩酸0.200molに対応するCaCl₂は、0.200×(1/2)=0.100molです。
CaCl₂の式量は111だから、CaCl₂の質量は111×0.100=11.1gとなります。
よって試料Aのうち、11.1gがCaCl₂ですから11.5ー11.1=0.4gが水となります。
以上より答えは①となります。

次回は共通テスト理系化学です。お疲れさまでした!

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