化学で振り返る2021年 前半

皆さまはじめまして。私は大学院で化学系の研究をしている者です。名前は二ヒコテとでも呼んでいただけると嬉しいです。国語は苦手なので文章作成にはあまり自信がないですが優しい目で気楽に読んでいただければ幸いです。

今日は特定のものの話ではありませんが、ざっくりと2021年という今年1年を化学の観点から振り返ってみようという内容です。今回は1ー6月編です。小難しい話はなるべく避けようと思いますので気楽に読んでいただければ嬉しい限りです。

2021/1/21 結晶が形成する瞬間を撮影

これは今までにありそうでなかった研究成果でしょう。東大の中村研究室によれば、食塩(塩化ナトリウム)のイオンであるナトリウムイオン(Na⁺)と塩化物イオン(Cl⁻)の無秩序な集合体から秩序のある集まりとなる(=結晶となる)瞬間とそれらの集まりが更に大きくなる瞬間をスローモーション撮影することに成功したと発表しました。この研究の凄いところは、イオン分子はナノメートル単位の大きさのため従来だと小さすぎてとても観察などできなかったのですが、独自に開発した透過電子顕微鏡とカーボンナノチューブを駆使して結晶が形成される過程を生で捕えたという点にあります。従来はモデルや理論によって抽象的に考えることしかできなかったミクロの世界に人間が遂に到達したのです。詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。

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2021/1/21 スズ(Sn)の原子核からα粒子発見

理化学研究所の発表によると、高分解能磁気分析装置を用いた実験により、スズ(Sn)の同位体の原子核の表面にα粒子、すなわちヘリウム4の原子核が存在することを発見しました。これまでは重たい原子核の表面にα粒子が存在することは理論に基づく仮説ではあったものの、仮説の域を超えませんでした(真偽が不明でした)。今回の実験では4個のスズ同位体(質量数112,116,120,124)にRCNP(大阪大学核物理研究センター)が保有するサイクロトロン(イオンを加速するための円形加速器の事です)で4億エレクトロンボルトの陽子光線を照射するノックアウト反応(高エネルギーの粒子を原子核にぶつける)を行い、α粒子と散乱された陽子を高精度に分析することで、α粒子がスズの原子核の表面に存在していたと結論づけるまでに至りました。この研究により、まだ不明な点が多い中性子星の構造の謎の解明に貢献しうる点やα崩壊(α線を放出する放射性崩壊の事です)のメカニズム解明に繋がる点が期待されます。詳しく知りたい方はこちらからどうぞ。

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2021/2/18 新型コロナウイルスの表面のタンパク質分子機構を解明

これはニュースでも話題になっていた記憶があります(新型コロナ関連ですし)。理化学研究所の計算科学研究センター粒子系生物物理研究チームらはスパコンの「富岳」と「Oakforest-PACS」を用いて新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の表面にあって感染に重要な役割を果たすことで知られる「スパイクタンパク質」(をもつウイルス)が人間の細胞に侵入する際に起こる構造変化のメカニズムのシュミレーションを行いました。その結果シュミレーションを通してスパイクタンパク質表面にある糖鎖が構造変化のメカニズムの重要な役割を果たしていることが判明しました。大事なのは重要な役割を示す場所はどこなのか?を知ることができた事です。スパイクタンパク質の役割解明によって感染予防や治療に向けた医薬品の開発へ向けた大きなヒントを得たわけです。要するにこれは乱発ピンポイント射撃の違いと言えるでしょう。乱発だと目に見えないほどの小さな対象物のど真ん中に当てることはあまりにも困難を極めるますが、ピンポイント射撃は技術を極める事で高精度にまで精錬することができます。あまりいい例ではなかったかもですが、感染予防や治療へ向けた希望が見えた瞬間でした。詳細はこちらからです。

2021/2/25 大気中のCO₂から高濃度の都市ガスを作ろう

産業技術総合研究所のエネルギー研究グループは大気中のごく僅かな二酸化炭素から都市ガスの原料であるメタンを前処理無しで高濃度の状態で合成することに成功したと発表しました。100 ppm(0.01%)程度しかない(処理を通すと更に二酸化炭素の量は減ります)二酸化炭素から最大で1000倍相当にまでメタンの高濃度圧縮ができるようになりました。二酸化炭素をエネルギーに利用するためには従来だともちろん二酸化炭素が微量であるが故の困難もありましたが、それ以上に二酸化炭素を分離し、回収する前処理が必要であり、多くの外部から加える熱エネルギーとコストがかかっていました。高濃度圧縮が実現するに至った大きな鍵となるのが「二元機能触媒」です。ここでの二元機能触媒とは、簡単に言うと二酸化炭素を吸収するナトリウム・カリウムと水素と二酸化炭素との反応を促進するニッケルを組み合わせた触媒の事です。この触媒によって外部から莫大な熱エネルギーを加える手間を省くことができるようになり、手間も金銭面もよりよいものとなりました。一応理論としては高校化学の知識があれば何となくは分かるかと思いますが、難しいのは微調整です。あと、この研究は我々にも無関係なものではなく、昨今話題になっている「カーボンニュートラル社会」の実現に向けたものであると書かれています(外部リンク参照)。二酸化炭素をゼロにすることは当然不可能ですが、少しでも温室効果ガスを減らそうとするのと同時に大気中の二酸化炭素や温室効果を促進する排気ガスを有効活用しようという魂胆が垣間見えます。詳細はこちらからです。

2021/2/26 ジャガイモの猛毒はトマト由来?

次は神戸大学・大阪大学・京都大学・理研の研究からです。ジャガイモの芽は猛毒だと聞いたことはあるでしょうか?あの毒成分はα-ソラニンと言い、主にナス科の植物に含まれるステロイドグリコアルカロイド(SGA)の一種です。神経に作用タイプの神経毒であり、農林水産省が公開しているものだと体重50kgの人間で150-300mgほど摂取すると死に至るとあります。ちなみに同じく猛毒の青酸カリの致死量が経口投与で200-300mgだと言われているのでいかにソラニンが猛毒なのかはイメージできるかと思います(天然毒と人工毒を比べるのはあまり良くないのですが参考までに)。中毒症状としては頭痛・嘔吐・腹痛・下痢・頻脈・コリンエステラーゼ阻害作用などです。で、この研究によれば猛毒成分のα-ソラニンはトマトに含まれる苦味成分であるα-トマチンから分岐してできたものであるという事が分かりました。トマトもジャガイモ同様ナス科の植物(意外かもしれませんが)であり、このα-トマチンというのも茎や葉に含まれる毒性の強い成分です(猛毒というほどではありません)。熟れる前のトマトが苦い理由は実はこのα-トマチンの含有率の高さから説明できます(要はたくさん苦味成分が入っていて苦い)。SGAは化合物の構造の観点から大きくソラニダンスピロソランの2つに分けることができるのですが、ソラニダンがα-ソラニンと同様の構造をもち、スピロソランがα-トマニンと同様の構造をもつという事が分かりました。つまり、α-ソラニンとα-トマニンの関係性は実は両者近いものであると言えるのです。α-トマニンとの共通点からジャガイモの品種改良(毒性をなくす等)やまだ発見されていないSGA合成酵素を解明するきっかけとなり、更にソラニンの秘密が解明する可能性を秘めています。詳細はこちらからです。

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2021/3/17 緒方洪庵が遺した薬箱

今回の研究に関わった研究チームは大阪大学です。大阪大学と緒方洪庵の関係性は非常に密接です。(研究から話題が逸れてしまいますが)というのも、大阪大学の原点こそ、緒方洪庵が1838年に開塾した適塾なのです。阪大のHPには以下の記述があります。(大阪大学の歴史を参照)

1931年に創設された大阪大学。その原点となるのが「適塾」です。適塾は、備中足守藩(現岡山市北区足守)出身の緒方洪庵が江戸や長崎で蘭学・医学を修行後、1838(天保9)年、大坂・瓦町に医院とともに開いた私塾。7年後、いまも建物が残る過書町(現中央区北浜3)に移転し、計24年にわたって種痘法やコレラ治療法の研究を進めました。1846年に設立された除痘館は1858年には江戸幕府が公認した最初の種痘所となりました。適塾からは、福沢諭吉、大村益次郎、長与専斎、大鳥圭介、佐野常民、橋本左内などをはじめ明治を切り開いた1,000人近い塾生が育ちました。 1869年に明治新政府は、洪庵の二男・惟準(これよし)や洪庵の弟子達、およびオランダ人教師・ボードウィンを迎えて大阪仮病院と大阪医学校を開設しました。大阪医学校は幾多の変遷を経て1915年に大阪府立医科大学になり、大阪帝国大学医学部へと発展していきました。

私自身も阪大と縁がある立場ですのでこの場を借りて宣伝しました。本題に戻りますと、今回の研究で緒方洪庵の遺した言わば「開かずの薬箱」を壊さず中身の成分を特定することに成功しました。テレビ番組でも度々開かずの金庫を空ける企画に毎回同じ青い服のおっさ・・・お兄さん(失敬)が立ち向かっていますが、緒方洪庵の薬箱はミュオンビームという透過性の高いミュー粒子(ミューオン)という素粒子の光線を使って開かれました。ちなみに、ミュー粒子の高い透過性は東大の地震研究所が宇宙線由来のミュー粒子を用いた火山の内部調査の研究(ミュオグラフィ)辺りでも利用されたとして話題になりました。今までは壊さずに密封された容器の中の薬品の分析をするのは不可能であり、まして緒方洪庵の薬箱は文化財ですので壊すことなど絶対にできません。薬箱ということもあり、中には薬品が入っているわけですので、その薬品の正体を突き止めることは阪大にとっては長年の夢でありました。文化財である医薬品を破壊せずに成分を突き止めたのは恐らく世界初になるでしょうし、このミュオンビームの技術は他の破壊できない文化財の成分分析にも利用できるのではないか?と思います。ちなみに中身は甘汞という塩化水銀(Ⅰ)(化学式はHg₂Cl₂)だったそうです。詳細はこちらからです。

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2021/4/13 ブタジエンのバイオ合成に成功

次も理研からです。ブタジエン(1,3-ブタジエンと言うのが正確ですが、なくても大抵は1,3-ブタジエンの事を指すので1,3-は省略します)は合成ゴムの主原料であり、世界中で非常に需要の多い有機化合物です。理研や横浜ゴム、日本ゼオンらは大腸菌を用いた菌体触媒によりバイオマス資源(化石燃料を含まない生物資源)を発酵することでブタジエンを合成することに成功しました。合成のプロセスはざっくり言えば、(1)細胞内で代謝する→(2)ムコン酸する→(3)ブタジエンの生成酵素を反応させる→ブタジエンができるです。この研究で最も重視されている点が(3)の「ブタジエンの生成酵素を反応させる」です。通常の大腸菌からだとムコン酸からブタジエンを合成することは不可能です。ムコン酸の示性式はHOOCCH=C₂H₂=CHCOOHであり、ブタジエンの示性式はCH₂=C₂H₂=CH₂です。つまり、ムコン酸のカルボキシ基をメチレン基(-CH₂-または=CH₂)に置換することが必要となります。ここで目を付けたのは、フェルラ酸脱炭酸酵素(FDC)という酵素です。FDCは不飽和カルボン酸の末端のカルボキシ基をアルケンに置換することができます。理論上はそれで合成できるのですが、生産量こそ1Lのグルコース培養液から2.3gのブタジエンができるとあるので正直微妙な量ではあります(理由としては要するにFDCが芳香族であるが故に本来反応させたいムコン酸ではなく、残った疎水性アミノ酸との反応が優先されてしまうからです)。今後更に生成するブタジエンを増やしていくことが課題となるでしょう。ブタジエンは主に化石燃料から化学合成されるのですが、この研究も「カーボンニュートラル社会」の実現の観点に基づいたものです。詳細はこちらからです。

2021/4/21 人工光合成が植物を上回る

最近EV自動車の発言で注目を集めたトヨタ自動車グループからです。豊田中央研究所は太陽光エネルギーを用いて水と二酸化炭素からギ酸(示性式はHCOOH)を作る言わば人工光合成のプロセスで、世界最高水準の太陽光変換効率である7.2%を実現したと発表しました。ギ酸は防腐剤や抗菌剤としての利用が多い有機化合物なのですが、最近では燃料電池への応用でも注目されています。あと、この7.2%という数値は植物の光合成効率が多く見積もっても2~3%であるということを考えると非常に画期的な光合成であることは分かるかと思います。実は豊田中研は10年前に世界で初めて人工光合成に成功しています。ただその際の変換効率はたったの0.04%と乏しいものでありました。それから10年の時を経て現在は180倍も変換効率が向上したわけです。この研究も先述の都市ガス合成と同様に「カーボンニュートラル社会」の実現を意識した研究であります。詳細はこちらからです。

2021/5/18 蚊に刺されても痛くない理由

突然ですが、蚊に刺されて「痛ッ!」という経験をしたという方はいるでしょうか?痒いはあっても痛いは恐らくないかと思います。ではなぜ痒いだけで済むのでしょうか?(※決して蚊を軽んじている訳ではありません。というのも蚊の真の恐ろしいところは、一部の種類の蚊はさまざまな感染症(マラリア・デング熱など)を媒介して毎年多くの死者を輩出していますのであまり蚊をバカにしない方がいいでしょう)

自然科学研究機構・生理学研究所の研究チームらによれば、蚊の唾液に含まれるタンパク質痛みを感じるセンサー機能を抑えているからだと発表しています(ちなみに痒みは蚊の唾液がヒスタミンの分泌を促進させているからです、ただ今回の研究には関係ありません)。カプサイシン受容体TRPV1(TRPはトリップと呼びます)とワサビ受容体TRPA1が2つのセンサー機能の正体です。カプサイシンは唐辛子に多く含まれており、ワサビはご存じの緑色のアレです。あの好きな人は好きで嫌いな人は一生食べられないあの何とも言えない成分はアリルイソチオシアネートと言います。全くの余談ですが、TRPV1の発見者のデービッド・ジュリアス氏は2021年のノーベル生理学賞を受賞しています。難しい名前ですが、要するにどちらも痛みに関わる受容体です。痛みに関わるが故逆に鎮痛作用があるのではないか?というのが今回の研究における着眼点です。更にセンサー機能を抑制する上で重要な役割を果たすタンパク質の正体がシアロルフィンであることも突き止めました。これも先述しましたが、反応に関わるものの正体を暴くことは逆にピンポイントでの対策が可能となるわけです。シアロルフィンを判明させたということは次にやるのはシアロルフィンに効く新たな鎮痛剤の開発に繋げていくことです。詳細はこちらからです。

2021/5/26 「負の圧力」で膨張した液体金属

阪大と広島工業大学による研究です。高出力レーザーとX線自由電子レーザー(XFEL)を組み合わせた実験により、極限環境下の液体金属がどのような構造をとるのかを明らかにすることに成功しました。今回金属に使用したのは高濃度のタンタル(Ta)です。タンタルは原子番号73番の遷移金属であり、腐食耐性や優れた耐火性で知られています。タンタル電解コンデンサとしてさまざまな電子機器び利用されています。高出力レーザーにより極限環境(数1000万気圧・数万℃にも及ぶ地獄のような環境です)の超高圧高温を作り出し、タンタルを高濃度の液体にし、それと同時に真空中で高速に膨張させることで極限的な圧力(これを負の圧力と呼んでいます)を実現しました。液体タンタルが膨張する瞬間を狙ってXFELを照射することで5.6万気圧もの極めて高い負の圧力が作用していることが明らかとなりました。この圧力は理論的に予測された圧力と近い値を示したことからもタンタルの液体に関してはさまざまな推測がされています。固体金属は極限状態下だと液体やプラズマ(分子から電子が放出された陽イオンと電子が分離した気体状態の事です)の状態となることは既に分かっていたのですが、液体状態の金属がどのような構造をとるのかに関してはまだ解明されていなかったのです。この研究から液体金属に関する新たな知見、並びに新材料開発やレーザー加工・プロセス技術の更なる発展が期待されています。詳細はこちらからです。

2021/6/4 引っ張ると頑丈になる自己補強ゲル

これは東大の物性研究所と東大大学院新領域創成科学研究科の研究チームらによって開発されました。自己補強ゲルの特徴はなんと言っても引っ張ると頑丈になり、離すとすぐに元通りになるという事です。このゲルは高分子化合物として、長いひも状の高分子鎖が網目状の構造を作るのですが、その網目状の構造に水などの溶媒が取り込まれると、高分子ゲルは結晶化(伸張誘起結晶化)することで頑丈になり、破断しにくくなります。そうすることで世界最高水準の強靭性を得ることができたのです。とは言っても高分子ゲル自体は既にあります。ただ、従来型の高分子ゲルの弱点は繰り返しの負荷(使用)で回復性が低下するという致命的な弱点がありました。今回の自己補強ゲルは世界最高水準の強靱性に加え、復元力(回復力)が飛躍的に向上した画期的な高分子ゲルなのです。これまでのものは繰り返しの負荷(使用)によって内部構造が徐々に壊れていってしまっていたのですが、新たに開発されたものは一度結晶化して頑丈になっても、力を取り除くことで即座に元の状態に戻るため、今まで以上に長期間の利用が可能になると期待されています。特に取り上げるべきなのが、繰り返し強い負荷がかかる人工靭帯・人工関節といった生体に埋め込む人工運動器への利用でしょう。水を取り込むことで結晶化するハイドロゲルタイプですのでチタンの際にも取り上げましたが、高い生体適合性があります。だから生体への利用も安心です。詳細はこちらからです。

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2021/6/14 ペロブスカイト型太陽電池の可能性

以前チタンの話の最後の方で書いたものと重なりますが、今回研究に使用されたペロブスカイト型結晶はハロゲン化鉛です。ペロブスカイトとは以前私が書いた記述を引用すると、

チタン酸カルシウム(CaTiO₃)はペロブスカイトと呼ばれる酸化鉱物なのですが、このペロブスカイトの結晶は単位格子の中にチタン酸イオン(TiO₃²⁻)の正八面体構造が内包している、少し変わった結晶構造をとります。これをペロブスカイト型構造と言うのですが、ペロブスカイト型構造をとる酸化物は化学の業界においては既に話題となっているので(一部略)ペロブスカイト型構造の結晶において注目されているのが太陽電池としての利用です。ペロブスカイト型構造は誘電率が高い結晶構造となるため、コンデンサーのような役割を果たすことが可能なのです(これが電池として利用できる一つの理由です)。(チタンの話より)

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という事となります。要は少し変わった結晶構造をもち、次世代の太陽電池への利用が期待されているという事が言いたいわけです。今回の京大・北大・千葉大の研究チームによれば、ハロゲン化鉛のペロブスカイト型結晶が半導体としての挙動を示す際の「電子の重さ」を測定することで、電子が周囲の格子にどのような影響を及ぼすのかを調べることに成功しました。結果としては予想以上に高い電気伝導性を示すことが分かりました。なぜ予想を上回ることになったのかに関してはちょっとした理由があるのですが、ハロゲン化鉛のペロブスカイトは半導体としての挙動を示す電子や正孔(ホール)といったキャリア(電流の担い手の事です)が従来の半導体よりも遅かったため、電子伝導性は期待できるほど高くはないのでは?という指摘がされていたのです。あと、ペロブスカイトに関しては、日本のみならず近年世界中で競って研究がされており、我々の生活の中でペロブスカイトを見かけることはもうそんな遠い未来ではないことが予想されます。正に今回の研究はペロブスカイトの太陽電池材料としての利用に向けた大きな飛躍だと言えるでしょう!詳細はこちらからです。

今回は取り上げなかったものの、凄い研究成果は他にもたくさんあります。興味があれば是非自身でおもしろそうなものを見つけてほしいです。次は7月から12月です。

皆さまとの出会いに感謝、略してC₁₀H₂₂です!

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