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ものづくりのはなし

今日の札幌は朝から暖かい。

今年に入ってから一番の気温になるという。

いいぞ…実は昨夜、この気温を見越してカスピ海ヨーグルトの種菌を仕込んでおいたのだ。育て、育て。

早起きが気持ちいい季節だな、と換気しながら外の空気を目一杯吸い込む。

自粛・注意・警戒と、すっかり心がくさくさしていたが、外では朝早くから外壁工事のトンカンする音がのどかだ。

この上ないオープンエア―な職場は、大変なことも多かろうが、こういう気候だとなんだかとても手の届かない自由なものに思える。


ちょうどそういったものづくりの現場の話を読み終えたのでご紹介。

「あるノルウェーの大工の日記」(オーレ・トシュテンセン)。

タイトル通り、ノルウェーの現役大工・オーレさんの作業日記である。

何しろ本職の方の日記なので、建築や設計の知識がないと理解の難しい箇所は多少ある。

作業そのものより、職人の心得、職人同士・施主との付き合い、大手企業と個人事業主の意識の違い、イケア製品について思うところ、ひとつの現場にどれくらいの種類の職人が必要なのか、合間の職人ジョークなどがとても面白い。

北欧というだけで、お洒落で何もかも補償が整っていて清潔なイメージを持つ人も多いと思う。

この本の興味深いところは、日本との差異よりも日本とそう変わらないということにある。

特にそう感じた箇所を引用してみる。

ものを作るということの基本的な部分は、私たちの日常生活から取り除かれつつある。一般の人々の目に触れる機会は徐々に減り、興味も薄れている。人々は汚れや騒音を受け入れないのだ。製造の現場に関わる職種に対する人々の態度は、この心理的な距離感からきている。(略)どれだけ多くの優秀なデザイナーがいても、それを実際に形にできる職人がいなければ、いったい何を売るのだ? デザインやアイデアを輸出するか、あるいはデザイナー自身を輸出するのだろうか?

ノルウェーでも日本でも、おそらくほとんどの先進国で一部の人間は現場仕事を蔑んでいる。

結果、作り手になりたがる人間は減少し、外国人労働者が増え、設計する側もいずれ流出していき自国の可能性を潰す結果になっていると指摘している。

どこかの国の誰かに地味で汚れる仕事を任せきった結果、自分たちで一から物が作れない状況の恐ろしさは、まさに今リアルタイムでじわじわ体感している問題だと思う。

と、いうのは簡単だが、では私にできることは何だろう?


朝から深刻な話になってしまった。

とりあえず今は、自分の口を養うのにカスピ海ヨーグルトと豆苗が育つよう祈りつつ、外の工事の音に心の中で合掌する。


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*今回の記事の写真は札幌市豊平区にある八紘学園の資料館になっている昔の煉瓦製のサイロ。

建物は明治37年築、サイロは昭和18年改築とのこと。

ちょうど去年の今頃に撮ったもの。

八紘学園は農業系の専門学校で、生徒さんたちの作った農産物の直売所もありアイスクリームなども食べられるそう。

何度も散歩に行ったけど、残念ながら一度も買い物はしなかったな…。

ものづくりの中でも農業は人間の思い通りにするのが本当に難しい、大変な仕事だと思います。感謝しかない。