「君たちはどう生きるか」を観た

観ました。映画館で。

周りに「見た?!」と聞いてくるような友達はいないし、ポスター以外の事前情報いっさいなしで。

幕あいの時間は、身体は落ち着いているのに頭と心は落ち着かず、果たして映画の内容を受け止められるのだろうか?    と不安になっていました。

タイトルとポスターからは、誰もが手放しで楽しめる作品というよりかは、なにか重めのテーマがあるのだろうかという感じがしていたからです。



↓ここから場面の描写などもあります

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でも、始まってみると、導入はサイレンの音で身体が縮こまってしまいましたが(連想するのは戦争や津波など、いいものではありませんからね)、

ひきこまれました。

惹かれるし、引かれる。文字どおり引力がある感じです。

どうしても、冷静になろうと、映画館で映画を見ているという実感を掌に にぎってしまいがちなのですが、画面の綺麗さ、息遣い、声の響きに集中していました。


火の描写、水の描写、登場人物たちが食事をするシーン、目の輝き。
彼らの歩く姿、弓をいっぱいに引いてためる動作。
手から手へのやりとり。


頭では反芻する暇はなくて、その一瞬一瞬を見て、軽く咀嚼して飲み込む。見たまま感じる。そしてまた次の……という感じ、でせわしなくはあったのですが、

なんかすごいもの見てる、という感覚はずっとありました。


現実ではダットサンがあんなに傾くわけないのですが(笑)、アニメらしく、涙も大粒に、でもそれこそがいいのです。

アニメのよさがそこかしこに詰まっていました。



台詞を聴いていても何故かすっと入ってくる。
それは何かの著しい伏線回収というわけではなく、
なんというか、説得力があるから、つっかからずにすっと入ってくる。


やっぱり背景はジブリらしいし、すごく好きでした。

特に建物。
主人公の引っ越したおやしきは、和と洋が好きなバランスであわさっていました。

ヒミの家だったか、花がついている美しい家もすごく好きでした。

内装もインテリアも、ヒミのあかくてふわっとした服も。そこで食べられるパンとバター(?)、ジャムも。


登場人物たちはみんなつよくて、輝きを持っていて、だけど終始不穏な空気が背後にせまっているように思えて、私はずっと両掌を強く固く組んでいました。

どうなってしまうんだろうという不安もですし、ペリカンやインコ達の怖さがヤバかったです。


大叔父さまがのみこまれる時も、真人とヒミとサギ男の結束が目に見えていなければつらかった。

結局塔は崩れて下の世界への扉は閉ざされますが、その手前で手を繋いでいる真人と夏子を見ると、ああこの先も大丈夫だなって思いました。

そしてほかの扉から過去(元の世界線)へ戻っていく母とキリコさんから、なにかバトンを受け取った(渡した?)ことも勘案すると、安心感に包まれました。

お母さんとは別れの言葉もなく死別となったが、あの世界で、心で繋がったんだなーと思います。


コピーで「生きろ」とか「生きねば」とか、いままでのそれですら胸に来るものはありましたが、今回、ストーリーを象徴するような言葉など何も無い中で、この世界で生きるぞ、と思えました。


わりと感情がこみ上げて目頭が熱くなる場面が多かったのですが、
真人が母からのメッセージ『君たちはどう生きるか』を見つけたとき、タイトル回収という自分の高ぶる条件だったこともありますが、一瞬自分が真人に重なれた気がして、泣きそうになりました。

「母さんの字だ……」

本当にそう。そうなのよ。涙。


あとは、主題歌が流れ出したとき。
私も、ここではないほかの世界にいた気がする、と思いました。
覚えてないけど。


そして声の出演陣には驚きました。

木村佳乃さん、キムタク、柴咲コウさん、そのあたりは名前まですぐ分かったけど、菅田将暉さんよ……あなたすごいね。



一度で満足感がえぐいから、なかなか何回も観に行く!とは言い難いのですが、

今回映画館で見れたことは財産です。

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